表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、神様になります  作者: 昼神誠
神のいない世界
472/592

この仕事はどこかおかしい6

「はぁはぁはぁ……ヤバ、足が」


「ドレイク様、ご休憩はいかがぁ?」


 休んでたまるか!

 早く無の境地に至らないと……何も考えるな、俺!


「あと5分ですぅ。ドレイク、まだ60周もあるのですよぉ」


「あと5分、あと5分、あと5分で私もドレイク様から神子をお腹にいただけるのですね」


 ひぃぃやぁぁ!

 嫌だ、10歳で4児のパパだなんて絶対に嫌だ!

 ってか、頭の中を空っぽにできねぇぇ!

 師匠もコスモスも黙っていてくれ!

 

「ドレイク、余計な雑念で頭の中がぐちゃぐちゃですよぉ」


 師匠が口を挟んでくるのは、俺にどんな状況でも無の境地に至ることができるようにしてくれているのだろう。

 コスモスをわざわざ背負わされているのも耳や感触から入る情報に惑わされなため?

 駐屯兵たちは何も背負わずにただランニングしているだけだし、俺の場合はただの体力トレーニングでは無い。

 そうだ、無になるためには俺の五感から入る情報をカットしなければならない。

 バトルマンガでもよくあるパターンだ。

 しかし、五感の中で自ら意識して封じれるのは視覚だけ。

 俺の耳元でささやくコスモスの声をカットするには聴覚を封じなければ意味がない。

 耳栓でもあれば……その程度なら土から作れるな。

 立ち止まり、足元に落ちている小石を拾う。

 

「ドレイク様、ご休憩ですか! では、私は今すぐに全裸に」


「ほぅ、そう来るのですかぁ?」


 手にとった小石の形を変え、耳にはめる。


「ああ、ドレイク様。それでは、私の声が……」


 うん、聞こえなくなった。

 師匠が教えてくれる残り時間も体内時計で大隊は把握できる。

 目を閉じ走り出す。

 嗅覚や味覚は特に気にすることもないか。

 次は触覚だな?

 コスモスの胸の感覚が視覚と聴覚を塞いだだけで大きく伝わってくる。

 いや、これは……わざと当てている!?

 

 ニヤニヤ


 こいつぅ、そこまでして俺の成功を阻止したいか。

 触覚を自発的に失わせるのは不可能だ。

 気にしないというのが正解なのだろうが、俺の性格上、そんなことが最も難しいのだ。

 時間的には残り2分ほど。

 このまま、普通に走っていては絶対に間に合いそうにもない。

 がむしゃらになって走っていれば、感触など忘れられるか?

 それに賭けるしかない。


 ダッ!


 目を閉じていても鉱石感知で走るべきルートは分かる。

 気にせずに全力疾走する。


 ぽよんぽよんぽよん!


 んほぉぉぉ、なんて最高な感触なんだ!

 って、あかん!

 早く走ると背中の柔らかい感触がよりダイレクトに伝わってくる。

 

 ニヤニヤ


 コスモスめぇ、これも計算の内ってか?

 だが、甘い!

 人は同じものを何度も味わっているとそのうち慣れる!

 こんな感触だって……いつかは慣れてくるはずだ。


「うぉぉぉ、忘れろぉぉ! 全速力だぁぁぁ!」


 ぶるんぶるんぶるん!


 うっひょぉぉ、なんて最高な……いや、そうじゃない!

 まったく慣れてこない!?

 アカン、これが男の性なのかっ!?

 

 ダンッ!


「いてっ」


 何かにぶつかった?

 目を開くと師匠が目の前に立っていた。


「ま、まさか……」


「そうなのですぅ、じ・か・ん・ぎ・れ。惜しかったですねぇ」


 マジか!

 あかん、終わった……。

 お父さん、お母さん、俺、4児のパパになるかもしれないっす。

 

「さて、覚悟は良いですかぁ? おっと、その前にコスモスを下ろしてあげるのですぅ」


「は、はぁ。おい、コスモス、いつまでおんぶさせるつもりだ?」


「はぁぁん、もう限界です」


「どうやら、ドレイクの背中に乳首を当てていたせいでイッちゃったようですねぇ」


 何やってんだ、こいつ?

 だが、それなら助かった。

 地面にコスモスを寝かせ、ついでに俺が意識を失っている時に襲われないように土で身体を拘束しておいた。

 

「ま、これはコスモスの責任だから、拙にも関係無いですよぉ」


 師匠が再び構えを取る。

 失敗するために罰を喰らっていては埒が明かないが、何のお咎めが無いのも修行としては成り立たないからな。

 師匠の掌底破を喰らわないように自身を高めていく必要があるというものだ。


「ドレイク、どうして防御しないのですかぁ?」


「えっ? だって、師匠の指示を達成できなかったし……」


「貴方はどんな攻撃でもまともに受けるほどバカなのですかぁ?」


 言われてみれば確かに。

 これから重い一撃を喰らうというのに受け身を取ることにのみ集中していた。

 師匠の攻撃の前には俺のどんな防御魔法も無意味だろうが、ある程度は衝撃を緩和することが出来る。


「アースシールド! 師匠、どうぞ!」


「……まぁ、良いですかぁ。よっ!」


 ブンッ!


 掌底破ではない?

 まさかの回し蹴り?


「うぉ!」


 ズガァァァン!

 

 くそぉぉぉ、シールドを前部に張っていても無駄だった。

 回し蹴りによる右側面からの打撃で肩を強打し、そのまま吹き飛ばされる。

 HPも0になってしまったし……意識が飛んでいく。


「はぅぅぅ、ドレイク、いい加減に止めるのですぅ! あぁっ、そこは!」


「ドレイク様! 私にも……あぁ、どうして構ってくれないのですか!?」


 うぅ……なんだ、五月蝿いなぁ。

 目を覚ますと駐屯地にある寄宿舎の一室だった。

 ああ、そうか。

 師匠の回し蹴りを受けてHPが0になったんだっけ?

 いや、それよりも重大なことに全思考回路が持っていかれる。

 俺が意識を失っている間に一体、誰が運んでくれたのだろう?

 普通に考えると師匠だが、ベッドの中には誰も入っていない。

 ……うっすらだが、喘ぎ声を聞いていたような気がする。

 それにベッドの中も妙に汗ばんでいるし、やはり俺の寝込みはまた襲われていたのか?

 師匠に再び神子を取られていたら、本気でマズいことになる。

 このまま、何度も師匠に気を失わせられ、意識がない中で俺がすぅんごぉいことを師匠にし続けていると第一子どころの話ではなくなるぞ。

 

「あ、あの……覇王様、オイラたちはいつまで走り続けていたら良いのでしょうか?」


 部屋に入ってきたのは一般兵の一人だ。

 おいおい、師匠はまさか何も指示せずに帰ってしまったのか?

 教官が部下を放置しておくなんて、いくらなんでもそれは駄目だろう。


「今は19時か。こんな遅くまで頑張ったな。もう寄宿舎に戻って休むように他の兵たちにも伝えてやってくれ。俺から師匠に行っておくからさ」


「ふぅ、助かったべぇ。覇王様に感謝を」


 今日も朝早くから行動しているし、時間もまだゆとりがあるな。

 早起きは三文の徳とはどうやら本当のことらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ