この戦争はどこかおかしい9
マジでヤバい、マジでヤバい、マジでヤバい!
何としてでも取り止めさせないと、俺と欽治が最悪死ぬぞ!
でも、どうやって取り止めさせれば?
俺自信が賛成してしまった以上、今さら断るなんてできないよな?
「さて、勇者軍に奇襲を仕掛けるってことで決定したし、これで会議は終了だ」
「そうね。ドレイク、雪からダイダラ要塞の詳細を聞いておいてね」
「へっ、ついでだ。今、教えてやる。ガキンチョはここに残れ」
俺と雪だけ会議室に残り、他の者は部屋を出て行く。
ちょっと待てくれよ。
唯一、俺の言い分を受けて入れて貰えそうな雪まで離れるのか。
せめて、残って雪との会話を聞いてくれよ。
「くくく、耳の穴かっぽじってよく聞きやがれ。一度しか言わんからな」
いいえ、どう考えても無理なので聞くつもりもありませんなんて言えないよなぁ。
「まず、あの要塞は一夜で立てられたんじゃねぇ。瓦礫を運んだ後、とある奴が修復したんだ」
「修復? 直したってことですか?」
「まぁ、最後まで聞け。要塞はもともとアルス大陸にあったもんだ。中は大したことはねぇ……かなり広いがな。侵入経路は分からん、それはてめぇが探しやがれ。問題点は対して強くねぇ一般兵が約2000と数が多いのと、譲渡の使徒バッグベアだ。異能力リペアを使う禿げたおっさんなんだがな、要塞を修復したのもこいつだ。リペアの能力は正直、詳細が分からん。ただ一つ言えることは、こいつを最優先に倒さねぇと要塞を爆破してもすぐに修復されちまう。ま、要するに2000の兵など相手にしても埒が明かねぇから大将の首を取って、最後に要塞を吹っ飛ばせば勝ちってこった。侵入しちまえば、お子様でもできる簡単なお仕事だ。くくく」
どこが簡単なんだよ!
2000の兵がいるなんて昨晩読んだ資料にはどこにも書いてなかったぞ?
無理だ……これはどうやっても無理に決まっている。
「出立したら、先に北のゴリス砦に行け。そこなら最新の状況も手に入るだろ。ま、期待しないで待っていてやる」
一方的に話すだけ話して雪も会議室を出て行った。
どうやらこちらの話はまったく聞くつもりは無いらしい。
でも、最後に言ったよな。
期待しないで待っていてやるって。
よし、それなら近くに行くだけ行って無理でしたって戻ってきても良いってことだよな?
うん、そうだ。
そうに違いない。
ここを出発するのも目一杯時間をかけておけば作戦を考え直してくれるかも知れないし。
よし、必死に準備しているフリをして時間を稼ぐとするか。
ガチャ
俺も部屋から出るとマムが待っていた。
俺、何かやっちゃいました?
また、マムの長い説教が始まるのか?
でも、今はちょうど良い。
これでさらに時間が作れるしな。
「雪様との話は終わったようですね?」
「はい、終わりました」
「では、馬車を用意したのですぐにゴリス砦へ向かいなさい。ソウジはすでに乗せて待っていますよ」
あれ……あれれ――?
欽治め、作戦のことまったくわかってないだろう?
まさか、遠足気分にでもなっているのか……あいつなら有り得そうだ。
「兄ちゃん、早く行こ――!」
廊下の窓から下を見ると欽治が馬車から顔を出し、手を振っている。
んもぉう!
欽治のバカ――!





