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俺、神様になります  作者: 昼神誠
神のいない世界
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この子どもはどこかおかしい2

 培養槽の有る区画は解体も何もされておらず元の状態を保ったままだ。

 電線関係も切断せずに金属板のみを綺麗に切り出し解体作業を進めている。

 ユーナが操作盤を勝手に触り作られてしまった、防御特化型ナデシコはすでに完成しており、培養槽の中で液体に浸されプカプカと浮きながら眠っている。

 どうやらステータスを独自に振り分けると、体つきだけでなく顔つきも変わるようだ。

 知力特化型の身体は未完成の状態だが、どことなくダリアや欽治の様子は伺えつつも、頭の良さそうな落ち着いた雰囲気のある美少女だった。

 この防御特化型ナデシコは筋肉質で、いかにも外部からのダメージなどではびくともしない感じがする。

 顔つきは欽治寄りのイケジョ風な少女になっている。

 うーん、俺的には好みの部類には入らないが、刺さる人には刺さりそうな感じだよな。

 しかし、ここまで顔つきが変わるなら、美少女軍団もすべて微妙にステータスを変えて個性を出すほうが良いよな?

 俺もそうだが、仲間たちや領民にも誰だか分かるほうが良いだろうし。

 戦争終結後は領民の一人として生活をしていくことになるしな。


「いつまでもこの中に入れているのも良くないよな……」


 ユーナが何度か触ったおかげで操作の仕方はある程度は頭に入っている。

 確か、こことここを同時に押せば……。


 ピッピピピ


「システムロック解除、排出開始。終了するまで近付かないでください」


 ウィィィン

 ドシャァァ


 培養槽の中に満たされている液体が排出されていく。

 この液体は再利用されたりするのかな?

 繋がっているポンプは一つしか無いし、コスモスの身体が作り出されたときも同じところから出てきていたしな。

 勇者軍でしか用意できない液体だとしたら、貴重に扱わないといけないな。

 培養液のタンクは……あそこか?

 運ぶ時に壊れないようにロックウォールで何重にもしておこう。


「う……うう」


「おお、動いた?」


「覇王様、これはどういった仕組みなのですか?」


「ま、深くは気にしなくていいよ。こんなのは本来、存在しないほうが良いからな」


「はぁ、そうなのですか?」


 だが、存在する以上、有効に使わせてもらう。

 作り出したホムンクルスたちも勇者軍のように道具扱いなど、俺はしないと心に決めているし新たな種族として栄えていくように補佐するつもりだ。

 そういや、繁殖機能はあるのかな?

 培養槽で作り出せるのは女性だけらしいし、設定を変えるだけで男性型ホムンクルスの生産も何とか作り出せないだろうか?

 見た目は人族だし人間として生かせていくのなら特に作る必要も無いか?

 だが、子どもができない身体だったら栄える以前に滅びてしまうよな?

 ルーシィさんがいれば、詳しく診てもらえたのにいない人に頼っても仕方がない。

 ホスピリパの町の医学ならホムンクルスたちの身体を詳しく調べてて貰えそうだ。

 だが、あの町もディーテのブレスによって跡形も残らず消し飛んだのだろう。

 あれから10年以上経っているし、復興していたりするかな?

 ユーナの欠片もアルス大陸だし、寄ってみるだけでも何か手がかりが得られるかも知れないな。

 

「貴方があたしのマスター?」


「そうだ、ここがどこだか分かるか?」


「んん……」


 首を横に振る。

 勇者軍からの情報は受け継がれていないようだ。

 これなら、襲われる心配も無いし味方として認識して良さそうだ。


「覇王様、このおなごの名前は?」


「……名前?」


 名付け親はユーナだと思うが、話せないし代わりに俺が決めるか。


「君の名前はオボロだ」


「あたしの名前は……オボロ。登録完了」


 機械的な話し方は相変わらずのようだ。

 外見は他のホムンクルスと違っているが、中身の個性を作り出すには経験が必要だよな。


「君の任務は俺や仲間を全力で守ること。ただし、非常時に限る」


「任務了解。非常時以外は?」


 意外と細かく設定できるのか?

 自由にしていてくれと伝えても良いのだが、それでどんな行動をするか分からないし、平時は屋敷のメイドとして目の届く場所にいてもらうほうが良いよな。


「平時は屋敷のメイドとして働いてくれ。詳しい内容は追って伝える」


「任務了解。主要拠点の登録を」


「屋敷のことか? 今から連れて行く。一緒に来てくれ」


「了解」


 オボロが俺の背後を一定の距離を保った状態で付いてくる。

 よし、これでやっと空中戦艦を運べ出せそうだ。

 力仕事は俺の領分では無いし、移送中に培養槽が壊れないように見守ることが俺の役目だ。


「よぉし、みんな、これなら少しは軽くなっているだろう。それでもかなり重量はあるが、俺が整地している地面の上を滑らせて押してくれるだけでいい。始めてくれ」


「「おおー!」」


 オークたちが外に出て、持ってきた大縄を結びつける。

 空中戦艦の落下地点だけは整地できない状態だから、最初の移動がもっとも力を使うと当時に衝撃も大きい。

 

「「せーのー!」」


「「ぬぉぉぉぉ!」」


 ゴゴッ


 おー、さすが怪力の持ち主のオークたちだ。

 いくらか解体したとは言え、フェリーほどの鉄の塊を動かせるとはな。

 

 ガガッ!


「おっとと!」


「どうしたー!?」


「何かに引っかかっているようで、いくら押してもびくともしないでさ!」


 墜落時に船底の一部が地面の中にめり込んだのかな?

 だとしたら、無理に動かすと連鎖的に壊れていきそうだな。


「一旦止めてくれ。アースクレイで少しだけ柔らかくしてみる。足が取られるから気を付けて押してくれ」


「よぉし、もう一回いくぞぉ!」


「「ぬぉぉぉぉ!」」


 ズズッ……

 ズシャァァァ


 整地した地面の場所まで押しだすことに成功する。

 後は100人交代でも十分だろう。

 

「おぉ、これは楽でさぁ」


「さすがは大地の神だ」


「今度は足元が滑りやすいから気を付けてくれよ」


 ズズズ……


 ゆっくりだが確実に前に進んでいる。

 この速度なら日が暮れて夜になってしまうな。

 野獣モンスターがそろそろ活動し始める時間だ。

 ま、オークたちがモンスター如きに手を焼くことは無いし、俺も見ているから大丈夫だろう。

 それから5時間ほどかかり屋敷の前に持ってくることができた。

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