この移住はどこかおかしい2
母さんが言うには、ひたすら北に向かうと城があるとのことだが、距離がどれくらいあるのかさっぱり分からない。
母さんの話では空を飛んで行ったとのことだが……ナデシコって、空が飛べるのか?
何者なんだよ、あの人は。
「よっしゃ! んじゃ、二人には鞄を持って貰おか」
「鞄って……移住用の荷物も全部、燃えちゃったけど……母さん?」
「何、言ってんねん。あんたらがうちらを鞄に入れて行くんや。100人程度なら入る鞄も、あんたならすぐに作れるやろ?」
なるほど、意外と考えているんだな。
けれど、鞄に入れるっていっても底になる人が窒息したりしないかな?
母さんが地面にどんな感じに作れば良いのか描いてくれた。
小さな穴が色んな所に……ああ、これなら空気の問題は大丈夫か。
なんとか布を集めてみたが、ほとんどは燃えてしまったか。
50人も入れられないほどの鞄になってしまう。
……辺りに生えている草を縫い合わせて作れないかな?
数日ほどかかったが、何とか鞄を作ることができた。
50人ほど入る鞄を2つ……耐久性は十分だな。
でも、ここに住人を詰め込んで連れて歩くってのも、物扱いしてるみたいで少し罪悪感が……。
「きゃはは! それそれ――!」
「きゃわわわ!」
「どひゃぁぁ!」
欽治は早速、鞄に50人ほど入れて振り回したりして楽しんでいる。
中のピグミーたち……喜んでいるみたいだが、圧力がかかりすぎて死んだりしないか?
「よし、これで全員入ったな。んじゃ、行くで! いざ、新天地へ!」
「「お――!」」
運ぶのは俺たちなんだけれどね。
北に向かって歩けば、いつかはたどり着くんだろうけれど……心配だなぁ。
「せや、あんたならナデシコ姉ちゃんと同じようにできるんとちゃう?」
「何を? ……どうやればいいの、ママ?」
「そこら辺にある木を適当に切って……」
バキッ
「あ、枝とかもすべて落としてな……」
ボキッベキッ
「丸太ができたら、思い切り投げてそれに飛び乗るんや」
欽治が俺の腕を掴みジャンプする。
ビュン
ダッ
「できた――!」
空……飛んじゃったぁぁぁ!
「さすがや! これで早く着くで」
いやいや……まさか、こんな移動方法があるとは。
まぁ、普通の人じゃできないな……欽治くらいの力がないとな。
しばらくすると、急に減速していく。
「お、おい! 欽治、これ……落ちるんじゃないか?」
「落ちたらまた投げるを繰り返すんや。あ、地面に落ちるとき衝撃が凄いから気をつけてや」
早く言ってよ――!
周りに何も無い。
森だったら無数の枝が落下の速度を落としてくれたのだが……そうか、緩衝材だ。
「神が創りし粉の、大地の恩恵を……ソフトクレイ!」
ドゴッ
ふぅ、間一髪だった。
落ちるところを柔らかい粘土にして衝撃を抑えるつもりだったが、見事に丸太が突き刺さったな。
「おお――! やるやん! さすが、うちの息子やで!」
「お兄ちゃん、凄――い!」
いやいや、そんな誉めるなよ。
調子に乗っちゃうよ?
……良いの?
「よし! もう一回、投げて飛び乗るんや!」
「とりゃぁぁ!」
ビュン
スタッ
「いや――、ほんまうちの息子たちは優秀やで」
「えへへ」
何度か、これを繰り返し北をひたすら進むのだった。





