このコンティニューはどこかおかしい12
ナデシコが出掛けてから一年が過ぎた。
もう、少しの間なんてどころじゃ無いだろ?
まさか、忘れているんじゃないだろうな?
足はおぼつかないが何とか二足歩行をすることができるようになった。
ふぅ、長かったぜ。
因みに隣の赤ん坊はまだ初めての一歩も見せていない。
ただ、ハイハイが異常に早い……まるでゴキ○リの如く高速で村中を動き回っている。
そこまで早く動ける筋力があるなら二足歩行だってできるだろうに……。
しかし、お互いにまだ赤ん坊だ。
ピグミーたちが一生懸命に世話をしてくれるお陰でここまで来られたんだ。
自分でも何かできることがあれば良いのだが……まだ、時期尚早だな。
それから更に一年、二年と時は過ぎ俺が五歳になったときだ。
「ほっほっほ、お前たちがここに来てもう五年が過ぎた。最近では、村の手伝いも進んで行い大変助かっておる」
「そんな、長老様。僕は育てて頂いたご恩を返してるだけです」
「にーちゃん、お腹空いた――」
「こら、欽治! 長老様の前だぞ」
「いやいや、良いんじゃよ。欽治のお陰で食料事情は年々良くなっておるわい。いつも助けられておるのはこっちじゃよ」
隣の赤ん坊だった子は俺のように前世の記憶を引き継いでいないようだ。
名前を付けるという文化が無い小人の村で不便だったため、欽治という名前をつけた。
何でその名前にしたかと言うと……この子の顔を見ていると、ふとその名前が思い浮かんだんだよな。
特に深い理由は無い。
あえて言うとなぜか、その名前がしっくりくる感じがしたからかな?
顔はまるで女の子のようだが、残念なことに男だ。
俺が間違いを侵さないためにも男らしい名前だったし。
欽治は赤ん坊のころから元気いっぱいで村中を駆け巡り、二歳になるころには近くの海で素潜りをし鮫を捕まえてきたほどだ。
うん、分かっている。
二歳で鮫と戦える奴をもはや人間とは言わない。
そんなバケモノみたいな欽治が近くにいたからか、俺も得意な事を作りたいと思い育ての親であるミミの下で魔法の練習を三歳頃から行い始めた。
どうやら、ピグミーは弱い自分たちを守るため幻術魔法を得意とする一族らしく、幻術魔法の初級にあたるイリュージョンを詠唱無しで発動させることができるようになることが今の日課となっている。
「まだまだやな。初級くらいは無詠唱でできないざというときに食べられてまうで」
俺はまだまだ魔法に使い慣れていないみたいで、イリュージョンで自分の姿を横に現すが幽霊のように透けてしまっている。
「う――ん、母さん。やっぱ、難しいって……」
「詠唱ありでしっかりできていても、咄嗟のときには詠唱しとる暇なんて無いんやで。この辺りはカニやウミネコがいっぱいおるからな」
それで危険なのはピグミーたちくらいで、俺と欽治にとっては何の危険もないんだよなぁ。
カニなんて食材にしちゃってるし。





