この潜入はどこかおかしい5
「そこかぁ!」
ザンッ
天井に太刀を突き刺し、俺の首に切っ先が少し触れたところで止まった。
天井が思ったより高くて良かった……じゃない!
こんな狭いところにいたらめった刺しにされるだけだ。
「欽治、先に進め!」
「で、でも裸……」
「後で何とかしてやるから今は逃げるんだ!」
渋々と欽治はダクトの奥に進む。
俺も何度も天井に向かって突き刺してくる太刀に神経を研ぎ澄ませながらも何とか当たらずに進むことができた。
「逃がすかぁ!」
黒衣の人、怖すぎなんですけど!
迷路のようなダクト内を無我夢中で逃げていたため今の場所を把握できていない。
だが、ある程度進んだところで黒衣の攻撃が止まったってことは見失ったのか?
「兄ちゃん、向こうに光が見えるよ」
やっと出られるか。
ダクトの蓋から顔を覗かせてみると黒衣が待ち伏せている。
ここはダメだ。
「欽治、別の所にするぞ」
「うん」
その後もダクトの蓋を見つけるごとに顔を覗かせるが黒衣が待ち伏せている。
何だよ、先回りしているのか?
いや……俺たちの場所は見失っているはずだ。
だったら、あの黒衣はさっきの奴とは別人?
顔がわからないから見分けがつかない。
「兄ちゃん、ここ脆くなっているよ」
押してみると確かにギシギシときしむ音が聞こえる。
蓋の所は待ち伏せされているとなると、今ここで天井を突き破り、下に降りるべきだろうか?
ダクトを通って三階に行けそうな感じもしなかったし……探せばどこかにありそうな気はするのだけれどな。
広すぎて一日ではとても見つかりそうにないだろう。
仕方が無い、ここで降りるとするか。
「欽治、ここで降りるぞ。破れるか?」
「うん、簡単だよ」
バキッ
欽治が先に降り、辺りの確認をする。
「兄ちゃん、誰もいないよ」
「オッケー、ありがとな」
「えへへ」
俺もダクトから降りるとどこかの部屋のようだ。
タンスなども置いているから誰かの部屋なんだろう。
ちょうど良い、ここで欽治の服を拝借する。
「兄ちゃん、この服可愛い!」
どう見ても女物だ。
却下!
ローウェルグリン城のメイドさんに女物ばかり着せられて、欽治も危ない方向に進んでいるが、お前もちゃんとした男なのだからな!
まぁ、確かにめちゃくちゃ似合っていて可愛いのだが……。
「兄ちゃん、他に服無いよ――」
仕方が無い。
ホットパンツと言うのだろうか?
かなり丈の短いデニムパンツだ。
あと、トップスはノースリーブのシャツか。
あとはキャミソール……これは却下だ。
「少し大きいけど似合う? 兄ちゃん?」
どこのギャルだよってツッコミたいが、まぁ良いだろう。
だが、このサイズの服があると言うことはこの要塞にも子どもはいるのか?
とにかく、部屋のカギを開け廊下を覗いてみる。
誰もいない。
コッコッコッ
いや、足音が聞こえる。
近くに誰かいる。
「兄ちゃん、どうしたの?」
「しっ! 静かに」
またメイドだ。
顔はやはりダリア……あれもさっきとは別人なんだろうか?
そう言えば、さっきのメイドは増援を呼びに行ったのに何も起こらないな?
……さっき、ダクトの蓋の所で待ち伏せていたのが増援の黒衣たちか?
それなら、メイドに見つからずに、なおかつダクトの蓋に近付かないようにすれば良いか?
かなり難易度が高いな。
黒衣の一人にでも見つかると一斉に押し寄せて来そうだし、メイドがかなり邪魔だ。
弱そうだしやってしまうか?
いや、さっきのメイドは急に消えた。
特殊な能力が備えられているのなら、逆に援軍を呼ばれてしまう恐れもある。
仕方が無い、ステルスをかけメイドに見つからないように先に進もう。
「欽治、行くぞ」
「うん」
ゆっくりと廊下に出る。
ステルスの性能を試すためにメイドに近付いてみるか気付かれない。
これ以上は危険だが、この距離で気付かれないなら何とかなりそうだ。
欽治の手をしっかりと握って、先に進む。





