この修行はどこかおかしい3
「そのDKシリーズは他のホムンクルスと少し違うな? ステータスが異なるのもそうだが機械的な感じがしない」
「坊や、貴方この子のことを先程ナデシコと呼びましたわね? なぜ貴方がナデシコのことを知っておりますの?」
「もちろん顔見知りだからだ」
「そうですの? あの子は3号の妹に当たる存在ですわ。今はどこに? 元気でやっておりますの?」
ナデシコが4番目だったのか?
1号と2号は欽治とダリアの単体クローンのことなのかな?
3号は初キメラのため、ステータス基準を低く設定していそうだ。
ナデシコはここに居る3号のステータスを爆上げしたせいでトンデモパワーになり扱いきれなかったのだろう。
それでもナデシコのことも心配してくれているとはホークはやはり良いやつだ。
ヘルヘイムへ行った時にナデシコがヒメによって石化される瞬間をアースメモリーで見た。
その後、放置されたナデシコの石像は雨風に打たれ異常な速さで風化し砂になったことまでは確認できている。
おそらくだがナデシコはすでにこの世には居ない。
事実を伝えても大丈夫だと思いたいが別の土神に石化されたことを伝えると同じ神族である俺まで疑われないとも言い切れない。
行方不明だということにしておくか。
「今はどこに居るのか分からない」
「そうですの? ま、あの子のことだから心配はせずともよろしいでしょう。あの子とはどういうきっかけで?」
「何度かナデシコに助けてもらったことがあるんだ。俺が今こうして生きているのも全部ナデシコのおかげなんだよ」
「……詳しく聞かせて頂いても?」
心配していないとか言って、やはりナデシコのことを気にかけているじゃないか。
「ああ、良いよ。信じてくれるかどうかはホーク次第だがな」
「貴方、どうして私の名前まで? 教えた覚えは無いはずですわ」
俺の前世を話すことで納得してくれると良いのだがな。
闇ユーナは信じてくれなかったが欽治は信じてくれた。
ホークはチョロくないが事実を受け止めるくらいの柔軟さは持っている。
「俺を覚えていないか? 神薙龍識だ」
「……誰ですの?」
「ユーナと雪がパティの毒霧で瀕死の重傷を負った時に助けてくれただろ? その時に一緒にいた……」
「ああ、あの小太りの?」
「そっちは愛輝だ。ほら、もう一人居ただろ」
「いいえ、覚えていませんわ」
「えっ? 俺にレジスタンスではないのかって聞いてきただろ」
「ええ、聞きましたわ。小太りの男に」
「いやいや、その時に話していたのは体格が普通で顔も普通でとにかくすべてが普通の男だったはずだ」
「そんな人居ませんでしたわ。あの場所に居たのはナデシコと小太りの男性と治療中の少女と幼女のみですわ」
どうして俺だけ都合よく覚えていないのぉぉぉ!
普通すぎて強烈な個性の塊であるあいつらに埋もれていたのは確かだけどさ!
愛輝やナデシコよりも多くホークと会話していたのに!
はぁぁ、10年前の出来事だから覚えていなくても何らおかしくは無いが、愛輝たちはしっかりと覚えていて俺だけが覚えていないのは意外と傷付く。
「ま、覚えていなくても良い。すでに亡くなっているからな」
「その神薙と坊やに関係でもありますの? まさか、息子?」
「いや、ディーテによってホスピリパごと蒸発した俺はヒメによって転生させられたんだ」
「ディーテですって!? それとホスピリパ……医療技術で世界屈指の町と貴方にどのような関係が?」
「その話は後にしてくれ。ホスピリパで死亡したはずの俺はヒメによって土人形として転生させられた。そして、グランディール大陸に放置されていたところをナデシコに助けてもらったのが二度目の出会いだった」
「なるほど、だから魔界で活動を……でも、初代覇王であるお兄さんは?」
「兄は……えっと、俺と同じ境遇で作られた存在だ」
「あら、そうですの?」
やはり口から安易にデマカセを言うのは良くないな。
どこかで矛盾が発生してしまう。
何とか辻褄が合うようにグランディア建国までの流れをホークに話す。
そして、コスモスやルカなど俺の天使のことも軽く説明した。
「分かりましたわ。写真に写っている全員が勇者軍の尖兵であることが確認されましたし、貴方が神族であることはこれでほぼ確定ですわね」
「マスター、こっちの知力特化タイプにインストールどうする?」
インストール?
アップデートのことか?
そんなことをすればコスモスの心が壊れてしまう。
「止めてくれ、コスモスは俺の大切な人なんだ」
「坊や、この型番にご執心のようですけれど先程の話で出てきたコスモスがこの身体の中に?」
「そうだ、彼女は生まれつき身体を持たない特殊な魂魄なんだ。もともとは俺の中に居た。ヒメによって仕組まれたプログラムだったのだが肉体を与えたことで自我が形成されたみたいなんだよ」
「それは興味深いですわね? 3号インストールはしなくていですわ。貴女は部屋に戻っていて。後でご褒美をあげますわ」
「ん、嬉しい」
ヒュン
ご褒美って何なのだろう?
ま、今はどうでもいいか。
「ホーク、コスモスを助けられるか? それが俺の聞きたいことなんだ」
「貴女は首の骨が脱臼した程度で済みましたが、この子は複雑骨折ですわ。それも粉々になっている。意識が戻っても首から下は動かせませんわ」
「コスモスの意識さえはっきりと戻れば肉体の入れ替えができる。頼むよ、ホーク」
「それは依頼?」
「俺に出来ることなら何でも……いや、グランディアを脅かさないことなら何でもするよ、頼む!」
「では、私からも依頼しますわ。勇者様を……アレクサンダー様を止めてくださいまし」
勇者を止めろだと?
「それってどういうことだ?」
「詳しい説明をするつもりはありませんわ。あの御方はおかしくなってしまわれた。これ以上の罪を重ねる前にただ止めてくれればいいだけですの」
……すでに勇者が世界征服を目論んでいるという時点でおかしいのだが。
それ以上におかしくなっているとすれば宇宙進出とか?
それとも地球進出か?
この世界に何人もの地球人が連れて来られているのはこの世界に来て意外と早く知ることができた。
だったら、こちらから地球へ行く方法も考えていそうだよな?





