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俺、神様になります  作者: 昼神誠
混沌の世界へようこそ
39/592

この帰宅はどこかおかしい

 一時的とはいえ、共闘関係になった杏樹がまさか敵として立ちはだかるとは。

 原因は愛輝なんですけどね。

 まだ、ドリアドの町までは一時間ほどかかる。

 杏樹を愛輝に任せて一人で帰るにしても、モンスターと遭遇してしまったら武器を装備していない俺では太刀打ちできない。

 正直、ドリアドの町の中まで愛輝に付きまとわれるのは勘弁願いたいのだが、街道上では一緒にいるのが安心できる。

 やはり、杏樹をなんとかするしかないか。

 

「そなた、そろそろこのくらいで勘弁願いたいでござる」

「何を言う! 貴様が私のルーシィをすぅんごぉい目に遭わせたんだろう!」


 こいつ、すぅんごぉい目って何かわかってるのか?

 良ければ、実践を……。

 確実に殺されるからやめよう。


 ピピピ、ピピピ


 愛輝のスマホが鳴り出した。

 こんなときに何だよ。


「ちょっと失礼するでござる。ダリル嬢に関する最新速報が届いたでござるよ」


 緊張感出ないなぁ、もう!


「な、な、な、何ですと! リュージ殿、今すぐにドリアドの町に行くでござる!」

「何かあったのか?」

「新ユニットの発表記者会見があと30分後に始まるでござる」


 こんな夜中に誰も見ないだろ。

 ユーナもダリアも時間帯くらい考えろよ。


「おいっ、どこに行く! リュージ!」

「お前も来い! ユーナが歌手になるぞ。ついでにその相方は超絶美少女だ!」

「な、な、な、何だってぇ! 行こう! ルーシィは私が背負うから急ぐぞ!」


 あれ、やっぱチョロいわ。

 ついでに記者会見に突撃したところを逮捕されて牢獄にぶち込まれてくれたら万々歳だな。


「愛輝さん、30分ではさすがに間に合わないのでは?」

「大丈夫でござる。吾輩のエアーはこういうときに役立つでござる」


 普通のエアーは扇風機ほどの風力なのだが、なぜか愛輝のエアーは竜巻が起きるらしい。

 でも、竜巻を使うと間に合う?

 ま、まさか。


「エアー! でござる」

「ちょっ、何をする! 貴様ぁぁぁ!」

「うわぁ!」


 竜巻に飲まれて、空高く打ち上げられる。

 一瞬だがドリアドの町が見えた。

 竜巻に打ち上げられて、そのまま運んで貰うというわけか。

 危なすぎだろ。

 

「愛輝さん、着地はどうするつもりで?」

「何を言っているでござる? 早くたどり着くための手段でござるよ」

「え……それじゃぁ、着地は?」

「神のみぞ知るでござる」

「アホかぁぁぁ!」


 死んだ。

 このまま、地面にグチャってなってわいは死んでしまうんや。

 お父さん、お母さん、死ぬ前に田舎のおばあちゃんが作る特製コロッケをお腹いっぱいに食べたかったです。


「リュージ、リュージ! かなり高度があるぞ!」

「だから、着地する手段が無くて死ぬかもって……ハッ!?」

「ここから落ちると確実に逝くぞ! はわわわ、あと何秒だ!」


 こいつもバカ――!

 もういやだ! 

 付き合ってられん!


「このままでは町に被害が出るから竜巻を消すでござる」

「おいっ、ちょっと待て! 今、消されたら確実に死ぬぞ!」

「何を言うんだ、リュージ! おい、そこの愚物! 今すぐに竜巻を消せ! こ、これで死……ふへ、ふへへへ」


 竜巻が消え、真っ逆さまに地面に落ちていく。

 まさか、こんな死に方をするとは。

 せめて彼女くらい欲しかったぁぁぁ!

  

 ギュルルル!


 どこからか鉄線が飛んでくる。

 俺と杏樹、愛輝、気を失ったままのルーシィの身体に巻き付く。


「はわわわ! どんなご褒美だ、リュージ! これから逝くというのにさらに鉄線が私の身体に巻き付いたぞ! これでは受け身を取ることもできん、ヒャッフー!」

「この鉄線は?」


 見たことがある。

 怪獣戦で欽治が持っていた武器だ。

 まさか、欽治か?

 だが、間に合わない!

 地面まで残り10mほどのときだった。

 身体が思いっきり引っ張られる。


「何でござるかぁぁぁ」

「リュージ! 傷口が開……あふん」


 今度こそ逝ってくれ杏樹。

 でも、この速度じゃどこかにぶつかったら即死だぞ。

 欽治、どうするつもりだ。


「おお、リュージ殿! 湖でござる!」


 ユーナの家のそばにあるビハ湖に落とすつもりか?

 高さが10mほどあっても、水面なら何とかなるか?


 バシャ――ン!


 思ったより痛かったが生きているだけマシか。

 ルーシィも気を失ったままだが、沈んでいくところを救出することはできた。

 杏樹?

 湖に沈んで、もう二度と浮き上がってこなくていいぞ。

 南無阿弥陀仏……っと。

 欽治はどこだ?

 いつも良いときに助けてくれるし、お礼を言わないと。


「大丈夫ですか、リュージさん?」


 はわわわ!

 もう、可愛すぎてたまらなくなるな。

 お前、本当に男か女のどっちなんだよ?


「ゴホッ……ゴホッ! た……助かったよ、欽治」

「今回も安全にたどり着けたでござるな」


 どこが安全だ! 

 ほぼ、あの世行き確定だったろ!


「今の技って、この前のドラゴンのときのだよな」

「はい。四十七の翔慟賦剣とどうふけんの一つ、捕鶏剣です」


 鳥取県はキャッチ技ってことか。

 このまま、全部見せて貰いたいけど今はやめておくか。


「杏樹さんまでいたんですね。また、凄い出血していますね」


 愛輝の野郎が助けやがった……ちっ。


「そいつは放っておいて大丈夫だ。簡単に死ぬほど弱くはない」

「それより、この人を何とかしてあげないとな」

「え、ええ……」

「何か大人っぽくなったか?」

「吾輩も思っていたでござる。どうしたでござるか?」

「その、元の世界で……」

「おおおぅ! 時間がヤバいでござる! すぐに会場に向かうでござる!」


 欽治の話を聞かせろよ!

 ま、後で話を聞けばいいか。

 ルーシィを背負い、急いでドリアドの町に向かった。

 杏樹本人?

 放置だ、ユーナの家の近くというのが不安材料ではあるが。


「ここがドリアドの町でござるか?」

「それでダリアとユーナはどこにいるんだ?」

「ここの教会でござる」


 なるほど、ユーナの職場か……。

 って、よく神父さんがこんな夜中に許可してくれたな。


「それなら場所はこっちだ」

「おお、かたじけないでござる」

「欽治はこの人をギルドに連れて行ってくれるか?」

「は、はい。リュージさん、お気をつけて」


 ?

 何に気を付けるんだ?

 とにかく、教会へ向かおう。

 愛輝を教会まで送ったら、俺は家に戻って寝るとしようか。

 いや、目の保養のために愛しのニーニャさんに会いに行くのも良いな。

 ギルドにいたらだけど。


「ここが教会でござるか。ホスピリパの町よりは小規模でござるな」

「まあ、田舎だからな」

「いやいや、風情があって良いではないでござるか。では、中に入るでござる」

「俺は少し疲れたから家に帰るよ」

「そうでござるか。元気なら無理でも連れて行くつもりだったでござるが、疲れたなら仕方ないでござるね」


 優しいのか、優しくないのかどっちなんだろう?

 

「んじゃ、れで」

「おっと、リュージ殿。レインを交換しておくでござる」


 レイン?

 ああ、スマホか。

 愛輝と連絡先を交換し、そのまま別れる。 

 欽治がギルドに向かっているはずだな。

 ニーニャさんに会いたいしギルドに寄るか。

 ギルドに入るとニーニャさんと欽治が椅子に座って話し合っていた。


「あっ、リュージさん。お身体のほうは大丈夫ですか?」

「え、ええ。ホスピリパの町で薬を貰ったので大丈夫です」

「心配しましたよ。これからはご自分の身体も心配してあげてください」


 嬉しい――!

 ニーニャさんがたかが風邪の俺を心配してくれていたとは。

 よし、結婚しよう。

 

「リュージさん、さっきの女性はどこで?」

「杏樹が連れていた人なんですが、どなたかご存知なんですか?」

「ええ、ホスピリパ総合病院で勤務しているルーシィ・ルグレイドです。気を失っていましたが、何があったのですか?」

「それがですね……」


 ニーニャさんに事の顛末を説明した。

 愛輝が明らかに悪く、俺は逆に助けようとしたって美的に話を変えてだが。


「そうですか、助けていただいてありがとうございます」


 これでニーニャさんのポイントもグッと上がったことだろう。

 結婚はいつにしようか、ニーニャん。


「欽治、そろそろ帰るか」

「そうですね。夜も遅いですし」

「では、ニーニャさん。また、明日」

「はい、お待ちしております」

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