この闇はどこかおかしい6
異能力トラベラー、私が生まれながらに持っている能力だ。
どうして、今まで自分の能力を忘れていたのだろう。
跳んだ先は湖畔に建つ一軒の家。
氷で作られているため、辺りはひんやりしている。
そう、ユーナの実家だ。
「あっ、ニーニャんのお母さんも仲間にしましょ」
「良いのですか? もしできるなら、お願いしたいですダリアさん」
……確か、ルーシィって……あら、どうなったんだっけ?
まぁ、良いや。
とにかく、先に家の中に入ろう。
中はさらに冷えていて気持ちがいい。
室内の温度は……マイナス10度?
そんなに冷えているの?
ちょうど、心地良いくらいの気温だと思うけれど。
「ダーリン、あっちの部屋にルーシィがいるわよ」
「寝室? 勝手に入っちゃ悪いんじゃない?」
「いいのよ、私の家なんだから」
そっか……そうよね。
ユーナの家だもんね。
部屋に入るとルーシィが氷の棺の中で安らかに眠っている。
寒くないのかしら?
それに棺の中に入っているってどういうこと?
ズキッ……
あうっ!
一瞬、妙な光景がフラッシュバックする。
ユーナの家が粉々になり、ニーニャが号泣しながらルーシィを抱きかかえている?
そうだ……ルーシィは神族によって殺されて……ここで肉体を保管していたんだ。
まだ、記憶を思い出せるような気がする……でも、何かが邪魔をして思い出せない。
「先に氷の棺から出してあげないとね。ダーリン、私の習得している魔法が全部使えるから解除の仕方わかるわよね」
「ダリアさん、お願いします」
「えっと……何をすればいいんだっけ?」
「んもう、忘れちゃったの? 氷の棺に手を当てて……」
パシャン
一瞬にして氷の棺が解け水になる。
そっか、私はユーナと一緒になったんだ。
だから、ユーナの魔法は全部わかるし使える。
でも、ルーシィはもう……。
生き返らせる方法なんてあったかしら?
「このままじゃ、大きくて取り込めないから小さくしないとね!」
「ルーシィを小さく? そんな魔法あったかな?」
「ほらほら、いいから。ルーシィに手を当てて……」
ユーナに言われるがままに、ルーシィの身体に手を当てる。
すごく冷たい。
やはり、ルーシィはもう亡くなっているのよね?
「ほら、詠唱を始めないと」
「え、ええ」
口が勝手に動く。
ユーナの魔法は、ほぼ全部といっていいほど見せてもらったけれど、口が唱える詠唱は初めて聞くものだ。
「……ダークブレイク」
全身から黒い物質が手のひらに集約していく。
集約した物質がルーシィの身体を包み込み、次の瞬間ルーシィはバラバラになった。
「えっ……私……何を?」
「ほらほら、ダーリン。ルーシィも仲間になりたがっているわよ」
「お母さん、やっと一緒になれますね」
「……そうだ……ニーニャの……お母さん……一緒に……お母さん……」
ガリッボキッ
モグモグモグ
自分が何をしているのかわからない。
でも、ルーシィが私の中で形作られていくのはわかる。
「ほらほら、その調子よ。ニーニャん、良かったわね」
「ああっ、お母さん!」
『これは……うぅむ……厄介なことになりそうじゃの』
………………あ……れ?
いつの間に私は眠ってしまったのだろう。
すでに外は夜になっている。
「やぁっと起きたわけぇ? だりっち、助けてくれてあんがと」
「わぁ、ルーシィ! なんか、すごく久しぶりな感じがするわね」
「お母さん……ああ、お母さん!」
ニーニャのあんな顔は初めて見る。
この人もやっぱり人の子なんだなって改めて思う。
「それじゃ、次こそ欽治を助けに行くわよ」
「でも、欽治くんってどこにいるのかしら?」
「あのスクリーンからは建物の中にいることしかわかりませんでしたね」
「わからないんじゃどうしようもないしぃ。わかったときでいいんじゃない?」
「お母さんの言う通りですね。それにダリアさんとユーナさんはお仕事もしないといけませんし」
「そうよ、私たちは大人気アイドルだもんね! ダーリン!」
そうだ、私はアイドル。
歌でみんなに幸せを届けるのが私の役目なんだ。
お金のため?
もちろん、それは結果論にすぎないけれど、働く以上は報酬って必要でしょ。
「ニーニャ、マネージャーとして、どこかで仕事をもらってきたの?」
「ええっと……北方の町スノーティアはどうでしょう。今は冬季でみんな家に籠もって退屈しているでしょうから、ダリアさんの歌で一つになれたら幸せですよね?」
「スノーティア? ごめん、行ったことのない場所は跳べない……って、あれ?」
初めて聞く町の名前なのに場所がわかる。
どうして?
「あっしが行ったことあるからでしょ? ほらほら、だりっちお仕事なら行かないといけないわけ」
「そうよ、ダーリン。ルーシィと一緒になれたからには、この世界のほとんどには行けるはずよ。スノーティア、楽しみだわ」
そ……そうね。
何かすごく違和感があるけれど跳べるのなら、それに越したことはない。
「それじゃ、スノーティアに向けて行くわよ。ニーニャ、メイク道具などは?」
「空間内に収納済みですよ。ぬかりはありません」
「さすがね、それじゃ」
ヒュン
『……喰った者のすべてを受け継ぐのか? これも心が壊れ、中の記憶がこぼれ落ちたためじゃろうな。どれほどの者を喰えば心が満たされるのか……今、我が話しかけると再度、壊れるかもしれぬか? このまま黙って見守るしかないじゃろうな……今はの……』
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