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俺、神様になります  作者: 昼神誠
闇に堕ちた歌姫
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このゲームはどこかおかしい4

 状態異常の遅延は身体そのものの動きが遅くなるだけのようで、スキルのクールタイムには影響しないらしい。

 チュートリアルミッションのクリアまで時間は残り2分……スキルの消費スタミナも十分に残っている。

 注意すべきことはクールタイムだけだ。

 LVが2になったおかげでクールタイムが2秒から1秒に減少しているのは助かるけれど……その1秒が命取りにならないように注意しておく必要がある。

 村人はこの少女以外は全滅したのだろうか?

 村の中に入り込んでいる魔獣たちがあたしたちを狙ってくる。

 

 ガァァァ!


「オエ――! ヤツラヲニガスナ!」


「それじゃ、跳ぶよ。絶対に離さないでね」


「うん」


 物見やぐらからの狙撃をしてくる魔人がかなり厄介だ。

 村を囲むように設置されている物見やぐらは、魔軍の襲来を真っ先に知ることができる防衛手段の一つとして欠かせないのだが、今となってはそれが足かせとなってしまっている。

 魔人の弓の扱いも相当長けている。

 村の中は魔人が放った火矢によって炎が燃え広がり、火の海になりつつある。

 だとしたら、村の中はもうダメだ。

 まずは最も近い物見やぐらの屋根の上に跳ぶ。

 見えている範囲内なら、瞬間移動は簡単に発動できる。


 ヒュン


「アソコダ――!」


 ドッ!

 ドッ!


 物見やぐらにいる弓兵魔人があたしたちのところに狙いを定め、弓を放つ。

 でも、クールタイムはすでに過ぎている。

 

「次、跳ぶよ」


「う……うん」


 ヒュン


 次は村の外に見える大岩の上に跳ぶ。


 グガァァア!


 魔獣は数の多さが脅威だが、高い場所に跳べばすぐには襲ってこれない。


「お姉ちゃん、後ろから!」


 1秒程度なら魔軍があたしの跳んだ場所を探している間に過ぎてしまう。

 制限時間も残り1分……これならいける。

 次は村の反対側に見える木の上に跳ぶ。


 ヒュン

 バキッ!


 えっ……木が折れた?

 姿勢を崩し、木から落ちる。


「グフフ! キタ――!」


 魔人たちがこの木に当たりを付けていたとでも言うの?

 あたしたちの体重で木が折れるように幹の部分を細くしていたなんて……大量の魔獣の影に隠れて見えていなかった。


「お姉ちゃん!」


 ドンッ!

 グガァァァ!

 ドシュッ!


 地面に落とされ、魔獣の群れが襲いかかる。

 その中の一体の爪があたしの脇腹を引っ掻く。

 状態異常、封印!?

 これではスキルが使えない。


「ヤッチマエェェ!」


「お姉ちゃん!」


 ガァァァ!

 ガブッ!

 ドシャッ!


 少女に覆いかぶさり、魔獣の噛みつきから守る。

 残り20秒……あたしのHPが尽きるのが先か、それとも制限時間が来るのが先か……何種もの状態異常に陥る。

 でも、こうやって村の住人を一人でも守っている限り条件は達成している。

 残り10秒、あたしのHPゲージはデンジャーゾーンに突入する。

 HPの残りが120……ゲージが赤色になり点滅する。

 

『スキル、バイトアーマーを取得しました』


 バイトアーマー?

 噛み付きの攻撃を受け続けると一定の確率で取得することができるスキルのようだ。

 噛み付き攻撃により受けるダメージが減少する……そっか、こうやって取得するスキルもあるんだね。


「テッシュウダ――!」


 アォォォォン!


 制限時間になるとピタリと魔軍の攻撃が止まり、地平線の彼方に去っていく。


『チュートリアルミッション成功! 今までに覚えたことを駆使して、この世界を魔王の支配から開放してくれ』


 ん――、一方的にやられていただけなんだよなぁ。

 

『ミッションクリア報酬……1000サイバーチップ・スキルポイント70・スキル太刀熟練LV1・鷹の眼LV1』


 わおっ、お金も貰えるなんて嬉しいな。

 太刀熟練は……太刀が壊れにくくなるのと、装備できる太刀の種類が増えるのか。

 今、装備している太刀は野太刀だし、レベルが上がるごとによりレア度の高い太刀が装備できるようになるみたいだ。

 鷹の眼……実はこれがあたしの本領を発揮できる最も嬉しいスキルの一つだ。

 レベルが上がるごとにより遠距離の場所を見ることができるようになるスキル、これと瞬間移動の親和性は高い。

 はっきりと見えている場所なら、一瞬で移動ができる瞬間移動の距離が延びるためである。

 

『村に戻ろう』


 さて、ここからが本番なんだよね。

 ミッションをクリアした瞬間にHPは全回復しており、状態異常もすべて消えている。

 

「無事だった? さ、手を繋いで」


「うん」


 少女の手を取り、瞬間移動で村に戻る。

 村は焼け焦げており、見る影もなくなっている。

 村人の死体からアイテムを獲得するが、今回はどれも低品質の回復薬だった。

 

「う……うぇぇぇん!」


 少女が突然、泣き叫ぶ。

 NPCだけあって、プログラム通りに動いているのだと思うとちょっと萎える。

 

「村が……村がぁぁぁ! パパ――! ママ――! うわぁぁぁん!」


 えっと、こういう場合はどうしたら良いのかな?

 とりあえず、話を聞くのが良いんだよね?


「大丈夫?」


「ぐすっ……う、うん。あのね、お姉ちゃん……お願いがあるの」


 あっ……イベントなのね、これ!?


「お願いって?」


「ラストタウンに行きたいの」


 ラストタウン?

 この村はチュートリアル用に用意された村だったのか。

 そう言えばゲームの初期設定では、この世界はすでに魔王に支配されていて、人が生き残り暮らしている町は一つしか無いんだよね?

 ……となると、その町からゲームが本格的に始まるわけか。

 つまり、ラストタウンには絶対に行く必要があるわけだ。


「わかった。どこにあるの?」


「道案内は私がするね、付いて来て」


 少女の後を付いて行き、村の外へ出て荒野を進む。

 ついでだから道中にいる他のプレイヤーの死体からスキルをレンタルしておこうかな。

 プレイヤーの死体からスキルを探し回る。

 レンタルできるスキルは現時点では一つだけのようだから、魔軍にとって有利になるスキルを確保しておきたい。

 しかし、扱う武器種が違うと装備できるスキルの種類も限られてくるわけで……そのほとんどが防御系スキルや生活スキルに限られる。

 農業レベル27とか使わないでしょ。

 採石レベル56……むむむ、これも生産系か。

 ヒットブーストレベル93、命中率か……このプレイヤーは拳銃みたいだし、確かに必要かもね。

 でも、太刀のあたしにはあまり必要がないスキルだ。


「お姉ちゃん、こっち! こっち――!」


 少女との距離が離れすぎると、もしものときに対応できなくなる。

 でも、スキルも少しでも多く持っておきたいし……付かず離れずを繰り返し町に向かう。

 おっ、このプレイヤーは両手剣であたしでも都合の良いスキルを持っているかも知れない。

 騎乗戦闘レベル7、これはいらないかな。

 クリティカルブーストレベル74か……会心率が高くなれば大ダメージを与えることができる。

 魔獣程度なら今のあたしでも一撃で倒せるけれど、魔人はそうもいかなかった。

 これなら使えそうだ。

 翔慟賦剣の技の多くは一撃必殺を基本としている。

 それで確実に相手を仕留めるためには、会心率が高いほうが良いからね。

 クリティカルブーストをレンタルし、少女とともにラストタウンへ向かう。

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