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俺、神様になります  作者: 昼神誠
神のいない世界
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この子どもはどこかおかしい1

 整地をしながら屋敷の方向に向かっていると、オークたちと出会った。


「おお、覇王様。朝早くからご苦労さまです。それで運んでもらいたい船と言うのは?」


「ああ、道案内するよ」


 一旦、整地を止め空中戦艦の場所へ行く。

 摩擦を少なくしすぎたせいか何度か転ぶ者も出たため、整地していない場所を通ってだが。

 

「しかし、グランディール大陸って荒れ地ばっかりだよな。昔からこうだったのか」


「ワイの爺ちゃんから聞いた話では、200年ほど前からこのような状態になったらしいです」


「200年前か、魔王歴が終わり勇者歴になってからこんなふうになったのか」


「当時は異常気象が頻発し、干害で多くの者が大飢饉で苦しんだようで……」


「おいどんも聞いたことが有るでごわす」


 異常気象か……そういや、初めてルーシィさんに連れて来られたときは昼間でも薄暗かったんだよな。

 太陽を隠すほどの巨大隕石が宇宙空間で漂っていたせいなのだが、もしかしてアレのせいでおかしくなったのでは?

 なぜか、アルス大陸方面にいた頃は巨大隕石なんて見えもしなかったし、普通に昼間は明るかったしな。

 グランディール大陸の上空にだけ留まり、太陽を覆い隠していれば異常気象も限定的に起きそうだし。

 そもそも、あの巨大隕石は仕損じたメテオだったはずだ。

 メテオは土属性の最強攻撃魔法だし、アレ程のサイズを顕現し落下させられる魔力の持ち主って、神族しかいない。

 まさか、ヒメの仕業か?

 勇者軍と魔王軍の戦争も神族達によって仕組まれていたものだったし、あの程度の介入は余裕でしていそうだよな。

 

「……そうだな、草原のほうが心地良いし俺が何とかしてみるよ」


「おお! 覇王さまならもとに戻せますよ、絶対に!」


「おいどんも信じているでごわす!」


「「覇王様、万歳! 覇王様、万歳!」」


 なんか、覇王と呼ばれるのも慣れてきてしまったよな。

 人の慣れって恐ろしい。


「ドレイク様、オーク美に作っていただいたお弁当ですわ」


「サンキュー」


「良かったら、あちらで座ってお食べになられますか? お茶もドレイク様の好きな紅茶を淹れてきましたわ」


「気が利くな。よぉし、少し休憩したら説明するから、みんなも少し休んでくれ」


 ルカと後部デッキの腰掛けに座り食事を済ませる。

 おにぎりも嬉しいのだが、そろそろサンドイッチも食べたいよなぁ。

 小麦の収穫も済んだことだし、脱穀して粉挽することも農民のみんなに教えてやらないとな。

 小麦粉の使い方は料理人チームに教えるとして、最初はやはりパン作りだな。

 バターや牛乳などはあるものを使えるし、必要なもので手元に無いものってパン酵母だけなんだよな。

 そもそも、最も使われているイースト菌って何から作られるのだろう?

 適当に醗酵させたものを使っても良いのかな?

 そうではないとしたら、酵母作りから初めないといけないのだが、詳しい仕方を知らないな。

 地球にいた頃は店で売っているドライイーストを使っていたし、そもそもイーストの作り方なんて気にかけたことも無かった。

 やべぇ……これって最悪、パンが作れないのでは?

 小麦を育てることを優先したのは俺だ。

 パンが作れなぁいなんてことになったら……いやいやいや、絶対に何とかして酵母を作ってみよう。

 自家製酵母で作ったパンなど有名店も使っているものだ。

 絶対に作れるのは分かっている。

 

「ドレイク様、お熱いですのでお気をつけを」


「ありがとうな、ルカ。紅茶の淹れ方もかなり上達したよな」


「ドレイク様のお好きな飲み物ですもの。私だってそれくらいは勉強しますわ」


 いやはや、嬉しいことを言ってくれるじゃないか。

 ポイント10点獲得ってところだな。


「何かハーブでも入れたのか? 後味がスッキリして美味いよ」


「え、ええ……すいみ……こほん。オーク美からいただいたハーブを少し……」


 すいみ?

 そんなハーブあったかな?

 まぁ、良いか。

 美味いものは美味いし、文句を言うつもりなど無いからな。


「ふわぁぁ……お腹が膨れたら少し眠くなってきたな」


「ドレイク様、今日は早朝からずっと動き回っておりましたから。オークに指示を出して先に作業を進めさせておきますわ」


「すまん、それじゃぁ……機械がない部分は解体を始めていてくれ。配線で不明なものは切らないように……」


 眠気が勝ってしまい、そのまま寝てしまった。

 

「ふふっ、ドレイク様……あの子たちには絶対に負けるわけにはいきませんの」


 ………………。

 う、うう……ん?

 やべっ、どれくらい寝てしまったのだろう?

 天井部分の金属板も取り外され、かなりコンパクトな状態になっている。

 空中戦艦だった面影はほとんど残っていない。

 やはり、オークたちに任せて良かったな。

 今は太陽の傾き具合から考えて昼の3時ごろか?

 今日だけで終わるかな?

 ユーナの欠片を取りに行くのもあまり遅れたくないし、今日一日で済ませてしまいたいよな。


「あっ、覇王様! お目覚めになられたのですね」


「任せてしまって済まなかったな。あれ、ルカは?」


「覇王様、何も覚えておられないので? 疲れたらしく、屋敷へ戻りやした」


 そりゃ、寝ていたんだから覚えているはず無いよな。

 そんなの見れば分かるだろう?

 だが、ルカが疲れたって……ああ、慣れない解体作業を手伝っていたのかな?

 領民たちとも仲良くやっているようで良いことだ。

 だが、疲れただけで早退とはいただけないな。


「覇王様、その……お盛んな時期なのは分かりますが……時と場所くらいは……」


 何のこと?

 まさか、領民たちまで俺が跡取りを残すことを期待していたりするのか?

 勘弁してくれ、俺はまだ身体は10歳のお子様だぞ?

 せめて、あと5年は自由気ままな生活をさせてくれよ。

 勇者軍や闇神族の件も片付いていないしさ。


「何のことか分からないが、今日中には片付けてしまうぞ。どこまで解体できたんだ?」


「へ、へぇ……では、散らかっておるので足元にご注意を」


 オークに案内されるがまま、空中戦艦の中を見て回る。

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