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俺、神様になります  作者: 昼神誠
ゴッドスレイヤー
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この侵攻はどこかおかしい10

 まるで壁にへばり付く虫のようにルーシィが龍の彫像にしがみついている。

 興味深そうに彫像の素材を調べているのかな?


「ううん? これって……」


「なにか見つけたの、ルーシィ?」


 ルーシィが龍の彫像の胸の辺りを入念に調べ始める。


「お、落ちないでくださいね」


「わ―ってるわけよ」


 地上から龍の彫像の頭まで高さが10メートルほどだ。

 胸は8メートルくらいの高さになるのかな。


 ガンガンガンッ


 神殿内に大きな打撃音が響き渡る。


「ちょっ! そんなに叩いたら傷ついてしまうんじゃないの!」


「ここに妙な隙間があるわけ。レベッカが見た光の正体がわかるかも―!」


 何処から取り出したのだろうか?

 ルーシィが金槌を手に取り彫像の胸の部分を思い切り叩いている。


「リア、この国の住人は滅びました。特に気にすることもありませんよ」


 まあ、そうなのだけれど……。

 ムスペルヘイムに居るほとんどの神族はヴェスパによって吸収されてしまったからあまり滅ぼした感覚が無いのよね。

 

 ガンガンッ……バキッ


 ルーシィが龍の彫像の胸の部分をついに壊してしまった。

 床に落ちた破片をレベッカが手に取り私に見せてくる。


「これって見たこともない石ですね」


 あまり鉱石には詳しく無いのよね。

 レベッカに手渡された破片をよく見ると二層になっているようにも見える。


「これって表面の部分だけ剥がせそうじゃない?」


 パリ……パリパリ


「あっ本当だ。簡単に剥がせますね。これは……鱗?」


 見た感じ鱗のような形にも見える。

 その鱗が引っ付いていたもう片方の破片は溶岩だろう。

 外にゴロゴロと転がっている岩と同じ素材に見える。

 

「どうして龍の鱗なんか貼っていたのでしょう?」


「まぁ龍の彫像だし龍化できる神族の古い鱗を集めて貼り付けたとか?」


「ああ、そういう考えもありますね? 私はこの彫像が実は本物の龍を石化させたものって……あっ!」


 ドクン


 石化ですって?

 そんな……。

 ヒメに私が石にさせられていたときの恐怖が蘇る。


「い、嫌……嫌……いやぁぁぁ」


「リアごめんなさい! 嫌なことを思い出させてしまいましたね」


 ギュゥ


 レベッカに力強く抱きしめられる。

 怖い記憶も少しずつ薄れていき身体の緊張も解けてきた。

 目の前の彫像がもし生きていたドラゴンだとするとこんな芸当ができるのは土属性の神々だけよね?

 ヒメの先祖がこのドラゴンに対してやったのか?

 龍の彫像を見ると石化される恐怖が蘇ってくるようで直視することができなくなってきた。

 まだまだ私の意識に深く植え付けられた神族に対する恐怖心は健在のようだ。


「あった、あったわけ! 光の正体がまさかこんなのだなんて! キャ―!」


 ポゥ


 ルーシィが嬉しそうな顔をしながら龍の彫像から赤い水晶玉を取り出していた。

 あの赤い水晶玉、色は違うけれどどこかで見たような気がする。

 何色の玉だったかな?

 見た場所もよく思い出せない。


「へぇ綺麗な水晶玉ですね。赤い水晶なんて初めて見ました」


「この光……火属性なわけよ。それもかなり高濃度の」


「触って大丈夫なの?」


「あっしはほら身体が人形なわけだしぃ熱さは感じないわけよ」


 私は触らないほうが良さそうかな?

 でも触ってみたいなぁ。

 まるで巨大なルビーみたいで宝石が嫌いな女の子なんて居ないよね?

 手を水晶玉に添えてみる。


 ポゥポゥ……ボワッ


 水晶玉が激しく赤い輝きを放つ。

 でも熱くは無い。

 

 クラッ


 突然意識が遠のいて……あれ?

 身体が動かない?

 

「これは……だりっちに共鳴しているわけ?」


「リア、手を離したほうが良いのでは?」


「くすくす……これは良いものを手に入れたわ」


 ザッ


 レベッカとルーシィが突然私の前でひざまずく。


「タナトス様!? 失礼いたしました!」


「さ―せん」


「くすくすっ、別に構わないわ。ルーシィ教えてあげる。この水晶は火龍神の御霊よ」


「龍神の御霊!? それって……」


「この御霊を壊せばこの世界から火属性魔法が失われるわねぇ? それも楽しそうだけれど持っているとそれだけですべての火魔法を操る力を得られる。どっちにしよっかなぁ?」

 

 ユーキが表人格に出てきたのか。

 何も言わずに出てくるから驚いてしまった。


「タナトス様あっしが持っておくわけよ。壊すのは他属性の神族を滅ぼした後のほうが……」


「くすっ見つけ出したのはルーシィよ。貴女の好きにすると良いわ」


「やっりぃ!」


「ルーシィ! タナトス様に無礼を働きすぎですよ!」


「くすくす、レベッカ私は気にしていないわ」


「しかし……」


「ふわぁぁ、まだ力が戻っていないからもう少し眠りにつかせてちょうだい。オリジナルはどうなってもいいけれどこの身体だけはしっかり守ってね」


「はっ!」


「りょ」


 オリジナルって私のことかな?

 どうなっても良いって……。

 炎神族の前で怖くて何も出来なかった私のことをまだ根に持っているようだ。

 私だって何とかしたいのに恐怖を克服する魔法なんてないのかな?


「あれ、身体が動く?」


 バリ……バリバリバリ……ズドォォォン


 龍の彫像が粉々になって崩れ去っていく。

 国の重要文化財を壊してしまって良いのかなぁ?

 

「龍神の御霊を取ったから崩れたわけね?」


「それだけで崩れるはずが無いでしょう? ルーシィが何度も力強く叩くからですよ」


「こんな金槌で粉々に出来るわけないっしょ? 粉々になったってことはこの彫像は火龍神そのものなわけ?」


 ゴゴゴッ……バキッ……バコン


 神殿の柱や屋根にも亀裂が入り今にも崩れそうな状態になる。

 炎龍神の御霊を盗った罰でも当たったのか?


「劫火宮まで?」


「退避するわけよ!」


「どうして神殿まで壊れそうになるのよ?」


「リアここから早く逃げますよ!」


 ガラガラガラ……ズッガァァァァン!


 精一杯に外に向かって走る。

 途中で床も崩壊してきたけれど抜け出せてよかった。


「はぁはぁはぁ……あ―怖かったぁぁぁ」


「見事に壊れちったわけね。ま、じっくりと観察できたしあっしは満足なわけぇ」


 ルーシィ……やっぱり貴女が来たいだけだったのね?

 

 ズゴゴゴゴ


 今度は地震?

 もう次から次へと……御霊を盗った呪いなんじゃないの?


「マグマが急激に固まっていく……これは?」


「なるほど……ムスペルヘイムを火の国たらしめていた御霊を奪った影響なわけ」


「それだけでここまでの現象が? でしたらこの国は?」


「……滅んだ?」


「ま、そういうわけね。火属性も薄まっているようだし時間が経てば植物も生えて人族も暮らせる環境になるってわけよ」


 人族が暮らせる環境になる?

 遥か昔の頃のように人族も普通にやって来られる環境になったのは良いことだ。

 

「炎神族はこれで滅亡ってことですね? リア私たち神を相手にやったんですよ」


 そうか私たちは神に逆らえただけでなく勝てたんだ?

 この風景を見ると本当に神に勝てた実感が湧いてくる。

 まだまだ不毛の大地に変わりはないけれどそれは時間だけが解決してくれる。

 鳥や虫や風が種を運び植物が生えてくることでここも広大な草原に変わって行くことだろう。

 

「お次はユーナとニーニャが風の神族を滅ぼすのを待つわけよ」


「2人で勝てるか心配じゃないの?」


「ま、なんとかなるっしょ?」


「ユーナは基本が氷属性ですしニーニャは弓や銃が中心となりますよね?」


「あ……でも風属性かぁ。ユーナやニーニャとは相性が悪すぎるわけね」


 属性同士には相性というものがある。

 それはこの世界での常識だけれど氷に風って……。


「どこが相性悪いの? ルーシィ」


「……ヴァナヘイムの国境付近まで行ってみて良いわけ?」


「ヴァナヘイムの近くですか?」


「それにヴァナヘイムには狂飆宮があるわけ。そこに向かえば絶対に良いことがあるわけよ!」


 ルーシィあんたが行ってみたいだけでしょ!?


 ズズッ……


「ぷはぁ! ここは!?」


「お母さん!」


「ユーナ!? もしかして……」


 ユーナとニーニャが私の影から出てきた。

 それはつまりヴァナヘイムで倒されたことを意味する。


「もう! なんなのよ、あいつ! あんなの絶対にチートよチート!」


 あっ、やっぱり負けたのね?

 今はご機嫌が斜めみたいだし少ししてから話しかけてみよう。

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