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俺、神様になります  作者: 昼神誠
神になった少年
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この魔王はどこかおかしい5

 アースメモリーで大地の記憶を見ながら、ユーナの声が聞こえる場所を探す。

 約10年前の記憶だから、俺がディーテに消されてそれほど経っていないときの出来事のようだ。

 ヘルヘイムへ来た目的は俺と欽治を生き返らせるためだったのか。

 死んだ者が生き返るなんて、ご都合展開など無いこの世界でも、希望を持って神の国へやって来たんだ。

 そのことに対しては敬意を払うべきだよな。

 だが、そうか……くくく、ユーナのやつめ。

 俺が死んで、そんなに悲しかったのか。

 妹として可愛いところがあるじゃないか。

 だが、ユーナのことよりもっと重大なことを知ってしまった。

 ニーニャさんの存在だ。

 まさか、ニーニャさんまでユーナの戯言に協力してくれているとは予想外だったな。

 相手の心の内まではさすがに読めないから、会話内容から判断するしか無いのだが、ルーシィさんがディーテに殺されたようだ。

 俺のためではないのが残念だが、家族のために頑張るなんてニーニャさんはやっぱり優しくて慈愛に満ちた女性だ。

 んほぉ、早く逢いてぇ。


「ドレイク様、あんな場所に小屋が」


 ヒメが建てたものらしい。

 10年も経っているため、魔力がかなり抜けて今にも崩れそうなボロ屋になっている。

 ヒメとユーナ・ダリア・ニーニャにナデシコの姿をした土人形が小屋の中に入っていく。

 ナデシコが偽物と言うことにユーナたち3人は気付いていないようだな。

 この後の展開は何となく読めてくるな。


 ブツン


「あれ? 映像が見えなくなったぞ」


「どういうことなのでしょう?」


 大地の記憶が途切れた。

 ヒメの神力が大地の記憶に干渉しているのか?

 分かったことと言えば、ヒメが小屋の中で悪巧みを決行するようだ。

 ここから先はボロ屋の中に入らないと見れないか?

 入り口の引き戸は半開きになっている。

 中に入るために引き戸を開放させようとゆっくりと引いてみる。


 ガガッ……ボロボロッ


 少し動かすだけでボロ屋そのものが崩れ去ってしまいそうだ。

 半開きの状態で無理に開かず、身体を横にして入ってみるか?

 だが、狭すぎるな。


「ドレイク様、こんなホコリまみれの中に入るのですか?」


「アースメモリーで見たいものがあるんだ。少し離れていろ、コスモス」


 ヒメの神力で建てた小屋ならば俺の神力を注げば少しは元通りになり、崩れることはなくなるだろう。

 小屋の外壁の亀裂が消え綺麗な状態に戻る。


 ガラッ


 引き戸を開けるとホコリが舞い散る。

 10年以上も管理されていないのだ。当然といえば当然か。


「ごほっごほっ……」


「コスモス、大丈夫か?」


「ドレイク様、こんな汚れた場所に入るなんて…少しお待ちいただければ、私が綺麗に掃除をしてきます」


「いや、別に構わないよ。俺のためにコスモスが汚れる必要はない」


「ドレイク様――!」


 だから、いちいち抱きつくな。

 余計にホコリが舞ってしまうだろう!

 うん?

 この足跡は何だ?

 一つだけ若干だが新しい足跡がある。

 ま、大地の記憶を読めば分かるし、見てみるとしよう。


「深淵泳ぐ大地の従者よ、生命の記憶を我に知らせ給え……アースメモリー」


 ヒメの記憶はより鮮明な大地の記憶となっており追跡しやすい。

 10年前にここで一休みをしたのか。

 夜中にナデシコの姿をした土人形が別室から動き出した。

 忍び込んだのはニーニャさんの寝ている部屋か。


『ナデシコさん? こんな夜中に……いいえ、貴女はナデシコさんでは無い!?』


『……ニーニャ……貴女に天罰を下す』


『くっ! 油断していた!』


 パキパキパキ……


 なっ!?

 ニーニャさんが偽ナデシコから攻撃を防ごうと起き上がったときには、足元から石化がゆっくりと全身へと進行していた。

 天罰って個人を特定して使えるのか?

 部屋から出ようとニーニャさんが動くが思うように動けない。

 全身への石化の進行が遅いのは、身体の魔力抵抗力が高いためだ。

 当然だが、臓器が石化していく進行も遅い。

 肺や心臓が徐々に石化していく状態は、呼吸が思うようにできない地獄の苦しみとなる。

 ニーニャさんのこんなもがき苦しむ姿、まともに見ていられない。


『あああ……うっ、く、くぅ……お母……さ……』


『神への謀反、その苦しみで罪深さを悔やみ死んで行きなさい』

 

 身体の一部でも石化が始まれば、周囲の細胞が同じように石に変わり全身に広がっていく。

 

 パキン


『ふふふ……これで一匹目』


「ニーニャさん!」


「ドレイク様!?」


 急いでニーニャさんが石にされた部屋に行ってみる。

 石像が無い……どういうことだ?

 誰かが運んだのか?

 記憶を探れば原因が分かるはずだ。

 10年前……まだ、石像はここにある。

 9年前……8年前……7年前……ずっとここに放置されている。

 俺の大切な想い人であるニーニャさんをよくも!

 こんな酷い目に遭わせてやがって!

 ヒメ……ぶっころ……あ、そういえば俺が倒したんだっけ?

 自覚がないから忘れるところだった。

 しかし、ニーニャさんがこんな酷い目に遭わされたのに黒い声が聞こえず、破壊衝動が湧き上がってこない。

 激しい怒りや悲しみさえも起こらないのは何故だ?

 俺のニーニャさんを想う気持ちが冷めている?

 10年も会っていなければ、薄くなっていくのは普通なのか?

 頭の中で思い出だけが美化されて、まだ好きだと誤認しているだけとか?


「あれ……石像が消えた?」


 5年前のある日を境にニーニャさんの石像が消えて無くなっている。

 大地の記憶を何度も再生して見るが石像が無くなる前後一日分ほど暗闇となり、何が起こっているのか読み取れない。

 大地が記憶できていないのか?

 いや、それならぷつりと途切れているはずだ。


「ドレイク様、この辺りに石片が落ちています」


 コスモスが小さな石の粒を俺に手渡す。

 石片の記憶を読み取れるかな?

 暗い……ただ、ひたすら何も見えない暗闇の中で時が過ぎ去っていく。

 これはニーニャさんの石片だ。

 ただの石なら大地の記憶と同じように周辺の様子を記憶している。

 さらに過去を再生するとニーニャさんの石化する瞬間が伝わってくる。


「あぐっ!」


「ドレイク様!?」


 激しい痛みと苦しみが伝わって、思わず石片を落としてしまう。

 ……石化って、こんなに恐ろしいものだったのか。

 生命力が強いが為にこんな苦痛をニーニャさんは……。


「ううっ……ニーニャさん、ごめん」


 再び石片を手に取り記憶を再生する。

 今から5年前……ちょうど大地の記憶が読み取れなかった日だ。


『ダークブレイク』


 バコン


 何者かがニーニャさんの石像を壊した?

 この石片で読み取れる記憶はここまでのようだ。


「石像を壊した誰かが、大きな破片だけを持ち去ったのか?」


「ドレイク様?」


「ああ、すまん。独り言だ……」


 石像を運ぼうとしたが重いため、一度壊して持ち去ったのか?

 ダークブレイクってなんだ?

 聞いたことのない魔法名だ。

 

「なぁ、コスモス……ダークブレイクって知っているか?」


「失われた魔術の一つである闇属性攻撃魔法だったかと……」


 闇属性の攻撃魔法だと?

 だったら、このボロ屋に入った何者かはタナトス?

 5年も前に復活していたのか?

 だが、どうしてニーニャさんの石像を?

 ここで考えていても仕方がない。

 再び床に手を当て、次の記憶を読み取る。


「ドレイク様、神力の使い過ぎです。一度、休まれたほうがよろしいかと……」


「神力が無くなったら、魔力を使うさ。心配してくれてありがとな」


 ユーナもダリアも動揺を隠せていないようだ。

 敵が近くにいたのに気が付かないのはヒメが狡猾だったからだろう。

 ダリアは一度、ユーナの家に戻ったのか?

 こんなときに単独行動をするとか、あいつは危機感が足りないな。


『ユーナさん、森のさらに奥からリュージさんの魂魄を感じます』


『ほんと!? 早く連れてって!』


 馬鹿野郎が!

 罠だってのに気付けよ。

 ユーナはチョロすぎるのが欠点なんだよなぁ。

 ヒメとユーナが小屋を出て森の中に入っていく。


「ボロ屋内での記憶はここまでか。コスモス、森の奥へ行くぞ」


「はい」


 俺とコスモスは記憶を辿りながら、近くの森の中に入っていく。

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