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俺、神様になります  作者: 昼神誠
ゴッドスレイヤー
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この現実はどこかおかしい10

 兎に角、この溶けかけているダークドールに長居するのは良くないのは分かる。

 ユーナが作り出した空のダークドールに入ってって言っていたけれど、どうやって中に入れば良いのかな?

 それに私の本来の肉体は何処にいったのだろう?


「う――ん、何度考えても思い出せない」


 ユーナが湯船に浸かりながらずっと頭をかしげている。

 湯船に浸かったユーナの身体は何度見ても私の肉体にそっくりだ。

 顔はユーナだけれど身体が私?

 もしかして私の身体に似ているのでは無くてユーナが私の身体を動かしている?

 そうだ幻影魔法。

 あれは光を屈折させて相手に見せたい姿を見せる魔法だ。

 シャワーを浴びている時のユーナは水が光を屈折させたから一時的に幻影魔法が解けたのね。

 

 ビキッ


「痛っ!」


 一瞬変な光景がフラッシュバックする。

 そうだ、以前もユーナが私の本体である肉体を動かしたことがあった。

 でも私自身は肉体から出ることはできないはずだ?

 それが今やダークドールとして仮の肉体に入っている。

 

「まぁいいや。ダーリン、早く入らないとその身体も溶けて無くなっちゃうわよ」


 はぁ、ユーナは前向きと言うか意外とあっさりしていると言うか……。

 思い出すことを止めてしまったようだ。


「……ねぇ、ユーナ」


「どうしたの?」


「貴女の身体って……私の?」


「ふぇ? 私の身体? 何故かボン・キュッ・ボンな身体になっているけれどあれ? だったら私の身体って何処にあるの?」


 ……そうだ。

 どうしてユーナとニーニャは本物の肉体が無いのかな?

 

 ビキッ


「うっ!」


 まただ……。

 見たことのない光景がフラッシュバックする。

 暗い森の中で私がユーナを食べ、知らない和室でニーニャを食べ、氷の部屋でルーシィを食べる光景が連続で頭の中に映し出される。

 食べてしまったから身体が無い?


「ダーリン?」


「ご、ごめん……ちょっと立ち眩みがしたみたい」


 ……そんなことあるはずがないよね?

 そもそも人間が人間を食べるなんて有り得ないことだ。

 しかも3人も食べてしまうなんて異常者以外の何者でもない。

 私は当然だが普通であり健全な女の子だ。

 そもそも私が人を食べてみたいなんて思ったこともない。


「それは人形が溶けて徐々に無くなっているからね。早くそこのダークドールに入らないと命だって危ないかもしれないわよ」


 確かにこのままでは闇属性ごと私の意識も排水口に流れていってしまう。

 それにしてもヤドカリではあるまいしなんだか身体を入れ替えるって変な気分だ。

 空のダークドールに触れてみる。

 

 ス――……


「あ……れ……意識が……」


 今の身体から触れている人形に向かって私が流れて行くような感覚に襲われる。


 ス――……ドロッ


「うわぁ……ダーリン大丈夫かな? 人形の形はダーリンになったし意識は移ったよね?」


 ………………。


『我の声が聞こえるか?』


 誰?

 目の前に黒い球が浮かんでいる。

 黒い球が私に話しかけているの?


『返事はできそうにないか』


 やはり黒い球が喋っている。


『光龍神の御霊を見つけよ。お主が助かる道はそれしかあるまい』


 私が助かる道は無い?

 何を言っているの?

 私は助けを求めているわけではない。

 あっ、今って何処に居るのか分からないから困っている?


『呪いの声には従うな。自分をしっかり持て』


『くすくす……見ぃつけた』


 今度は女性の声が聞こえてくる?

 どこかで聞いたような声だ。


『早いな……もう見つかってしもうたか』


『だってぇ同じ心の中でしょ。くすくす、まだ消滅していないなんて本当にしぶといわね。同じく黒い害虫並みの生命力なのかしら?』


 これって私の声?

 違う、私は黒い球に向かって話しかけていない。


『呪いに話すことなど無い。さっさと我を封じるが良い』


『くすくすくす、もちろんそうさせてもらうわ。貴方が何をしようと全てが徒労に終わるだけ。あのユーナにも呪いをかけたし直に消滅するわ。この肉体もあと少しで私のものとなるのよ、ぷーくすくすくす』


『そうはさせぬよ』


『くすくす、貴方だって神族を憎んでいるのでしょ? 神族は必ず滅ぼしてあげるわ。この身体に傷を付けてくれたお礼は絶滅という手段で返してあげるつもりなの』


『娘は関係ないだろう?』


『そうかしら? オリジナルもそれなりに神族を憎んでいるわよ。恐怖しているとも言えるかな?』


『返り討ちに遭わないことを祈るだけだ。貴様とて一筋縄ではいかないことは理解しておるのだろう』


『くすっ、そこはほら貴方の闇の力を使えば簡単に済むでしょ』


『闇とて万能では無い』


『くすくす貴方と議論するつもりなど毛頭ないの。アビスシャット!』


 バキン!


 黒い球が赤黒い檻に閉じ込められる。


『くすくす、すべての神を殺し龍神の御霊を集めるのよダリア』 


 ………………。


「う……」


「ダーリンやっと起きた―」


 眠っていたの?

 いつの間にか服を着ている。

 まさかユーナが浴室から運んでくれたのかな?


「もう大丈夫だよ。また黒い液体が出てきたら言ってね」


「私……身体を移動したの?」


「そうですよ。定着に少し時間がかかったようですね」


 定着か。

 あのマネキンにねぇ?

 そう思うとこの身体は変えが効くわけだ。

 少し無理をしてもどうにかなると考えれば便利かもしれない。


「そんなことより早くご飯を食べましょ。お腹ペコペコ―」


 テーブルの上には様々な料理が並んでいる。 

 ニーニャって料理も得意なのか。

 ドリアドのギルドって飲食店も兼ねていたし、これはポイントが高いわね。


「材料が足りなかったので私の空間からも少し使わせていただきました」


「そっか、だからステーキもあるのね」


「ふふん、ニーニャんはいつだって凄いんだから」


 どうしてユーナが自慢気になるのか分からない。

 その後、夕食を済ませ3人で川の字になって眠りについた。

 ここに住んでいるはずの主人はいつまで経っても帰ってこなかった。

 一体何処に行ったのだろう。

 使わせてもらっているのはこちらだしお礼くらいは言わせてもらいたい。

 逆に激昂して寝ているところを襲いかかって来られても変えのある肉体なら特に気にはならず安心して眠れる。

 それよりもユーナは何が何でも守らないといけない。

 現時点で傷が付いて簡単に治らない身体を持っているのは彼女だけだ。


 ミーンミンミンミン!


 翌朝……蝉の鳴き声で目が覚める。

 ニーニャが先に起き朝食を作ってくれているようだ。

 ユーナは私の隣でよだれを垂らしながら眠っている。

 もうだらしがないんだから。

 タオルで口元を拭いてあげる。

 さてと今日こそ現在地が何処なのか突き止めないといけない。

 

「ニーニャ、おはよう。朝早いのね?」


「おはようございます。ダリアさんも起きるの早いですね」


「体内時計はしっかりとしているわよ。どんなに夜更ししても起きる時間は嫌でも目が覚めてしまうの」


「ふふっ、それは大したものですね」


 さてとユーナの言う通りヘルヘイムに行く準備もしておかないといけないか。

 ……頭の中で私の声が言っていた。

 すべての神を殺し龍神の御霊を集める。

 私が何をすれば良いのか分からないけれど神族を滅ぼすのは賛成だわ。

 ディーテやヒメのことを思い出すだけで憎悪が激しく膨らんでくる。

 

「ダーリン顔怖いよ?」


「あっ、ユーナおはよう」


「嫌なことでもあったの?」


「えっ? あ……あはは、ユーナの言う通り神をぶっとばさないとね」


「ふふん! やっと殺る気スイッチが入ったのね!』


 殺る気スイッチが入ったかどうかは分からないけれど。

 てか、やる気スイッチでは無くて殺る気スイッチって危ないスイッチよね?


「そうだ、この島の現在地が分かるかも知れない方法を思いついたの」


「どんな方法?」


「まずは朝ご飯を食べてから! ニーニャん早く持ってきて!」


「はいはい、もう少し待ってくださいね」


 ユーナそういうときは手伝うって言うのが普通なのよ。

 

「ニーニャ手伝うわ」


「ダリアさんはお皿に出来上がったのを盛り付けてくれませんか?」


「こんなに? 今朝も豪盛ね」


「ふふ、この際ですから古くなりそうな食料は早めに使い切ってしまおうと思いまして」


 これだけの食材をニーニャが使う空間に入っていると考えるとかなり便利だ。

 空間魔法を取得するにはステ振りをしっかりとした道順で振り分けていかないと解放されないのが面倒なのよね。


「異空間の中は時間が停止しているのですが、それでも生鮮食品は早く使いたいですからね」


 冷蔵庫以上の利便性!?

 ますます使えるようになりたい。


「へぇ、やっぱり便利よね。私も覚えられる?」


「ユーナさんも学んでいますが大変ですよ」


 解放条件がかなり複雑なのは知っているがそれだけでは使えるようにはならない。

 でもユーナと一緒なら頑張れそうだ。


「うわぁ、美味しそう」


「つまみ食いしちゃだめよ」


「ふふん、大丈夫よ! 女神の私は何をしても許されるんだから!」


 女神と言うだけで免罪されるなら誰だってしているわよ。

 説得してユーナと一緒に朝食の盛り付けをしているときだった。


 バババババ


「何の音かしら?」


「ヘリコプター?」

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