この娘はどこかおかしい4
いや、待てよ?
何もせずにただ一緒に寝る程度なら、以前の身体を持っていたコスモスで、すでに慣れているし、特に問題は無い。
コスモスは俺離れしてきたと思っていたが、まだ肉体と精神が上手く合致していないようだ。
いずれはユーナに構いっぱなしになり、俺と一緒に寝なくなる日も来るだろう。
それはそれで少し寂しかったりするのだが……こほん。
ま、これで下らない件が解決するのだから、むしろ安いくらいだ。
「分かった。そのルカの話で手を打つよ。順番はお前たちで決めて、揉め事も起こさないこと、良いな?」
「ルカしゃん、やりまちたね!」
「うぉっしゃぁぁぁ! 屋敷に帰って誰が今晩のお相手をするか決めますわよ!」
「あんたには負けないわ! ドレイク様の初めてはそこのビッチに奪われてしまったけれど、二番目は絶対に私なんだから!」
えっ、俺、奪われちゃったの!?
いやいやいや、そんな事絶対に無いから!
コスモス、話を聞いていたのか?
……あの様子なら聞いていないのだろうな。
まぁ、良いか。
コスモスたちはぎゃぁぎゃぁと騒ぎながら、地下遺跡から出て屋敷へ帰っていった。
『……土神、二度とあやつらをここに入れるでないぞ』
ありゃりゃ、ヤマタノオロチのご機嫌を損ねてしまったみたいだな。
「えぇっと、それでバハ……ムートさん?」
「ふぇ? あ、拙のことでしたね? 何でしょう?」
「ヤマタノオロチと話すことがあるのなら、俺もこの場を離れますが……」
「敬語なんて止めてくださいよぉ。一緒に寝た仲じゃないですかぁ」
俺の同意無しで忍び込んできただろうがっ!
「そ、そうか? それで……」
『ふん、我の顔を見に来た程度だろう? さぁ、拝んだのなら帰れ!』
「そうですねぇ」
たったそれだけ!?
それだけのことで俺の国に忍び込んだのか?
「………………」
うん?
何をぼーっと呆けているのだろう?
「どうかしたのか?」
「拙、これからどうしたら良いのでしょう?」
知るかぃ!
なんなんだ、このドラゴン……もとい、美少女は!?
とても、バハムートになんて思えないし、おつむは弱そうだし、俺が知っているバハムートはなぁ、こう……なんていうか、もっと格好良いんだぞ!
男のロマンを返せ!
『あいも変わらず自分のことが決められんやつだ。また、流れるように放浪し破壊の限りを尽くしておけ』
「あ、それもいいですねぇ」
いや、良くないだろっ!?
なんだよ、こいつ……バカなのか?
バカでしょ!?
いいや、絶対にバカだ!
「待て待て待て! バハムート、行く宛が無いのなら、ここにいてくれても良いんだぞ?」
「ほぇー……それもいいですねぇ。ドレイクと毎日、繁殖行為しているのも悪くなさそうですぅ」
ここにいてくれって言っただけで、どうしてそうなるんだよ!?
頭の中、お花畑なのか!?
お花畑だろ!?
疑う余地なく、絶対にお花畑だ!
「ごほん! 勿論、働かざる者食うべからずだから、少しは役に立ってもらうけどな」
「えへへー、拙は壊すことくらいしかできないよぉ?」
うわっ、役に立たないアピールしているのか?
いや、素でこれなのだろう。
壊す専門か?
鉱夫と一緒に働いてもらうか?
……鉱石も粉々にしてしまいそうだな?
そうなると他の仕事か?
何も思い浮かばないぞ。
『土神、属性の力が失われ弱体化しておるだろう?』
弱体化ねぇ……戦力として加えるのは当然だが、平時は何もしないっていうのも他の領民に示しがつかないんだよな。
『其奴から戦い方を学ぶと良い。きっと、役に立つであろう』
「戦い方? あっ、拳法の使い手なんだっけ?」
「うん、そうですよぉ。えへへぇ、じゃぁ、今から師匠って呼んで」
ナデシコ型との戦いで俺に足りないのは筋力や素早さだ。
それを上げるために格闘技を学ぶというのは悪くない手段か。
そうだな、ついでに一般兵の練度を上げるための教官になってもらうのも悪くない。
「分かった。それじゃ、今からバハムートは……」
ドゴッ!
ヒュゥゥゥ……ボヨォォォン!
ぐはっ、掌底破だと!?
俺の腹にバハムートの拳が直撃する。
ヤマタノオロチの腹のおかげで壁に激突は免れたようだ。
『くはは、土神、いい気味だ』
「いってぇぇぇ! いきなり、何すんだよ!」
「拙は師匠ですぅ。拙を呼ぶ時は絶対に師匠って呼ぶんだよぉ? 今回は手加減したけれど、次からは……お腹に風穴開けちゃうからねぇ」
満面の笑みでしれっと恐ろしいことを言うな!
だが、この娘……瞬間移動を持っているナデシコ型より強いかもしれない。
さっきの掌底破も繰り出すまでの間の動作がまったく見えなかった。
「師匠……これからよろしくお願いします!」
「うむうむー。でも、敬語は止めて下さいねぇ。拙たちはもうただならぬ関係でもあるわけだしぃ、師匠命令ですぅ」
はぁ、師匠って呼ぶ仲でタメ口って意外と難しい注文だな。
俺ってそういうところはしっかりするタイプなんだよ。
でも、師匠からのお願いだし、慣れるようにしないと駄目か。
「それじゃ、師匠、まずは屋敷を案内しますよ。それと仲間と領民にも紹介させて下さい」
ドゴッ
「け・い・ご?」
ぐはっ!
手加減してくれているのだろうが、それでもこの威力。
俺のHPが腹パンを2発受けただけで1桁になっている。
「ご、ごめん! 師匠、これ以上は流石に死んじゃう!」
「あ、そうみたいですねぇ? でも、命令違反をしたわけだし罰は必要だよねぇ?」
……俺、この人のもとで修行して生きていられるのかな?
一般兵の訓練をお願いするのも、少し様子を見てからにするか。
訓練で死人が出るなんて最悪なことだしな。
「ただ、戻るだけでは時間の無駄になるし勿体無いですねぇ? そうだ、ドレイク、拙をおんぶして屋敷に戻ってぇ」
「えっ? お、おんぶ? それじゃ……はい」
師匠が俺の背に覆う。
うほっ、おっぱ……じゃなくて、胸の感触が!
これって一種のご褒美ですか?





