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俺、神様になります  作者: 昼神誠
ゴッドスレイヤー
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この氷結はどこかおかしい8

「ダーリン、私、ウルルさんに会ってみたいの? ……良い?」


 ズッキュゥゥゥン


 もう、そんな顔をして頼まれたら断れないでしょ。

 

「はぁ……ルーシィ、ここから遠いの?」


「わかんないわけ」


「わからないって……それじゃ、行けないでしょ?」


「ダリアさん、ヴァナヘイム側から入国したのは初めてだから仕方がないですよ。それにこの変わらない景色では……」


 確かに今も眼前に薄っすらと見えるガルフピッゲンが目印になっているから良いけれど、あの山が見えなくなったら遭難してしまいそうな感じに似たような樹氷の森が続いている。


「ガルフピッゲンの麓まで行けば、場所もわかるってわけ」


「それではどちらにしてもあの山を目指すことに変わりはないようですね」


「それじゃ、早く行きましょ。私、ウルルさんに会ってみたいわ」


 黙々とガルフピッゲンの麓を目指す。

 今までは入国すると必ず神族が襲ってきていた。

 この国も例外ではないはず……警戒しながら歩くっていうのは疲れるのよね。


「よっ……ほっ……」


「ユーナ、何をしているの?」


「御霊の操作を試しているの。私もルーシィさんみたいに使えるようになりたいから」


「属性反応が起こったら大変なんじゃ?」


「そよ風くらいじゃ問題ないわけよ。あっしらを飛ばすほどの風を起こすと反応して、ヤバいことになりかねないだけなわけ」


 そういうものなのね。

 でも、風を起こして飛べたら確かに楽よね。

 ……そうだ、見えている距離なら私の能力で跳べば少しは距離が稼げるよね?


「みんな、掴まって。短距離ジャンプをするわ」


「まだまだ距離もありそうだし、だりっちに頼るのもありなわけ」


「ダーリン、行っちゃって!」


 ヒュン

 ヒュン


 細かいジャンプを繰り返し、ガルフピッゲンの近くまで来た。

 複雑な座標指定を必要とする小ジャンプもかなり慣れてきたわね。

 この調子で魔法のほうも上手に扱えるようにならないといけないのだけれどね。


「入山口はどこかいな~」


「こっちから見るガルフピッゲンは側面が違って見えるので正面では無いですね」


 以前はどこから来たのか知らないけれど、ヴァナヘイム側から見えるガルフピッゲンは違って見えるのね。

 でも、観光地なら入山口も一か所なんてことはないはず。


「えぇ、それじゃ正反対まで行かないとダメなの?」


「それはまだまだ距離がありますね……」


 山の麓をぐるっと周ると時間はかかるけれど、ルーシィたちが知っている場所までは行ったほうがいいわよね?


「トンネルなんて都合の良いもの……無い?」


「あ、トンネルならあるわけよ……自然ものだけど」


「お母さん、まさか氷結道を進むのですか?」


「氷結道?」


「天然のトンネルなんです。とても綺麗な洞窟で観光地として有名なんですよ」


 観光地?

 まさか、ルーシィ……ただ、貴女が観光巡りをしたいだけなのでは?

 

「この近くに入口があれば良いのですが……リア、どうしますか?」


 トンネルを探すのも、山の周辺を回るのも移動する上では同じことよね?


「麓をぐるっと周って、トンネルの入口が見つかれば入ってみる……それで良い?」


「移動に関してはだりっちに従うわけよ」


「それでは先に進みましょう」


 小ジャンプを繰り返し、ガルフピッゲンの麓を移動する。

 私の能力は移動に関してはみんなの役に立っている……戦闘面でも役に立ちたいのだけれど、神族を前に恐怖を感じるうちはまだ無理そうだ。

 

「おっ? おおお、見えてきたわけ」


「凄い断崖絶壁ね」


「天の壁と言われている有名なロッククライミングの聖地なんですよ」


「まさに壁ですね。あれを登るなんて命知らずな人もいるんですね」


「死亡率100%なわけ」


 そんな場所を観光地にして良いの!?

 ま、挑まなければ落ちることは無いし構わないのかしら?


「ふふん、成功率0%ってことね! 上等じゃないの」


「ユーナさん、そんな時間はありませんよ」


 まったく、ユーナったら本来の目的を忘れてもらっては困るのよ。

 

「ルーシィ、この辺りは来たことがあるの?」


「そうなわけ。もう少し進むと入山口が見えてくるわけ」


「ダーリン、ウルルさんに会いに行こうよ」


 思ったより早く着いたし、神族も襲いかかってこない。

 会いに行ってみるのも良いかもね。


「ルーシィ、ウルルのいるところに案内できる?」


「町は山を下ったところなわけ。氷雪宮とは間逆な位置にあるわけよ」


 この辺りの場所は覚えた。

 戻ってくるのは私の能力を使えば簡単だ。


「それじゃ、町に案内して」


「リア、危険かもしれませんよ?」


「お母さんの親戚がいるのよ。大丈夫に決まってるじゃない」


「ま、住民のほとんどはノーマだろうし、ウォリアに会わなければ……いや、うるっちがウォリアだったら厄介なわけね?」


 そうか、ノーマやウォリアって種類がいるのがわかったのはつい最近だ。

 ユーナのお母様と親戚に当たるから悪い神では無いとは限らない。

 ……そもそも、シィさんだって純神ならノーマかウォリアのどっちなのだろう?

 ウォリアが悪神とは限らないが、凄く狡猾で今まで良い神だと思わされていたのかもしれない。


「もし、ウルルさんまで襲いかかってきたら……ユーナさん、そのときは……」


「もちろんよ! その時は親戚だろうが壊してやるわ! 神族は滅んで当然だもの」


 ユーナも神族に恨みを抱いているのに変わりはないか。

 そうよね、ディーテやガールンに酷い目に遭わされ、信じていた神に騙されて石化されて、これは私怨もあるけれどこの世界を救うための戦いでもある。

 神族が世界を裏から操るシステムは壊さなければならない。


「あっ、まさかあれが町でしょうか?」


 ガルフピッゲンを背にして数十分ほど小ジャンプを繰り返したとき、遠目に建物がいくつも見えてきた。

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