このコンティニューはどこかおかしい16
母さんにも滅茶苦茶心配された。
傷口を診ても、まったくわからないらしい。
そりゃそうだ。
こんなにパックリ割れているのに血が出ていないんだから。
「お兄ちゃん、頭……大丈夫?」
だから、その言い方ぁ!
「心配してくれてありがとな、欽治。痛くはいないから、大丈夫だって」
「えへっ、良かった――!」
か……可愛えぇぇぇ!
ふぅ、これで妹なら最高なんだけどな。
誰が見ても幼女にしか見えないほどの可愛さだ。
だがしかし、男だ。
畜生め、神様!
こいつの性別、間違えたんじゃねぇのか?
ま、良いや。
取り合えず傷口は何か布で隠しておいてっと……おぉ?
赤いタオルを額に巻くと、何か熱血キャラっぽくてカッコいいぞ。
「ほれ、寝る時間やで」
「ママ――! 僕のパジャマに入る?」
「せやな。あんたはええ匂いするから、うちもぐっすり寝れるわ」
ミミは欽治のパジャマに胸元から入り眠りにつく。
母さんが近くにいたら下手に参考書を広げられないな。
取り上げられたりしたら嫌だし……明日の自由時間に傷を癒やす回復魔法を読んでみるか。
………………。
ドドドドドドドドド!
うるせえな……何だよ、この地響きは?
「姉ちゃん! 起きとるか!?」
「ほぇぇ……何や?」
「遠くに篝火がめちゃ見えるねん! しかも、こっちに向かって来とる!」
「ほぇ、そうかいな……ゴブリンちゃうん? 夜中やし簡単な幻術でもかけとき。夜中やし……むにゃ」
「せ……せやな。何を心配しとったんやろ?」
え……それで良いの!?
多くの篝火って、知能のある生物だろ?
こんな夜中に来るなんて、嫌な予感しかしないんだが。
ドドドドドドドドド!
かなり近づいて来ている。
こっちに向かっているのは確かなようだ。
ボッ
「うわぁ、火事やぁぁぁ!」
「火が飛んでくるぞ!」
「何や!? 矢の先が燃えとるで! 姉ちゃん、敵や!」
「むにゃ……ほんまか……って、家燃えとるやん! ほら、みんな急いで逃げるで!」
火矢だと……やっぱり、知性のある奴らじゃないか。
しかも、兄貴(ミミの弟)の幻術が効いていない。
相当な手練れのようだ。
「ヒャッハー!」
「何でぇ、ここは? 小人の村ぁ?」
「何でも良い! 奪えるもんは奪え!」
人間!?
欽治以外では初めて見た。
あれ?
でも、こいつらの格好……昔どこかで見たような記憶が?
世紀末風悪党?
ならず者?
……勇者?
魔界進出?
ズキッ
何だ、今一瞬見えたのは?
金髪の杖を持った少女と小太りの男性、それにナデシコ?
あと、欽治に似た幼女?
「小人と言えど人族じゃねぇ! 魔族の一員は皆殺しだ!」
「ヒャッハー!」
「きゃぁぁ!」
やめろ……俺の村を壊すな!
「ああん? 何でこんな所に人間の子どもがいるんだ?」
昔の俺なら、こういう時はすぐに逃げていたような気がする。
「ガキだ! うっひょぉぉぉ、隣の子はかなり可愛いぜ!」
「がははは! おまいのロリコンも長旅で欲求不満か!?」
欽治が危ない!
だが、今の俺は昔の俺とは違……やっぱ、怖ぇぇ!





