この交渉はどこかおかしい1
あっという間に二日が過ぎた。
今日はこの城から南西方向にあるグリーナ砦へ雪の側近として同行する日だ。
確か魔王軍と交渉って言っていたな。
交渉ならもっと大人の人が行ったほうが舐められずに済むと思うのだが、何か策があるのかな?
「ドレイク、ソウジ。今日はよろしくね」
「はいっ! 姫様の側仕えとして、精一杯頑張ります!」
「僕も――」
「あはは、うん。お願いね」
雪も綺麗なドレスを着て、幼さは若干残るが中々良いものだ。
絶対、将来は凄い美人になるのだろうなぁ。
うんうん、おじさんも今の内から手を出しておくべきか?
「「うぉぉぉ! ユキ様だぁぁぁ!」」
「「マイラァァァブ!」」
雪の乗る馬車まで暑苦しい声援が迎える。
雪はその声援に応えるように笑顔で手を振る。
ガチャ
「ふぅ、凄い声援でしたね」
「うっぷ……おぇぇぇ」
「お姉ちゃん、どうしたの――?」
馬車に乗り込んだ瞬間、雪は吐き気を催した。
ごくごくごく
ん……なんか変な音が聞こえたが気のせいか?
それより、急にどうしたのだろう?
「姫様、大丈夫ですか?」
「え……ええ、ありがとう。ソウジ……隣に座ってくれる?」
「うん」
ギュゥゥゥ
突然、雪が欽治を抱きしめる。
おい、ズルいぞ!
欽治、そこを代われ!
「少しこのままで」
「よしよし……」
欽治が雪の頭を撫でる。
馬車で城外に出て30分程経ったころ、雪が口を開く。
「みっともないところを見せちゃった……えへへ」
「いえ……でも、どうかなされたんですか?」
「……男性恐怖症っていうか、男が嫌いなの。嫌いなんてものじゃない……大嫌い」
「男が……って俺たちも男ですけど?」
「貴方たちは大丈夫みたい。やっぱり、子供だからかな?」
そう言えばマムが言っていたな。
毎回、何かしらの際に側には衛兵を置かず、メイドを置いていたと聞いたことがあるが、そんな理由だったのか。
俺たちはまだ男として見られていない訳でもあるし、おじさんが手を出すには苦戦しそうだな。
「砦まで時間あるし、昔話……聞いてくれる?」
「昔話? 姫様のですか? 俺たちで良ければ聞きますよ」
「僕も聞く――」
欽治は仮にも一国の王である雪の膝の上に座っている。
それをまるでぬいぐるみを抱きしめるみたいに両腕で支える姫様。
おい、羨ましいぞ!
欽治、そこを代われ!
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