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俺、神様になります  作者: 昼神誠
神のいない世界
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この奪還はどこかおかしい2

 カァカァカァ……


 夕方までコスモスとハッスルしすぎたせいで今夜はここで泊まることになってしまいそうだ。

 はぁ……何をやってんだ、俺は。

 お盛んな時期なのは確かだが、こんなことでは拠点で休憩するごとに一夜を過ごすことになってしまう。

 もっと、自分を律さなければならない。

 ヤりすぎると阿呆になるって言うしな。

 ……もしかして、師匠が阿呆なのはヤリ○ンだからなのか?

 だが、そのおかげで無の境地に達しているのだとすると……いやいやいや、阿呆と心を無にすることは別物だ。

 そんなのを同じにされたら俺も阿呆にならないと縮地が一生できないままだ。

 

 ガタン!


「なんだ?」


「う……ううん? 今の物音は……」


「コスモスはまだ寝ていろ。俺が見てくる」


 1階は培養槽だ。

 シェルターを破壊したから、モンスターが侵入してきたのかもしれない。

 ちっ、失敗だったな。

 こんな荒野のど真ん中だ。

 野獣型モンスターがいても何らおかしくはない。

 シェルターのところをアースウォールで閉じておくべきだった。

 階段を降りると狼型モンスターが数匹ほど群れで入ってきていた。

 名前とステータスを確認……っと。

 アナライズをモンスターにかける。

 ウィンドウルフ?

 半神タイプのモンスターか。


 この世界の属性持ちモンスターは、そのすべてが純神の見境のない交配で誕生した生命体だ。

 神子の力は種の壁など関係がない。

 俺も自制が効かなければ狼や猿などの野生動物ともヤッていたのか?

 うわぁ……さすがにそれは嫌だ。

 

「ガルルル……」


「ガウガウッ!」


 餌を求めてやって来たのか。

 だが、俺の身体は土だから食べられる恐れはないが、コスモスは生身の肉体だ。

 俺が見に来てよかった。

 といっても、ステータスも大したことがないし驚異でも何でも無いがな。

 ここは俺とコスモスの愛の巣なんだ。

 邪魔者はどっか行ってくれ。


「ロックシュート」


 ガンッ!


 石つぶてをウィンドウルフ一体に当てる。

 それで逃げてくれるかと思っていたが、どうやら凶暴なモンスターのようだ。

 名前で判断したのは迂闊だった。


「ガウガウッガウ!」


 階段の上から撃ったため、ウィンドウルフたちがこちらに向かって襲いかかってくる。

 この部屋に入られるのは良くないな。


「よっ!」


 1階へ飛び降り、シェルター方面に走る。

 培養槽も傷つけられると困るためだ。


「ガウッ」


 あれ、追ってこない?

 

「アォォォン!」


「ガウッガウガウ!」


 培養槽の奥の方へ向かって走り去っていった。

 奥に生肉なんて置いて……げっ!


「ちょっと、待て待て待てぇぇぇ!」


 ヤバい!

 あいつら、培養槽の中で眠っているナデシコ型を食うつもりだ。

 モンスターごときが操作盤を触って取り出せれるはずがない。

 だとすると、無理矢理にでも培養槽を割るに決まっている。

 そんなことをされたら、ナデシコ型が覚醒してしまうだろうが!

 ここで広範囲魔法を使うと他の培養槽も傷つけてしまう。


「ガウッ!」


 狼だから足が速い。

 奥で眠っているナデシコ型の培養槽に向かって攻撃をし始めた。

 まずいぞ、これは!


 ダンッ!

 ダンダンッ!


 体当たりで培養槽を直接割ろうとしている。

 だが、ガラスの厚みはかなりある。

 丈夫に作っていてくれて助かった。


「ガルルル!」


「お前ら、お仕置きだ。ロックニードル!」


 ドシュドシュドシュ!


 ちっ、一匹逃した。

 動きが素早いため、一体だけになると狙いを慎重にしないといけない。

 他の培養槽の間を走り回り牽制しているのか?


 ガンッガンガンッ!


 背後から何かを叩く音?

 俺の背後は最奥の培養槽……だ。

 後ろをそっと振り向く。


 ガンッガンガン!


 ひぃぃぃやぁぁぁ!

 ナデシコ型が目覚めて内側から培養槽を割ろうとガラスを叩いている。

 狼なんて後回しだ。

 今のうちにコスモスを連れてここから逃げないと!


『コスモス、そこの窓から飛び降りて外に出るんだ!』


『ドレイク様、そんなに慌てていかがなされたのですか?』


『後で説明する! 俺も今から外に出る!』


 ビシッ!


 ぎゃぁぁぁ!

 やっぱ、馬鹿力だから割れるのもはやいですよねー!?

 培養槽に亀裂が入り、次第に広がっていく。


「ガウッ!」


「邪魔だ!」


 ドンッ!

 

 ちっ、また避けられた。

 だが、今は雑魚モンスターごときに構っている暇はない。

 シェルターのある方向に走る。


 ドンッドンドン!

 ビシビシビシッ!


 うわぁぁぁ、もう割れてしまう。

 

「ドレイク様!」


「コスモス、とにかく走るんだ!」


 シェルターの外でコスモスと合流する。

 そのまま、後ろを振り向くこと無く勇者軍の基地から離れる。

 どこかに隠れられそうな場所は……すでに日が暮れているため辺りは真っ暗だ。

 

「はぁはぁはぁ……ドレイク様、そんなに全速力でどこへ?」


「とにかく、距離を取るんだ! ナデシコ型が目覚めた!」


「ええっ!?」


 モンスターごときにしてやられるとは俺の不注意だ。

 コスモスとお楽しみする前にシェルターを塞いでおけばよかった。

 今更そんな事を言ってもすでに遅いよな。

 

 ドゴォォォン!


 背後から轟音が響き渡る。

 ナデシコ型に向かってウィンドウルフが襲いかかったのだろうか?

 最後の一匹を無視しておいて正解だったな。

 今の音はナデシコ型がウィンドウルフを屠った瞬間だろう。

 あの基地にナデシコ型が使う太刀は置いていなかった。

 だが、素手でもとんでもないほど強敵なのは変わりがない。


「ドレイク様、向こうに大岩が」


「あの裏に隠れるんだ」


 隠れたところでどうにかなるわけではないが、身を隠す場所が少ない荒野を走っているとすぐに追いつかれてしまう。

 あいつは瞬間移動の能力を持っているからな。

 

「ドレイク様……」


「大丈夫だ。何が何でも俺がコスモスを守る」


 絶対にコスモスだけはやらせない。

 肉体を失ってもまた作ればいいだけという問題ではないのだ。

 コスモスが傷付く姿を見たくない。

 肉体の痛みはコスモス自身の痛みである。

 新しい身体ができたって、死ぬような痛さは永遠にコスモスの記憶に刻まれることになる。

 そのようなことを繰り返すコスモスを思うと辛いためだ。

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