表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、神様になります  作者: 昼神誠
神のいない世界
503/592

この修行はどこかおかしい13

 なっ!?

 ここがヘルヘイムだと?

 空が明るくなって太陽が見えている。

 あの国は常夜の国だぞ?

 土属性でドーム状の囲いがされ常に陽の光は注がない。

 ヘルヘイム特有の植物も枯れ果て新緑が芽吹いている。

 属性力を失ったことが原因か?

 もしかしてヘルヘイムは滅びた?


「ヒャッハァァァ!」


「神族を見つけ次第殺せぇぇぇ!」


「天罰なんて怖くねぇぇぇ!」


 ならず者たちの様子がおかしい。

 天罰が降り注ぐことに恐れを感じていないようだ。

 この世界の人族にとって神族は逆らえない存在だ。

 それは頭の悪いならず者でも理解できているはず。

 

「くくく、聞け阿呆共! 神に畏れる必要などねぇ! すべてを駆逐して滅ぼしてやんな!」


「うぉぉぉ! セツ様ぁぁぁ!」


 せつ……だとっ!?

 彼女はゆきを庇い命の危険に晒された。

 その時にマムの助けで雪と精神を同化し消滅したはずだ。

 まさか消えていなかった?

 幼い雪の頃と同じ状態に戻っただけだったのか?

 雪はどうなったのだろう?

 人格が入れ替わっているだけだよな?

 

 ならず者たちは雪の能力で支配下に置かれているのだろう。

 だから恐怖心など無い。

 完全に捨て駒にされて雪も狂っているのは相変わらずだな。

 しかし人族が侵攻したのに他の土神族たちが見当たらない。

 そのまま何事もなく勇者軍がヘルヘイムのネクロ高原まで侵攻したときだった。

 

「へげべっ!」


「んぐふっ!」


「あびゃぁぁぁ!」


 先頭の方がやけに騒がしい。

 記録をしている尖兵は後方の部隊だ。

 遠くで起きていることが確認できないでいる。

 

 バサッ!


 何者かが上空に飛び上がった。

 黒い翼なのは見えるが土神族では無い。

 何者だ?

 

「敵襲! 敵襲ぅぅぅ!」


「撃てぇぇぇ!」


 ズドドドド

 チュドォォォン!

 

 勇者軍の尖兵が持っているのは近代兵器さながらだ。

 

「ん、敵襲」


 ヒュンヒュンヒュン


 ナデシコ型も大量に投下され黒い翼の者と戦っている。

 映像を記録している者は必死に逃げているようで手元がブレてよく見えない。

 

 ビュォォォ!


「ぐわぁぁぁ!」


「ひぐっ!」


「ん、きけ……」


 ドロッ


 黒い突風が吹いた瞬間、眼前の部隊がすべて黒い液体となり溶けてしまった。

 闇属性の風か。

 ナデシコ型も為す術も無く即死とはな。

 だがこれで分かった。

 上空を飛んでいる者は堕天使だ。

 そうか、土神族もおそらくタナトスの軍勢に敗北したのだろう。

 

 バサッバサバサ


「ひぃぃ! こっちに来るぞ!」


 黒い翼の天使が近くに飛んでくる。

 これで顔が確認できる。


「ふふん、どうしてこんなところに勇者軍が来ているのか知らないけれど皆殺しにしてあげるわっ!」


 ふぁっ!?

 闇ユーナだとっ!?

 さっきの黒い突風も闇ユーナの仕業なのか?

 ユーナは神格化してからは氷魔法しか使えなくなっている。

 いやカメラに映っているユーナは姿や声が似て異なる者だ。

 あいつはユーナではない。

 闇風魔法を使っていても何もおかしくは無いか。


「ダークネスサイクロン! いっけぇぇぇ!」


 ビュォォォ


「ぐわぁぁぁ!」


「セツ様ぁぁぁ!」


 ドロッ


 一瞬で眼前の勇者軍が全滅する。

 カメラが地面に落ちたことを考えると記録していた者も即死したのだろう。

 レンズは上空を向いたままだ。

 闇ユーナがしっかりと映っている。


「セツ? セツですって!?」


 どうしたのだろう?

 何かに驚いているようだ。


「あはっ! あははは! 杏樹を探していたのに先に雪を見つけてしまうなんて運が良いわ! 今すぐに雪もタナトス様と一つにしてあげる!」


 杏樹?

 うっ、頭が痛む。

 ……嫌な名前を聞いて思い出してしまった。

 あの鬼畜ド変態を何故タナトスが探しているのか分からないがそんなことより雪も狙われているのか?

 容易に想像できる。 

 闇属性で即死させられた者の能力はタナトスのものとなる。

 雪のチート能力を欲しがっているのだろう。

 だが杏樹を狙っているのは何故だ?

 あいつのように変態になりたいわけでも無いはずだ。

 ま、杏樹が生きようと死のうとどうでもいい。

 

『コスモス、雪は無事なんだよな?』


『はい。今はこの勇者城に戻ってきています』


 ほっ、良かった。

 そう言えば欽治の姿が見当たらなかったが映像で雪の側に居なかったとなると、もしかしてまた発作が起きてドラゴン狩りの旅に出かけたのだろうか?


『欽治は? 雪の近くに居なかったようだが』


『あの方は勇者軍を離れました。ルカと顔見知りでしたので今はグランディアで暮らしているはずです』


 勇者軍を離れただと?

 雪の護衛を止めたのか?

 いや、あいつはそんなに軽薄な男ではない。

 何かきっかけがあって雪の側を離れたのだろうが理由は本人に会った時に聞くしか無いだろう。

 

 バサッバサッ……


 闇ユーナが画面内から飛び去っていった。

 遠くでまだ戦闘音が聞こえていることから尖兵たちと戦っているのだろう。

 戦っていると言うより一方的にならず者が闇ユーナに向かって攻撃をしている音が聞こえるだけだ。

 風の音と共に尖兵の悲鳴が聞こえその後何も聞こえなくなってしまった。


『この後も後発隊が機器を発見するまで記録されていますが特に有用な内容ではありません』


 闇ユーナと遭遇戦が開始され約20分ほどで全滅したのか?

 ナデシコ型も大勢連れて行っているはずだ。

 それでも闇属性の前では歯が立たないとはな。

 ……チートやん!

 こんなの勇者軍が滅ぼされるのも時間の問題だろ!?

 今回は遭遇戦だったから良しとしてタナトスに狙われたらここも安全ではないはずだ。

 やっべぇ、そう思うとここに居るのが怖くなってきたぞ。

 

『ホークさんからの質問は一つです。黒い翼の者がユーナさんにそっくりだということに疑問をお持ちのようです。ホークさんの部屋に居る幼いユーナさんと関係があるのでは無いのか? あれも欠片の一つでは無いのかと』


 タナトスのことを伝えなかったのは失敗だったな。

 ダリアが狙っているのは神族だけだと油断していた。

 まさか人族にも何の躊躇いも無く刃を向けるとは思いもしなかった。

 目の前にいるコスモスに俺の知りうる限りのタナトスと堕天使のことを話す。


『ありがとうございます。ホークさんに一つ残さず伝えておきます』


『そうだ、ユーナの欠片はどうなった?』


『そのことですがセントホルン山が汚染されていたため誰も近寄れないのです』


 へっ?

 汚染って何に?


『記録映像があります。ご覧になられますか?』


 目の前のスクリーンに一つの漆黒に染まった大地が映し出される。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ