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俺、神様になります  作者: 昼神誠
混沌の世界へようこそ
30/592

このヲタクはどこかおかしい

 病人の俺を放置して遊びに行くとは。

 あれでも自称女神か? 

 まぁ、なんとなくわかっていたんだけどな。

 それはそうと身体が熱のせいで怠いし休めそうなところを探さないと。

 少し休むにしても、あのパリピの巣窟だけは勘弁だし。

 外に出て周囲を見回してみると、公園がある。

 あそこなら他の人の迷惑にもかかりそうにないし、ベンチで寝ても良いかな?

 天気は良くて暖かいし、風邪が悪化するってことは無さそうだ。

 ユーナたちでも公園くらい見つけられるだろ。


 公園に行き、先ほど貰った薬を公園の水飲み場で飲んでベンチに横になる。

 薬の効果だろうか? 

 すぐに眠くなって、そのまま眠ってしまった。

 ………………。


『ージ……目覚めるには……が……うね。間に合わ……?』


「「うぉぉぉ!」」


 ……うるさい。

 人がせっかく心地良く寝ているのに。

 みんなの憩いの場である公園で騒ぐんじゃねえよ。


「「うあああ!」」


 悲鳴じゃないよな。

 歓声だ。

 起き上がると頭の下に水の塊が敷いてある。

 水枕では無い。

 水枕のようになっているが水そのものだ。

 魔法か?

 なんか変な夢を見たな。

 女性の声で俺に何かを語りかけている夢。

 姿は見えず、ただ声がしただけだ。

 目覚める?

 目覚めるって、単に寝ていて起きるという意味では無いような気がする。

 これは俺の妄想だが俺にも隠された力があって、目覚めたら俺TUEEEできたりする?

 そんな力があるなら元の世界に帰るより満足な一生が送れそうだ。

 先日、ちょっとした野望も思いつきはしたが自信がなぁ。

 どっちとも俺の妄想に過ぎないか。

 目覚める……あとは魔王のことを指している?

 魔界が活性化しつつあるっていうのは以前聞いたが、そのことか?

 そう言えば間に合わないという言葉も朧気ながら覚えている。

 間に合わない……何のことだ?

 これはいくら考えてもわからん。


「「ダリアちゃ――ん!!」」

「みんな――! いきなりだけど、ゲリラライブやっちゃうよ――!」

「「うぉぉぉ!」」


 さっきからうるさいのは有名人がいたからか。

 アイドル? 

 この世界でもそんな職業あるんだな。

 歌手だったらあってもおかしくないか。


「「L!」」

「「O!」」

「「V!」」

「「E!」」

「「ダリア――!」」


 曲調はポップだよな。

 元の世界でもよく聞く感じの曲調だ。

 それにしても取り巻きの人たちのヲタ芸が凄まじいな。

 

「さすがはダリアちゃんでござるな」


 ん? 

 小太りで全身ミリタリーファッションの男性が近付いてくる。

 こう言っちゃ悪いが、いかにもヲタクって感じだ。

 こういうタイプの人も苦手なんだよな。

 俺、アイドルヲタクじゃなくてアニメヲタクなんだよ。

 

「知っているでござるか? 今の曲はダリア嬢がこの町の近くの湖畔で書いた歌詞なんでござるよ」


 ほら出た、ヲタクのアイドル自慢。

 相手の些細なことを知っているかで自分のアイドル愛を自慢する厄介なタイプだ。


「い、いや。俺、この町に来たの今朝だったから」

「なんと! ダリア嬢を知らないということでござるな! 仕方ないでござる。吾輩がダリア嬢の全てを教えてあげるでござるよ!」


 知らないことが逆にこいつの自慢話を聞くことになってしまった。

 頼んでもいないのにすでに誕生日から名前の由来まで一方通行で話しだす始末。

 後で確認テストとか言い出すし。

 勘弁してくれ。


「そ、それより! ダリアの歌に合わせてヲタ芸はしないんですか?」

「良いことを聞いてくれたでござる!」


 いや、単に話を切ってここから去りたいだけなんだが。

 

「吾輩は目覚めたのでござるよ!」

 

 目覚める!?

 こいつもあの夢を知っている?

 すでにミリタリーファッションをしている時点で転移者というのはわかる。

 さっきの夢で見たあの目覚めるということを知っているのか?

 余り関わりたくない奴だが、目覚めるという内容だけは聞いてみたいな。


「何に目覚めたのですか?」

「ふっふっふ。吾輩はダリア嬢の全曲を常時、聞いているでござるよ。そのお陰でダリア嬢の曲に合わせて脳内でダンスを行い、同時にダリア嬢の素晴らしさを布教することができるようになったでござる」


 ……ふ――ん、そうなの。

 ちゅごいでちゅね――。

 

「言い忘れていたでござる。吾輩はダリア嬢のすべてを布教する選ばれし宣教師! 美甘愛輝でござる」


 みかん? 

 美味しそうな苗字だな。

 まさか、こんな所で転移者に会えるとは思ってもいなかった。

 まぁ、結構な人数が転移させられているみたいだから出会う確率も低くは無いのだろうけど。

 それより、欽治といい、杏樹といい、こいつといい出会う転移者はどうしてこの世界をエンジョイしている奴ばっかりなんだよ。

 雪ちゃんは幼いから許すとして、みんな元の世界に未練はないのか?


「ほう、其方も転移者でござったか。リュージ殿」


 こいつ!

 勝手にアナライズで俺を見やがったな。

 この世界には名前という大切な個人情報を守る法律とか無いのかよ。

 仕返しに俺も見てやろう。


・氏名 美甘 愛輝 (みかん あいき)

・種族 ヒューマン

・レベル 100

・年齢 19

・職業 僧侶

・HP 20

・MP 4970

・筋力 1

・体力 1

・知力 1

・精神力 496

・素早さ 1


 あちゃ――、そうきたか。

 極振りは流行ってるの? 

 ねぇ、誰か教えて!

 レベル100ってこいつもバトルで活躍……しそうにないよなぁ。

 いや、見た目で判断は駄目だ。

 

「しかし、リュージ殿はどうしてこの町に来たでござるか?」

「病院に用事があって」

「ほう、病院でござるか。あの病院の人たちはどなたも良い人でござったろう?」


 どこがだよ!

 パリピで最悪な対応ばっかりじゃねぇか!


「あそこで働いている人たちはダリア嬢のライブで最高に盛り上げてくれるでござる」


 あっ、そうですか――。

 ライブで盛り上げるとか、まぁパリピの得意分野だよな。

 

「みんな――! 最高だよ! 愛してる!」

「「うぉぉぉ!」」

「ダリア嬢ぉぉぉぉ! 其方も最高でござるぅぅ!」


 あかん!

 アイドルは俺にはついて行けへんねん。


「みんなのために新曲、歌っちゃおうかなぁ!?」

「し、新……曲……ですと――!」

「「うぉぉぉ!」」


 お、丁度いい。

 今の内にこの場から去るとしよう。


「また、あのビッチが男共をたぶらかしてるよ」

「ほんと、ウザいよね――」

「フッ、君たちほど可愛くはないから安心しな」


 おっと、アンチか?

 どこにでもいるもんだな。


「ふむ、其方たち。今、ダリア嬢のことを見下したようなことを言わなかったでござるか?」

「うわ、何? こいつ?」

「あのビッチに魅了された哀れな子豚ちゃんじゃないの――?」

「まぁまぁ、俺のハニーたちに比べるとか――な――り、劣るだけってことさ。あははは!」


 や、やめろ!

 ヲタクに喧嘩売ると女であろうと容赦ないぞ!


「其方たち、またもや、ダリア嬢を見下したでござるな?」


 ポケットに手を入れて、何か出す気だ。

 ま、まさか元の世界から持ってきた銃器?

 やめろ!

 相手は普通の市民だぞ!

 若干、パリピってるが……。


「うわ、急に恰好つけだしたよ」

「マジキモ――!」

「おっと? やろうってのか? 子豚ちゃん。いや、萌豚ちゃんか? 少し離れときな、ハニーたち」

「マイク、そんなキモヲタやっちゃって!」


 愛輝がポケットから何かを取り出す。

 や、やはり銃か?


 カチャ


 ……ふぁっ、ペンライト!?


「あまり戦事は好きではないのでござるが……」

「おっとぉ、ビビっちゃってんの! こっちからいくぜ!」


 チャラ男から右ストレート。

 ヲタクは避けようともしない。


「仕方ないでござるか……脳内MUSIC START!」


 ドン!

 ドゴッ!

 ドドドドド!


「ほでぶっ! ぶぶぶぶぶ!」


 チャラ男が天高く打ち上げられる。

 地に落ちた瞬間も目に見えない打撃を入れているのか?

 は、早い!

 チャラ男が懐に飛び込んだ瞬間、何をしたんだ?


「あやつ出来るな!」


 モブおじいさん出て来た――!

 モブおじいさんには見えているんだろうな、きっと。

 何かを極めた達人みたいな顔つきをしているし。


「初撃にヲタ芸の基本技の一つクラウドサンダーを入れるとは! その後の流れるようなヲタ芸。それを神速でやるとは……あやつ……かなりできる!」


 ……はい、ご説明ありがとうございました!

 つまり、ヲタ芸で攻撃していると。

 なんだよ、それ!


「きゃぁぁぁ! 大丈夫? マイク!」

「ちょっと! あんた、何する……のよ。えっ?」


 あのチャラ男、完全に伸びてるぞ。

 というか、二人のギャルがヲタクのほうを見て顔が赤くなっているが。


「ふぅ……本気で踊るとお腹が減るでござる」


 ヲタクの所に立っていたのは美……男子?

 誰だよ!?

 ミリタリーファッションっていうことは、さっきのヲタクか?


「きゃぁぁぁ! イケメン!」

「マイクより、ずっとカッコいいじゃん!」

「な……何でござるか! さっさとそこの男を連れて行くでござるよ!」


 凄い変わりようだな。

 ヲタクもこのギャルも。

 どっちがビッチなんだか……。

 イケメン見るとがっつくほうがビッチなんじゃないのか?


「ねぇ! レイン交換しようよ!」

「あ、ずるい! あたしも!」


 レインって何だよ。

 それより、この町には電波らしきものはやはりあるんだろうな。

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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