この氷結はどこかおかしい7
「昔は国境にこんなの無かったですね……」
「ヴァナヘイムとの国境だけに立てるのも不明なわけね」
「ま、どっちでも良いじゃない! 早く神族どもを壊したいわ!」
ユーナがまた先行する。
ヴァナヘイムからヨトゥンヘイムへユーナが踏み入れた瞬間……。
バキン!
「なっ!?」
「ユーナ!」
ユーナの身体が一瞬で凍結する。
ありえない……ユーナの身体は闇属性で作られた人形だ。
「状態異常、凍結? ユーナのステータス画面に氷の結晶のアイコンが付いているわけね。こんなの初めてみたわけ」
「闇属性にデバフは通用しないはずですが……」
「ま、デバフと言えば闇属性の専売特許なわけだしぃ……」
ルーシィとニーニャの話についていけない。
私もこの世界の仕組みを知り尽くしているわけではないから、仕方がないのだけれど……闇が凍るなんてことは無いのは私にだって理解できる。
「……ユーナが戻ってこないですが、まさか凍ったままなのでしょうか?」
「こっちになんとか連れてくるにしても、足を踏み入れればあっしらも同じ末路を辿りそうなわけ」
「お母さん、私がやってみます」
にーにゃが空間から取り出したのは投げ縄だ。
あれで凍ったユーナをヴァナヘイム側に連れ戻すのね。
ビュンビュンビュン
「はっ!」
パキンッ……ボキッ……
「えっ!?」
ヨトゥンヘイム側に入った縄が一瞬で凍りつき折れてしまう。
縄が凍るって……ヨトゥンヘイム内の気温、異常に低すぎない?
「まさか、投げ縄が凍るなんて……」
「だりっち、人形を一旦解除するわけよ」
「あ、そうか。そうすれば、ユーナも戻ってこれるわね」
ダークドールの解除……ダークキャンセラー。
ドロッ……
氷漬けになっているユーナだけでなく、私の周りにいるルーシィたちも私に影に戻る。
なんとかして対象だけを解除できるように練習しないとダメね。
ズズッ……
「ぷはぁ! もぉう、なんで闇が凍るのよ!」
「ユーナ、良かった」
『リア、また私たちまで解除してしまって……』
「ごめんなさい、まだ慣れていないみたいで……ふぇ……へっくち!」
うぅ、それにしても寒い。
『リア、この際だから身体を代わりましょう。寒さに関しては私のほうが慣れていますし』
私の身体をレベッカが動かしてくれるのは助かるわね。
でも、また神族が襲ってきたらレベッカも人形のほうが戦いやすいだろう。
「いえ、寒さよりも今は戦いに備えないと」
『そ、そうですね……では』
ズズッ
「なんとか凍結しないようにならないと先に進めないわけね……はてさて、どうしたもんか……」
「ルーシィ、火龍神の御霊で私たちの周辺だけ気温を高めることはできないでしょうか? 入国できたとしても、リアがこのままでは風邪を引くのはわかりきっていますし……」
「それがあったわけ! すっかり忘れていたわけよ」
「でも、ルーシィさん、使いかたわかるの? 私の風龍神の御霊なんてたまたま動いただけだし」
やはり、ユーナ、あれは偶然だったのね。
「ま、とにかく取り出してみるわけ」
ルーシィが炎龍神の御霊を取り出す。
ボゥ……
「あれ、暖かい?」
「さすが、ルーシィですね。もう使いこなしているなんて!」
「ルーシィさん、どうやったの! 私にも教えて!」
「手に取っただけでなんもしてないわけよ。でも、これならヨトゥンヘイムへ入れそうなわけね」
まだまだ発動条件が不明だけれど、これだけ暖かいと凍結の心配は無いよね?
「私が先に入ってみます。リア、凍ったら解除してください」
「うん、わかったわ」
レベッカが先行し、ヨトゥンヘイム内へ入る。
さっきはユーナが一瞬で凍ってしまったけれど、レベッカに変化はない。
「どう?」
「寒さも特に感じませんね。これならリアでも大丈夫でしょう」
「ふふん! 安全とわかれば、ちゃちゃっと神族を壊しに行くわよ!」
私もヨトゥンヘイム内へ入る。
寒さも特に感じない。
龍神の御霊、風もそうだけれどこれは色々と便利ね。
ヨトゥンヘイムでは氷龍神の御霊が置いてあるのかしら?
それを取れば、この国も人が住めるようになるはずよね。
「さぁってと……氷雪宮はこっちなわけよ」
「氷雪宮はガルフピッゲンの中腹にあるんですよ。入山口から入らないと遭難してしまうので、まずは入山口に行きましょう」
また登山をするはめになるなんて、装備もないし大丈夫かな?
「ユーナ、風龍神の御霊は使えないの?」
「それはやめておくほうがいいわけ。属性視で見るとわかるけど、あっしらの周辺だけ火属性の濃度が少し濃くなっているわけよ。ここで風属性の濃度を上げると属性反応が起きてしまうかもしれないわけ」
「火と風ならフレアトルネードが起きたりするのかな?」
「どちらにしても歩いたほうが安全でしょう。辺りが樹氷だらけで方向感覚を失いそうですが……」
「昔はこんなじゃなかったわけ」
「私が来たときもそうでした。人族が訪れても一瞬で凍りつくなんてことは無かったですね。風景も針葉樹林の森が広がって美しかったですよ」
針葉樹林の森か、地球で言うところのシベリアなど北部に分布するタイガのような場所だったのね?
その木々が凍りついて樹氷になっていると言うことは、氷の属性力が増したってことかしら?
「氷属性が増したってこと?」
「そうなわけ、氷神族は良い神ばかりだったけれど……この様子じゃ、それも昔のことなのかもね」
「シィーさんと親戚に当たるウルルさんは無事でしょうか?」
「お母さんの親戚!? それって、私とも親戚に当たるの?」
「ま、ヨトゥンヘイムは太古の時代から水属性の国のミズガルズと仲が良かったわけよ。でも、うるっちか……氷雪宮に行く前に寄ってみるわけ?」
ユーナのお母様がこの国と関係があるのなら、そのウルルって神族には会ってみたいわね。
……良い人ならだけれど。
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