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俺、神様になります  作者: 昼神誠
神になった少年
321/592

この海はどこかおかしい1

 どこかに跳ばされている感覚がする。


 ヒュン


「うわっ!」


 ヒュン


 ユーナも転送されたのか?

 地面に落ちて怪我をしないようにキャッチする。


「あうう……うあ――」


 辺りを見回すと森の中?

 ここはどこだ?

 森の中だが、ヘルヘイムではないようだ。

 遠くに潮の音が聞こえる。

 そうだ、コスモスは?

 ユーナの手を掴み、中にいるコスモスに話しかける。


「コスモス、無事か?」


『あ、あら? ドレイク様……ここは?』


 闇に飲み込まれそうになったとき聞こえた声の主が助けてくれたのか?

 森から抜け出し、潮の音が聞こえる場所に行ってみる。


 ザザ――ン


 真っ白でこの世でないかのような砂浜だ。

 遠くにエメラルドグリーンの海が見える。

 地球にいた頃、おふくろと旅行に行ったときの沖縄を思い出すな。

 

 ザザ――ン


 まさか、本当に沖縄ではないよな?

 砂浜に手を添え、大地の記憶を読み取ってみる。

 地球なら魔法は使えないから何も聞こえないはずだ。


『ママ――!』


『うふふ、そんなに慌てないで。海は逃げないわよ』


『きゃっきゃ!』


 どこかで見たことのある記憶だ。

 この男の子って、俺が神薙龍識だったころの記憶?

 そうだ、俺はここに来たことがある。

 大人の女性はおふくろだ。

 おふくろがおんぶしているのは赤子の頃のユーナか?


『ここも当分は来れそうに無いわね……次は数千年先になるのかしら?』


 おふくろの手を掴みながら歩く幼い頃のリュージ。

 砂浜から海の中に入り、先に進む? 

 おいおい、そのままでは溺れ……えっ?

 海が2つに割れ、先に見えるのは小さな神殿?

 やはりそうだ。

 以前、おふくろに連れられここに来たことがある。

 

『リュージ、こっちへ……』


 どこからか、女性の声が聞こえる。

 誘っているのはおふくろの声だ。

 声が聞こえるのは海の中から?

 水中神殿に来なさいってか?


『ドレイク様、海に入ってどうするおつもりですか?』


「大丈夫だ、手を離すなよ」


 胸元まで海水に浸ったときに海が2つに割れ、水中神殿が姿を現す。


『こ……これって?』


「あうう――!」


 ユーナは何かを感じ取っているようだ。

 そのまま、歩き続け神殿の中に入る。


 ガコン


「あうぅ……まんま……まんま……」


 まんまって飯のことか?

 もう少し、我慢していてくれよ、ユーナ。

 神殿の奥に大きな水晶がある。

 中に人が入っている……って、おふくろ!?

 いや、髪の色がコバルトブルーだし、別人なのか?


『リュージ、久しぶりね。今はドレイクだったかしら?』


「え? やっぱ、おふくろ……なのか?』


『ごめんなさい。貴方には過酷な運命をもたらしてしまったわ』


「あうう――、まんま……」


『ふふっ、ユーナの欠片を集めてくれたのね。さすが、お兄ちゃんね』


「どういうことだよ? なんでこんなところにいるんだよ、おふくろ!?」


『貴方には平和な生活を地球で送って欲しくて何も伝えなかったの。でも、この世界はそれを許さなかった……本当にごめんなさい』


「世界が許さなかった? 教えてくれよ、おふくろ……俺の出生から今までのこと」


『ええ……その前に言っておくことがあるわ。水晶の中にいるのは私の純神の一部なの。貴方を連れて地球へ渡ったのは私の人間の部分。私も半神だからね』


「半神って、切り離せるものなのか?」


『神族は属性生命体よ。半神の神族は人間の身体から離れるくらいは造作もないことなの。そうそう、地球に渡った後、肉体が滅んでも純神の部分は何年も生き永らえているけどね。そうそう、欽治君は貴方の遠い子孫に当たるのよ』


 えっ、マジで!?

 欽治が俺の子孫だと!?

 ……ってことは、俺も地球に戻って結婚できているのか?

 ニーニャさんだよな?

 いや、絶対にニーニャさんだ!

 むしろ、ニーニャさんで無いと困る!


『リュージもルーシィちゃんから話を聞いて、この世界の闇のことは知っている前提で話すわね』


 神族が裏から支配し、勇者と魔王を戦わせているっていうアレか?


「俺が元々はこっちの世界の住人で、おふくろと一緒に地球へ渡ったことも知っている。でも、どうしてそんなことをしたんだ?」


『貴方を守るためよ。本当はユーナも連れて行きたかったのだけれど、ドリアドの町で買い物をし終わり、ジョンの家に帰る途中で神族たちの奇襲にあってね……貴方は私の背中で寝ていたから知らなくて当然なの』


 ルーシィさんの予想で話していたことと同じだったのか?


『そのときの天使の数は20億。もはや、別の世界へ逃げるしか手段が無かったわ』


「20億って……おふくろが神族に恨みを買ったのは聞いたけれど、何をしたんだよ? それに別の世界って地球だよな? どうして、おふくろが異世界間を渡れたんだよ?」


『私が行ったことはガンデリオン大陸の分断なの。神族がいては人族の発展は望めない。ずっと玩具にされる運命なんて、あまりにも救いが無いでしょ?』


「分断って?」


『神は人と同じ世界で暮らすものではない。ガンデリオン大陸だけこの世界から何もない虚無の空間に移そうとしたの。だけど、失敗しちゃった』


「ディーテたちに邪魔された?」


『まぁ、そうね……いろんな神族の反感を買ったわ』


「協力してくれる他の神族はいなかったのかよ?」


『もちろん、いたわよ。私一人ではとてもできないことだもの。闇龍神様と光龍神様、あのお二方がいないと別世界への移動なんてできない』


「えっ……その2人って、ずっと昔に滅ぼされたはずだよな?」


『ええ、遙か昔に6属性の龍神によって光と闇の龍神が狙われたわ。あのお二方は6龍神にとっては厄介者でしか無いからね』


「龍神同士での戦いがあった?」


『そう……6龍神によりお二方は大怪我を負われ、最後は土龍神によって石化されてしまったわ』


「それがこの御霊か? でも、滅んだはずの者がおふくろに協力って?」


 宝物殿から持ち出した、黒水晶ではない白水晶の球をおふくろに見せる。


『お二方の深層意識だけは滅びなかった。神族に反感を持っていた私とコンタクトを取ってきてね。当時はその御霊だけでも光魔法と闇魔法が使えたのよ。でも、まさか、リュージがヘルヘイムから持ち出してくれたなんてね。ディーテにやられたときには思いもしなかったわ』


 ディーテにやられたとき?


「おふくろ……いつから、この世界に跳ばされた俺のことを知っているんだ?」


『ジョンの家で泊めてもらえる辺りからかな?』


 異世界に到着して数時間後か?


『貴方をこの世界に引き戻したのはゼウス。神族の間で最強の存在よ。私もそれに気が付いたのは、貴方が夜になっても帰ってこなかったからなの。まさか、転移の魔法を完成させていたなんて思わなかったわ』


 ゼウスが俺をこの世界に?

 ディーテも雷神族だったし、つくづく雷神族とは因縁があるようだな。


『ディーテのときはごめんなさい。まだ、貴方の魔力が弱くて助け出せなかったの。まさか、チキン型にステ振りするなんて思いもしなかったから……』


 またそれか!

 極振りのほうが異常だとは思わんのか、この世界の住人共は!?


「今は俺が神になって力もあるから、助け出せたのか?」


『まさか、ヒメから神力を根こそぎ奪うなんてね。あの時はヒメも他の神族にいつ殺されないか不安でたまらなかったのが幸いしたのよ』


 本来なら冥界で魂魄が洗浄され、輪廻転生してしまう。

 ヒメによって玩具として作られた土人形としてでも、蘇生できたのは運が良かったのかもしれない。


『闇属性が相手では私の神力がほとんど持っていかれたわ。もう、手助けはできないから注意してね』


 神力が持っていかれた?

 まさか、おふくろの神力を代償に俺を助けてくれたのか?

 水晶の中にいるおふくろの身体が透けていっているように見える。


「まさか、この水晶の中に居るのって?」


『ええ、今の私は地球にいるの。その水晶は中の私が別の人格を持たないように、私を封じ込めているものなの』


「切り離した神の部分が別の意識を持つのか?」


『そこにいるユーナもそうよ。別の意識が覚醒する前に残りの欠片を拾ってあげて』


「残りの欠片って……どこにあるのか検討もつかない」


『アルス大陸の最北端にある霊峰セントホルン。そこに行けば残りのユーナの欠片があるわ』


「ユーナのこともずっと見守ってくれていたのか?」


『本当に見守るだけしかできなかったけれどね。そうそう、ダリアちゃんのおかげで一度だけコロニーで会うことができたのは嬉しかったわ』


 未来の世界でユーナとおふくろは会えたのか。

 ユーナは母親の顔を覚えていないだろうし良かったな。


「まんま……」


『ディーテもそのときに封印することができたわよ、ふふん』


 ディーテまで地球に来ていたのか!?

 地球に迷惑をかけんなよ。

 おそらく、ディーテの追撃から逃げるためにダリアが能力を使って跳んだのだろうな。

 それより、ユーナの欠片はアルス大陸にあるのか。

 勇者軍の本拠地がある場所だし急がないといけないな。


「そうだ、闇の天使になっていたユーナに会ったが、あいつは何者なんだ?」


『そうね……その話をしましょうか』

お読みいただき、ありがとうございます。


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