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俺、神様になります  作者: 昼神誠
少女と神
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この宇宙戦はどこかおかしい9

 プロメテウス4に到着してから二時間ほど経った。

 そろそろ、ディーテが付近にいるはずだけれど……そう思っていたとき、ニーニャに手渡しておいた無線機で連絡が来る。


「ダリアさん、ディーテの姿が確認できました」

「どう……このコロニーに向かっている?」

「ええ、まっすぐとこちらに……ブレスは貯めていませんね」


 ついにこのときが来たか。

 計算していた通りの時刻に来るなんてね……さて、あいつを退治する上で問題なのは、あの驚異的な生命力と回復力だ。

 身体の半分を吹き飛ばされておきながら生き続け、そして再生する。

 それを何とか止めることができるのは、恐らくユーナだけだ。

 氷は生物の細胞そのものの動きを鈍くさせる……それが冷たければ冷たいほど、完全に細胞の動きを停止させることさえできる。

 ディーテだって神族とはいえ生命体だ。

 あいつの細胞を凍らせることさえできれば、なんとかなると予測している。

 いいえ、ユーナならできるの……ユーナの氷魔法は以前よりも確実に威力が上がってきている。

 土魔法や火魔法は以前と同じくらいなのに、なぜか氷魔法だけが格段にレベルアップしている。

 ユーナの話では赤ん坊のころから、氷魔法だけは練習をしなくても使えていたみたいなことを聞いたことがあるけれど、ディーテやガールンはそれぞれ一属性しか使っていなかったから、神族って生物は生まれつき固有の属性が備わっていると仮定している。

 ユーナの母親も神族でポセイドンの子孫であるがゆえに、水属性の魔法においては最強の力を持っていたってニーニャからも聞いたし。

 そこに人族特有の各属性魔法を学習すれば、扱えるようになる能力を受け継いだのが半神であるユーナの特性だと思う。

 

 ズドォォォン


 おっと……ディーテがご到着のようだ。

 コロニーに穴を開け中に入ってきた。

 ちなみにユーナもニーニャも宇宙服を着ているわよ。

 私は脱出艇から降りていないから、ヘルメットは外しているけど身に付けている。

 この宇宙服、胸がきついのよね。

 以前のはディーテにボロボロにされてしまったため、学校に置いてある汎用の宇宙服を着ている。

 

 ザ……ザーザー


 ユーナに渡した無線から声が流れる。


「ダーリン……ディーテが来たわ!」

「うん、確認できている。それじゃ、予定通りにお願いね……ニーニャも間違ってトラップを踏まないでよ」

「ええ、任せてください」


 脱出艇は外から丸見えだったため、真っ先に狙われることも想定して、近くにあったドーム状の建物の中に隠すように着地させている。

 しかし、それではディーテが私がいないことに気付いたら、コロニーをすぐに破壊するのではないか……そのときのために、3Dホログラム装置を準備している。

 私の世界では、当たり前のように使われている映写装置だ。

 遠くにいる仲間とも、近くにいるような感覚で接することができるため、飲み会や同窓会でも使われている安物のホログラム装置だけれどね。

 ユーナには私の家にあった、チョーカータイプのものを身に付けさせた。

 つまり、ユーナの横にはホログラムで映し出された私がいるってことだ。

 もちろん、今の動けない私を映し出してディーテの油断を誘うこともできたのだろうけれど、もしものときのために、脱出艇内から遠隔操作で健康体そのものの私を動かしている。

 キーボードとマウスさえあれば操作できるのが助かるわ。

 ネトゲみたい?

 ま、そんな感じね。

 視覚をホログラムと共有するために専用の眼鏡をかけて……これで視線から偽物だと悟られることもないだろう。


「ユーナ、どう……しっかりと見えてる?」

「うん、凄いね……私もこんな魔法使えたら良いのになぁ」


 まぁ、魔法じゃ無いんだけどね。

 

「もう一回言っておくけれど、映し出せるのはユーナの周り10メートル以内。ある程度のユーナの動きには合わせられるけど、決してチョーカーの周りを遮るようなことはしないで」

「なかなか難しい注文だけど、何とかやってみるわ」


 手を首より高く挙げなければ遮らないから、大丈夫だとは思うけれど……。

 よし、あとはニーニャがユーナのところまでおびき寄せてくれるまで待つとしよう……と言っても、豆粒ほどの大きさで遠くに見えている。

 

 ババババ!


 コロニーの被害なんて考えずに、容赦無くニーニャに雷魔法を撃ち続け、ディーテが向かってくる。

 ニーニャは躱したり、アースシールドで防いだりして上手くやってくれている。

 どうやら、ニーニャもガールンに負わされた傷のほうは完治したようね。

 ディーテと言い、ニーニャと言い、あの回復力は正直羨ましいわ。

 私は普通の人間だから、この大怪我が治るのはまだまだ時間がかかりそうだ。

 今も無理して車椅子に座り、キーボードやマウスの操作だけ何とかできているのが不幸中の幸いだ。

 

「ダーリン……そろそろやるわよ」

「そうね、罠は設置済みよね?」

「うん、あそこの瓦礫の横に設置したわ」


 ニーニャが上手く誘導して、ユーナのいる場所に来る。

 まずは手始めにこいつよ。

 罠の範囲内まで3……2……1……今だ!


 ピッ

 

 ブゥン!


「なんじゃ!?」


 本当は対HBMのトラップなのだけれど、生き物でも効果あるのか試しに使ってみる。

 光学兵器で作られる檻、ビームケージ。

 上手くディーテを閉じ込めることができた。


「小癪な! 罠を用意して待っておったのか!」

「ユーナ!」

「オッケー! ブリザード……エクストラ……バーストォォォ!」


 バリバリバリ!


 巨大な冷気がビーム状になってディーテに向かって飛んで行く。

 下手に近付かせるわけにはいかない。

 遠距離で決着が付けられるなら、これが一番の手だ。

 

「くはは……大罪の魔女の娘の攻撃か……甘いわ!」


 バチッ!


 ブリザードバーストが何かに防がれた!?

 よく見ると電気の壁?

 

「サンダーバリア……氷魔法など雷の前には無力じゃ!」

「ユーナさん、属性反応が起きます! 気をつけて!」

「ほれ、電撃が襲いかかるぞ」


 バチバチバチッ!


 冷気によって氷が張った地面を伝い、電撃がユーナに向かって襲いかかる。

 雷属性のスペシャリストであるディーテに、相性の悪い水属性や氷属性は大きなハンデとなることはわかっていたけれど……属性反応の伝導は厄介ね。


「ユーナ、防御!」

「ええ! グランドウォール!」


 土の壁で雷を地面に分散させる。

 やっぱりビームケージじゃ、足止めが限度か。

 檻に閉じ込められても、隙間から魔法を放てば良いだけだもんね。

 そろそろ、ビームケージの効果も切れるころか。


 ヴ……ヴヴヴ


「ん? 消えた……どうやら、単なる足止めじゃったか」

「くっ……ここから先には行かせません!」


 ニーニャ、少しでいいから時間稼ぎを頼むわよ。

 次の罠は誤作動が起きないようにロックがかかっているから解除に時間がかかるの。

 

 カタッカタカタ


「あっははは! 以前も言うたが、防ぐだけの汝に何ができる? それとも、母親の後を追わせほしいのか? 顔で理解したぞ。あやつの娘じゃろう……弱小従者よ、んんん?」

「!!! う、うわぁぁぁ! あなただけは絶対に! グランドシールド!」


 ニーニャ、そんな安い挑発に乗ってはダメ!

 ルーシィはまだ死んだって確定してないのだし……ディーテも相変わらず、やることがエグいわね。

 人の心の傷を的確に攻撃するなんて……。

 ディーテは目の前のニーニャを無視し、ユーナに向かって雷魔法を放ち続ける。

 本来ならニーニャがディーテの攻撃を防いで、その間にユーナは次の魔法の詠唱をしてもらうはずだったのだけれど……ニーニャが挑発に乗り前に出てしまったせいで、ユーナがグランドウォールで防ぐことになってしまっている。

 仕方がない……ユーナの魔法での足止めが必要だったのだけれど、先にトラップを発動させよう。

 もう少し頑張って耐えてよ……ユーナ。


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