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俺、神様になります  作者: 昼神誠
ゴッドスレイヤー
353/592

この消失はどこかおかしい9

 ババババババ


 窓から外を見ると最新型のヘリコプターがこちらに向かって飛んでくる。

 表面が鏡のような装甲で覆われている。

 あれも闇化対策なのかな?


「くっ、また鉄の鳥か! あのタイプは厄介だ! 総員、絶対に見つかるなよ!」


「あのタイプ? レベッカ、妙にキラキラしているヘリを知っているの?」


「ええ、欧州連合の機体です。鉄の鳥には人が乗っているのです。そして、島の上空で停止すると軍人が降ってくるのですよ」


 それは見れば分かるけれど私が知りたいのはあのド派手な装甲なのよね。


「あんなに輝いているのは何か理由があるようにしか思えないのだけれど?」


「ああ、あれですか? こちらの攻撃をすべて跳ね返してしまうのです。だから鉄の鳥の体内にいる間は闇送りをすることさえ出来ない。我々が苦戦している理由の一つですよ」


 跳ね返すですって?

 あんな装甲で闇属性の攻撃魔法が防げるって言うの?

 いや、地球の科学力を甘く見てはいけないわ。

 見た目だけで判断するのは危険だ。


 ババババババ


 かなりの上空に高度を取っているのもこちらからの闇送りを警戒してのことだろう。

 それにしても島の上空からまだ離れているのにあの動いていないように見える。

 軍人を降下させる場所を探っているのかな?


「レベッカ殿、準備完了でごわす!」


「今度こそ全員闇送りしちゃるけぇ!」


「ヤン・イゴル、期待していますよ」


 筋骨隆々の人がヤン、細身の引き締まった人がイゴルか。

 この2人の詳細な情報を得るために闇の世界に意識を向ける。

 闇送り前はこの島の中で2つの民族が争い合っていたのか。

 それぞれの代表がこの2人。

 かなりの犬猿の仲だったらしい。

 レベッカの闇送りによって一つになり今では最高のパートナーになっているのね。

 嫌悪していた相手と一つになることで大切な存在になれるのも闇の世界の素晴らしいところなのよ。

 嫌いという感情は必要ないの。

 そうだ、その感情が争いの種になる。

 だから闇の住人は親切心や愛情だけで闇送りをしているのに敵対してくるなんて失礼な相手だわ。

 

「おおっ、ダリア様! やっとあっしらのことを理解してくれたのでごわすね!」


「むぉぉ、感謝じゃけん!」


 闇の世界からダークドールで顕現している住人は約200人ほどだ。

 向こうはヘリの数からして乗っている軍人は同じくらいだろう。

 でも念には念を入れて兵隊を増員しておくべきね。


「ダークゴーレム」


 ズズッ……


「リア、増援を呼んでくれるのですか? ありがたいです!」


「なんてお優しい御方だ……ダリア様感動いたすでごわす!」


 私の一挙一動に喜んでくれるのは悪い気がしないけれど少し鬱陶しいとも感じる。

 この世界の科学力を甘く見ていないだけだ。

 人を無慈悲に殺戮する兵器を作ることに関しては向こうの世界で暗躍している勇者軍以上に力を発揮できてしまう。

 同じ種族同士が争い合うなんて地球人の愚行には幼い頃から嫌気が差していた。

 欧州連合もどれだけの国が参加しているのか知らないけれど、みんな闇送りをすればそんなことがどれだけの下らないことだったか理解できるだろう。


 ピッ

 

 ヘリからレーザーサイトで丘の下にある集落に向ける。

 

「何をしゆーと?」


 レーザーサイトなんて照準を狙っているに決まっているでしょ!?


「みんな注意して!」


 ヒュゥゥゥ


 風を切るようなこの音?

 まさかミサイル!?

 ヘリが島から一定の距離を取って停止していたのはミサイル攻撃をするためか!?


「あんなもの見たことがな……」


 ドッゴォォォン!


「「ぐわぁぁぁ!」」


「「ぎゃぁぁぁぁ!」」


 ジュッ


 着弾地点から凄まじい閃光がほとばしる。

 集落に直撃した瞬間に隠れていた村人たちが蒸発してしまった。

 闇の世界と繋がっている黒い糸のようなものも強烈な閃光で千切れてしまう。

 そんな……本当に闇の住人を殺したの?

 闇の世界に意識を向けると村人たちの残痕も消滅していた。

 生も死も存在しない闇の住人をこの世から消し去った?

 私の世界を犯したことは絶対に許せない!


「あいつらぁぁぁ!」


「大丈夫ですか? リア!」


「なんちゅう威力じゃけぇ」


「だが、あんな場所に撃って何をしたいでごわすか?」


「外れたのでしょうか? 無人の場所で助かりましたね」


「無人の場所ですって? あそこには村人たちが居たでしょ?」


「村人? ダリア様この島に居るのは初めからわてら4人だけじゃけ」


 何を言っている?

 村人が消失したのを見ていないとでも言うの?

 ゴーレムも同じ場所に顕現させたのが失敗した。

 まさかダークゴーレムでさえも一撃で消されてしまうなんて思いもしなかった。

 

「リア。鉄の鳥が動き出しました。奴らが降りてきます」


 バババババ

 

 あのミサイルも凄まじい閃光だけだった。

 落下地点周辺の民家はなんとも無い。

 本当に闇の住人だけを殺す兵器を完成させていたんだ?

 魔法というものが存在しない世界で対魔法兵器を作れる?

 やはり地球の人間たちを甘く見てはいけない。


 ババババッ……


「ゴ―! ゴゴゴ―!」


 ミサイルの落下地点に欧州連合の兵士が降下してくる。

 服装もヘリと似たような鏡面状のもので全身を覆っている。

 ミサイルの閃光がまだ収まらない。

 鏡面状の装甲で乱反射して軍人たちが非常に見辛い。


「くっ、あいつら……また消えたでごわす」


「危険ですね。リア、急いでここから離れましょう」


 消えたってまたおかしなことを言っている?

 レベッカやヤン・イゴルは集落を探索している兵士が見えていない?


「レベッカ、あの集落に居る軍人たちが見えていないの?」


「上空で鉄の鳥が停止しているのは見えますが……リア、まさか相手が見えているのですか?」


「おお、さすがダリア様じゃけん!」


「だが、我々が目視できていないと闇送りをダリア様だけに任せることになるでごわすよ」


 ダークドールで顕現していると強烈な光に包まれている相手も見えないわけか?

 私だって目を細めてでないとかなり見辛いし鏡面状の装備が厄介ね。

 輝度を最大限に高めた兵器なんて科学力をもってしか作り出せない。

 対魔法というより対闇属性の兵器を作り出したわけだ。

 相手が見えていない状態で3人に従って外に出るのは危険よね?

 リアルな身体があるのは私だけだし軍人なら実弾だって持っているに決まっている。

 こうなると島を捨てて跳んで逃げたほうが安全だ。


「レベッカと2人も闇の世界に戻って。この島を捨てるわ」


「捨てるってどこかに当てはあるのですか?」


「日本は極東連合の中心でしょ? それなら……」


「いけません! 日本はすでに欧州連合によって占領されています。それどころか周辺諸国もすべて欧州連合の手中に入っていますよ!」


 日本がすでになくなっている?

 それどころか隣国までも欧州の手に落ちた?


「だったら極東連合ってどこにあるのよ?」


「極東連合は今やこの島のみでごわす。メンバーも今や我々4人と闇の住人だけでごわす」


 ダークドールで顕現している3人を除けば私だけか?

 でも完全な劣勢では無い。

 闇の住人をダークゴーレムで呼び出せば良いだけだ。

 でも対闇属性兵器を前に無駄死にさせるのだけはなんとしても避けたい。

 ……実家のあるコロニーに跳ぶしか無いか。


「当てはある。とにかく戻って」


「了解したじゃけ」


「リアがそう言うなら……」


 ドプン


 よし自宅をイメージして跳ぶだけだ。


 ヒュ……


「あれ?」


 もう一度能力を発動してみる。


 ヒュ……


「跳べない……どうして?」


『リア、どうかなさりましたか?』


「能力が使えないの。でもどうして……」


 ガサッガサガサ


 窓の外から見える草木が揺れている。


『野生の動物でしょうか?』


「欧州連合かも知れないわ」


 まずいな。

 3人を顕現しても消滅させられる可能性の方が高い。

 私だけで逃げるしか無いか?

 裏口からそっと出て丘を降りる。


『ダリア様、その先の海岸に船を隠しているでごわす』


「船があるのね? でもヘリで追いかけられるととても逃げ切れないわ」


「突入! ゴー! ゴー! ゴー!」


 パァン

 ピカァァァ!


 屋敷の中から激しい閃光が迸る。

 窓から漏れる光を見るとその威力は普通の人間でも火傷では済まないかもしれないほどであった。

 火では無いのに火傷するかもしれないと恐怖心が生まれるのは何故?

 どちらにしても完全武装した一個中隊を相手に一人で勝てる要素など見当たりもしない。

 待って……勝つ?

 どうして勝たなければいけないの?

 私はただみんなを幸せにするために動いていただけだ。


 ピタッ


 足を止め屋敷の方に振り返る。

 そうだ、闇送りをすればみんな分かってくれる。

 

『リア、なぜ足を止めるのですか!? 早く逃げなければ!』


 どうして逃げる必要があるの?

 これでは私たちが悪者みたいじゃない。

 私は悪いことなんてしていない。

 

「ターゲット発見!」


『声!? 欧州連合か? リア出して下さい! 殺されてしまいますよ!』


「あんな小娘でもシャドーだ! フラッシュスターグレネードを!」


 ポンッ


 軍人の一人が手榴弾を投げつける。

 闇送りをして幸せにしてあげるのにそっちは攻撃をしてくるの?

 話し合う余地も与えてくれないの?


 コンッコッコッコッ……


 私の足下で手榴弾が転がる。

 そして……。


 パァァァン!


「ぐわぁぁぁ!」

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