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俺、神様になります  作者: 昼神誠
混沌の世界へようこそ
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この宿はどこかおかしい2

「いらっしゃい」


 旅館に入ると女将が出迎えてくれた。

 内装も老舗高級旅館といった感じがして、柱や壁から置物まで和風な感じを漂わせてくる。


「えっと、空室があるって書いてあったのですが、三名泊まれますか?」

「ええ、どうぞどうぞ」

「あと手持ちが余り無いのですが……」

「Z指定が出たんだって? 避難してきたんでしょ? 一名様分で良いよ。それにしても若い夫婦だねぇ?」

「違うわ、私の眷属1号と4号よ!」


 1号って俺か? 

 ふざけんな! 

 2号、3号って誰だよ? 

 脳筋と変態のあの二人か? 


「そうかいそうかい。では、お部屋にどうぞ」

「あの、一人分だけで良いのですか?」

「お気になさらず」


 こんな高級旅館だから、維持費も高いだろうに。

 でも、お言葉に甘えるとしよう。

 俺たちは女将さんの後に続き、部屋に案内された。


「これは……」

「凄い、すご――い!」

「私が泊まるんだから、これくらいは当然ね!」


 今まで旅行とかはほとんどしたことがない俺だが、テレビで見るような高級旅館の部屋そのものが眼前に広がる。

 庭も綺麗に手入れされており、露天風呂が各部屋にある高級旅館の様相だ。


「お風呂は部屋風呂以外に大浴場と露天風呂があるのでね。あと夕食は部屋食になるから、今の内にお風呂に行って待っておいてね」

「わかりました」

「さぁ、雪! 私と露天風呂で潜水の勝負よ!」

「女神ちゃん、温泉で潜るのマナー悪いんだよ――」

「俺は大浴場で身体洗ってこようかな。汗で服がベタベタだ」


 こうして、ユーナたちと別れて大浴場に行った。


 おお! 

 さすが、高級旅館だ。

 なんか健康ランドみたいに、いろんな浴槽がある。

 ジェットバスもあるのか。

 なんか時代が凄く現代っぽいのだが、気にしたら負けなんだろう。

 こっちの世界に来てからいろいろあったし、こんなご褒美があっても良いよな。

 とりあえず身体を洗い、数種類もある浴槽の内、一つに浸かる。


「あ、あぁぁぁ……」


 やべっ、声が出てしまった。

 おっさんみたいだ。

 ユーナと雪は楽しくやってるだろうか?

 杏樹は……どうでもいいな。

 考えるだけ無駄だ。

 ここでも何かとんでもないトラブルを起こすとしたらアイツだ。

 あの変態が居ないだけで安全性が確実に向上する。


 風呂に浸かりながら、さまざまなことが脳裏をよぎる。

 まずはあの勇者(仮)だ。

 本当に勇者なのか?

 首都の住人はほとんどが女性で後は世紀末風ならず者共ってところだ。

 住人の女性は他の町から連れてこられた人たちなんだろうか?

 そうすると、あの場所はもともとならず者の巣窟か?

 それでいて首都、意味がわからないな。

 それと、この世界に転移させられた俺と同様な人たちだ。

 結構な数がこの世界に来ている。

 何十年も前に来た人の日記もあったし、この世界は転移者のお陰で技術が向上しているような気がする。

 今、思い出したけどあの自衛隊の人は無事だろうか? 

 怪獣もそうだな。

 ドリアドの町に来ないとも言い切れないし、何かしら対策はしておく必要があるが、それは町の人に任せるとするか。

 あとは自称マッドサイエンティストか。

 迷惑千万な奴だ。

 二代目勇者のころに来た人みたいだから、生きている確率は高そうだ。

 他にもいろんなものを作っていそうで怖いな。

 元の世界に戻る方法も探さないといけないし。

 もっと首都で調べたかったが、仕方ない。

 ユーナは首都に来たと言っても連行されて来たみたいだし、本人はあそこが首都だと気付いていないらしいし。

 ユーナにとって目的は果たしてないだろうな。

 首都が近い今の内に話しておくべきか? 

 俺もまだあそこには用事がないわけでもないし。

 だけど、街は怪獣に破壊されたんだよな。

 良いほうで考えると、今なら人は少なそうだよな。

 あのならず者共と勇者(仮)がいるだけで行く気が無くなる。

 だって、怖い目に遭うし。


「おい、知っているか? この温泉地に賢者が来ているんだってよ!」

「ほう、賢者様が? 一度見てみたいもんじゃ」


 隣の浴室でおじさん二人が何やら話している。

 賢者? 

 女神(仮)はいるが、賢者か。

 勇者も勇者(仮)だし、賢者(仮)ってことも有り得そうだ。

 本物の賢者だとしたら、元の世界に戻る方法を知っているかも知れないけど。

 食後に探してみるのもいいかもな。


 ……そろそろ出るか。

 浴室から出て、浴衣を着て部屋に戻る。

 あいつらはまだ風呂か。

 覗き? 

 興味ないな。

 本当のお子様にお子様体型が相手じゃな。

 

 ガラガラガラ!


「はぁ、最高だったわね。雪!」

「うん! たくさん泳げた――!」


 おいおい、雪、潜水はダメで泳ぐのは良いのかよ?

 他の客に迷惑だろう。

 ユーナも注意……するわけないか。

 あと、引き戸もそっと開けよ。

 隣の部屋に迷惑だろう。


「リュージ、先に上がっていたのね」

「ああ」

「お兄ちゃん、遊ぼ――!」


 子どもは元気だ。

 いや、今は元気すぎて迷惑だな。


「女神様が遊んでくれるってよ」

「やったぁ! 女神ちゃん、何する――?」

「ちょっと、リュージ。あんたが面倒見なさいよね」

「あらあらあらぁ? 女神様は子どもの願いも叶えないんですかぁ? プップ――」

「ぐぬぬ……さぁ、雪! トランプするわよ!」


 相変わらず、チョロい。

 トランプってどこにあったんだ?

 ま、勝手にやっていてくれ。

 窓を開けると夜風が心地良いな。

 夕食が来るまで何もすることがないし、寝てもいいか。

 はぁぁ、このスローライフ感……最高だ!


「わぁい! 勝った――!」

「ぐぬぬぬぬ! やるわね、雪! もう一勝負よ!」


 うるせぇ、ユーナや雪とこの部屋で寝ることになるのか。

 こいつらは気にしていないみたいだしほっとくか。

 男は廊下で寝なさいとか言うもんだったら、泣かしてやるところだが。


 ガラガラガラ


「おまちどおさま」

「わぁ、美味しそう――!」

「ほら、リュージ! 夕食よ、起きなさい!」


 起きてるよ。

 お前らがうるさすぎて一睡もできてないんだよ。

 台の上に仲居さんが夕食の配膳をしてくれている。

 茶碗蒸しに天ぷら、蟹まであるのか。

 かなり豪勢な夕食だ。

 一名様分でも、手持ちヤバいかも知れない。


「ご飯はお櫃にいれておくわね。そそ、ご主人、お酒はどうします?」


 そういえば、この世界じゃ飲めるんだよな。

 以前みたいに飲みすぎなければ二日酔いにならないし、貰うか。


「それじゃ、アワアワを一つ」

「いいえ、二つよ!」

「はい、お二つね」

「こら、ユーナ。お前はまだ飲めないだろ」

「大丈夫よ、ばれなきゃいいのよ! ばれなきゃ!」


 帰ったらおじさんに言いつけてやる。

 こうして、夕食を楽しむことにした。


「すみませ――ん! アワアワもう四つ持ってきて――!」

「はいよ、少し待ってね」


 おい、ユーナ飲みすぎだろ。 

 明日、酷いことになっても俺は知らないからな。


「女神ちゃん、あたしも!」

「いいわよ」

「おい! さすがにそれは駄目だろ! 雪ちゃん、代わりにフルーツジュース頼んであげるからね」

「うん!」


聞き分けの良い子で助かった。

もう片方の雪なら、問答無用で飲んでそうだな。


「ふう! 食った食った!」

「お腹いっぱ――い」

「なに満足ひてるのよ! リューひ、もっと付き合いらはい!」


 ベロンベロンじゃねーか。

 こいつは確実に後で酷いことになるな。

 どうなっても知らんぞ。

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