この力はどこかおかしい9
村人に話した内容は農作業だけに従事しなくて良いこと、他にもさまざまな職業があることを中心に話したのだが、さすがは時代背景が古代なだけはある。
貴族に重い税を取り立てられる毎日で、特技を活かせる機会などはもちろん無く、みんながその日の食い扶持をいかにして確保できるかといったギリギリの生活を送っていたようだ。
ルカたち魔王軍幹部、それは恨まれても仕方がないって。
はぁ、職業という概念自体が無い大陸とは……グランディール大陸って一度、勇者軍によって統治されたほうが手っ取り早く近代の文化を取り入れられるのでは無いのか?
なんてこともふと頭をよぎったが、それだけは絶対にしてはいけない。
あいつらはゴブリンやオークを滅ぼすつもりだから、この大陸を支配されたあとは、ゴブリンとオークを根絶やしにするために、虐殺の未来が来ることは想像に難くない。
「好きなことって……あっ、ゴブ蔵なんかは?」
「おお、そうだ」
「ドレイク様、ここにいるゴブ蔵は土器を作るのがとても上手なんスよ。ドレイク様の話って、ゴブ蔵は土器ばかり作っていれば良いってことなんスか?」
まぁ、同じものばかり作って技術の向上をしないのは駄目なんだがな。
どんな土器を作れるのか見せてもらうか。
「へぇ、ゴブ蔵の作った土器を見せてくれないか?」
「か……神様にお見せできるようた大したものじゃないでゲス」
「ゴブ蔵、ドレイク様の仰ることに逆らうつもりですの?」
「ひっ……」
おいおい、ルカ、そんな聞き方は良くないぞ。
「そうだな、ゴブ蔵。こんなのは作れるか?」
ボコッ
地面を操作し、土偶を作りゴブ蔵に見せる。
俺も歴史の教科書で見たことしか無いが、いつみても宇宙人っぽいよな。
「人形でゲスか? それなら……これを」
ゴブ蔵がポケットから土偶を取り出す。
「うっひょお! ドレイク様が作ったものより、人によく見えるッスね!」
「こらっ! ドレイク様を見下すとは何事ですの!」
な……ん……だとっ!?
これは土偶というより……もはやフィギュアじゃねぇか!?
しかも、アニメっぽい美少女の造形。
おいおい、ゴブ蔵……お前、天才だな?
俺が教科書で見たのを真似て作った土偶と比べたら天地の差だ。
待てよ?
ゴブ蔵に土人形を作らせ、そこに命を吹き込めば……この美少女フィギュアが等身大で動く。
こ、これは……アニヲタであれば誰もが望むことが実現できるんじゃねぇか!?
「凄いじゃないか! ゴブ蔵、お前には土人形作りを命じる」
土人形さえ用意してくれたら、俺が命を吹き込めばいいだけだからな。
兵士を増やすことにもなるし。
美少女兵士軍団……ぐへへ、これは最高じゃねぇか!
「……お、オイラは土器ばかり作っていればいいってことでゲスか?」
「そういうことだ。他にもゴブ蔵のように得意なことがあれば言ってくれ」
「羨ましいッス! 自分も何か任せて欲しいッス!」
「ドレイク様、私は洗濯がとても上手です」
「あたいは裁縫が得意です!」
「俺っちは家造りが!」
思ったより得意なことを持っている村人もいたようだ。
これもゴブ作がゴブ蔵という例を示してくれたからだろう。
しかし、3分の2は得意なことがないようで挙手をしていない。
それなら、3分の1の特技持ちの下で働いてもらい、手に職を就かせるのも良いだろう。
だが、肝心の鍛冶が得意な者はいないみたいだ。
青銅の剣や盾などは存在するし、鍛冶の前身となるなるものは存在しているはず。
要は溶かして固めるものが青銅か鉄かの違いだけなのかと思っているのだが……まさか、違うのか?
歴史の授業でも、そこまで詳しく教えられないから分からない。
特に興味があるわけでも無かったし。
やっぱ、知識って大切なんだな……こういうときに身に沁みて感じる。
「誰か、青銅器の作り方に詳しい者はいないのか?」
「「………………」」
いない?
では、ゴブリン兵たちが持っている青銅の剣や矛ってどこで作られたんだ?
「ドレイク様、武具の作成は魔王軍の第5柱がすべて取り仕切っておりますわ」
「第5柱? 名前は?」
「嫉妬の悪魔、メデューサですわ」
人を石に変える悪魔だよな?
そういえば、青銅の手を持っているんだよな?
「メデューサ自身が作っているのか?」
「どうなのでしょう? メデューサは相性の悪い水属性を操る私とは距離を置いておりましたので、よく知らないんですの」
水属性と相性が悪い?
まさか、土属性の悪魔なのか?
だったら、俺とは相性が良いはずだ。
メデューサの配下に鍛冶師が大勢いるのなら、一人くらい技術者として雇わせてもらえないかな?
だが、ルカを避けているのならどうやって使者を送るか……。
いや、使者を送っても聞き入れてもらえるとは限らない。
俺が直接、赴くのが手っ取り早そうだ。
他の魔王軍幹部とも、いずれは顔を合わせるつもりだったしな。
「ルカ、第5柱の領地ってどこか教えてくれるか?」
「はいっ。それでは、ドレイク様、私の部屋へ」
「ああ、そうだな。地図を見せてもらわないとおおよその位置がわからないし」
屋敷前に集めた村人で特技持ちをリーダーとし、それぞれに仕事を与えた。
まずはうまくいくか、試しにやってもらわないといけないからな。
「ドレイク様、わてらは農作業が得意なのですが……やはり、別の仕事に就かないといかんのですか?」
「農作業を続けるつもりか?」
「は……ドレイク様のご許可があれば是非、そうしたいと思っとります」
農業を続けてくれる人々も重要だし、あとで大きい畑を作ってやるか。
「ありがとう、そういう村人も必要なんだ。逆にこちらからお願いしてもいいか?」
「ドレイク様……ありがとうごぜぇます!」
村人たちが早速、動き始める。
うんうん、やっぱり仕事って好きなことであるのは大事だよな。
嫌なものを続けるなんて苦痛でしか無いし。
今から5年ほどでここの領地の時代背景が古代から中世にまで、技術や制度が成長し、整ってくれることに期待しよう。
他の領土はまだ魔王軍の柱たちが平民から搾取している状態が続いているだろうし、魔界では先進国となるルサールカの領土を広げていくのも有りか?
いや、外国と戦争中に内戦は良くないよな。
俺の説得で他の幹部たちも同じように、領民を大切にするとも限らない。
先にメデューサのところへ行って領民の様子を見てから考えてみるとしよう。
「ドレイク様――! 水脈の調査終わりました――!」
ガバッ
どわっ……おっぱ……ごほん!
コスモスが屋敷に入った途端、抱きついてきた。
水脈の調査か……そういえば、任せていたことをすっかり忘れていた。
報告はあとで聞いてもいいだろう。
「今からルカの部屋に行くんだよ。どいてくれ」
「そ……そんなっ! ドレイク様、まさか……」
「お前の考えているようなことではないから安心しろ。あとで出かけるから、俺の部屋で準備しておいてくれ」
「部屋で準備……はいっ、承知いたしました!」
あれ……なんか、顔を赤らめて去って行ったが、別に良いか?
気にするだけ無駄だろう。
ルカの部屋に行き、地図を見ながらそれぞれの幹部の領地を教えてもらう。
「ここが私の領地ですわ。その北東部がローウェルグリン城、強欲の悪魔であるサキュバスの領地でしたの」
「ああ、その辺りはおおよそ理解できている。メデューサの領地は?」
「私の領地の西には第4柱である憤怒の悪魔の領地が広がっておりますわ。その南西部が嫉妬の悪魔メデューサの領地ですのよ」
ここの領土よりかなり広い土地を持っているのか。
最大の領土は勿論、魔王がいる最南端のデビリアなのだが、その次くらい広大な面積を持っているようだ。
場所さえ分かれば、俺のグラウンドムーヴですぐに行くことができる。
「よし、それじゃ行ってくる。すぐに戻ってくるつもりだが、ルカは領民とトラブルを起こすなよ?」
「はい、心得ておりますわ。ドレイク様、お気をつけて……」
すぐに部屋へ戻り、俺も準備をしよう。
コスモスには準備を済ませて待っておけと言っておいたが……。
ガチャ
「ドレイク様――! お待ちしておりました、早く私を抱いてください! きゅふふふ」
……そういう意味で待っておけって言ったわけじゃなぁぁぁい!





