この悪魔はどこかおかしい8
グンッ
サキュバスが突撃してきた!?
本当なら跳んで避けるところだけど……ミミ、何をしているの?
ドゴッ!
「くっ!」
刃のような爪で攻撃かと見せかけての膝蹴りか。
何とか片足で防御したけれど、この体勢は……。
「跳ばずに防御するとはね、あたくしも予想外だったわ……けどねぇ!」
ブンッ!
そのまま、爪で首を狙い斬りつけようとしてきた。
ん……あたしの両手の部分が熱いような。
「よっしゃ、やっぱり草だけあってよう燃えるで!」
火に弱いのか、迂闊だった。
両手を縛るものが無くなれば太刀が使える。
「あっは――、その首も――らい!」
「残念、それはこっち」
スパァァン!
「何っ、いつの間に背後!?」
キンッ
抜いた太刀を鞘に納める。
「あはっ! 何をしていたわけかなぁ!」
「何をって……急襲の型、大痛剣番外……別腑死」
「何をふざけた名前……を……えっ!?」
大分県は一瞬のうちに相手の懐に入り居合斬りで斬りつける技だ。
番外はその派生技……相手との距離がゼロ距離の場合に放つ技。
別府市は居合斬りで相手の五臓六腑を斬り裂く。
結果は見ての通り。
ゴトッ
ブシュゥゥゥ!
「あ、あ、あ、あたくしの身体が……胴が!? い、いやぁぁぁ!」
「ほんまに容赦ないなぁ、ナデシコ」
「そう? ま、かかる火の粉は払わないとね」
「ほんまに大人しいのか、激しいのか……ようわからんやっちゃで」
とにかく、これで追撃は無くなったし先に進もう。
あ……でも、念には念を入れておくか。
ザッ
真っ二つに裂けたサキュバスのもとへ行く。
「ご、ごめんなさい! だから、命だけは……た……助けて! 」
「うん、無理」
ドスッ
さて、邪魔者も排除したし川を渡ろうとしたが……まいった。
対岸が見えないほど幅が広い。
これじゃ、跳べないな。
まわりに木も生えていないし。
さっき思いついた通り、サキュバスの城に戻りグランディール大陸の地図を探したほうが早いかも。
地図で現在位置さえ把握できれば、アルス大陸まで跳べる。
急がば回れっていうし、一度あの城へ戻ってみよう。
「な……なぁ。どこへ行くんや?」
「さっきのお城に戻る」
「そうか、わかったで! あの城をうちたちの新しい居住先にするんやな?」
「ん……あそこネズミやカラスがいたよ」
「あかん! そら、あかんで! 危険すぎるわ! 却下や!」
「大丈夫、ちょっと戻るだけだから」
再び、深い草むらの中へ戻りそのまま城を目指す。
現在位置もわからないし周囲が認識しづらい、なぜかこの草むらでは能力は使えない。
もっと能力の練習をすれば、いつでもどこでも跳べるようになったりするのかな?
能力の練習ってオリジナルのいた世界じゃ無いとできないみたいなんだよね。
特別な器具を使ったりするみたいだし。
……そのうちにオリジナルの世界に行って器具を使わせてもらおうかな?
なんてことを考えながら、城に向かって進むこと数十分……城壁が見えてきた。
見える場所なら跳べるし、ここからは一気に。
ヒュン
城壁のてっぺんから城内を見渡す。
地図がありそうな場所……う――ん、どこにありそうかな?
第二柱っていうくらいの幹部クラスだから、書斎みたいな場所にありそうな気がする。
でも、その書斎ってどこだろ?
これだけ広いと、探すのも手間がかかる。
……と思っていたが、まだ城内にはゴブリンやオークがいるみたいだ。
わからないなら聞けばいい、いや道案内させればいい。
ちょうど、物見やぐらで見張りをしているゴブリンがいた。
ヒュン
「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど」
「どわっ! し、侵入者!? いつの間に!」
ガシッ
「むぐ!」
すかさず後ろに回り、太刀をゴブリンの首に突きつける。
「静かにしないと、永遠に静かにしちゃうよ」
コクコク
首を縦に振るゴブリン。
うん、やっぱり脅しは雑魚には有効だよね。
ゴブリンに問いかける。
「このお城に大陸の地図って無い? あるなら、その場所まで連れてって」
「ひゃ、ひゃい」
ゴブリンに刀を突きつけながら移動を開始する。
「あ、誰か襲ってきたらそいつは遠慮なく殺すからね」
「ひ、ひぃ」
「なんか、ナデシコのほうが悪党みたいに見えるで」
悪とか正義とかそんなのは特に気にしない。
人一人で全人類を救うことなど皆無だ。
誰もが目に見える近しい人を守り、守られればそれで良い。
だから、あたしはユーナ姉や雪といった家族を最優先で守る。
そのための手段は特に気にしない。
人質ゴブリンに道案内をさせながら、城の中に入る。
「し……侵入者だ!」
人質ゴブリンが大きな声で叫ぶ。
馬鹿な奴だ……目にもの見せてあげなきゃ。
ドドド
「侵入者だと!?」
「おいっ! あいつはさっきの姫様に無礼を働いた奴じゃないか!」
「姫様はなぜ戻ってこられない!?」
かなりの数が集まってきたな。
「た、助けてくれ!」
「あいつはかなりのツワモノだぞ! 全員で一気に取り押さえるんだ!」
集まった連中の中には謁見の間にいたゴブリンもいる。
あたしを知っているなら、全員退かせればいいのに愚かだ。
「「かかれ――!」」
「倒剥の型……蒼喪離剣……恐斬!」
ドッ!
バタ、バタタ
ふぅ。
「な、何や? 急に全員倒れたで? 何したんや?」
「青森県の派生技、恐山」
「いや、技の名前ちゃうって! どうやったんか教えてや!」
「あ、そういうこと。剣気を当てたの」
「けんき? 何やそれ?」
「ま、威圧したって思えばいいよ」
「それだけで気を失うんか? 凄いな」
「気を失う? ううん、全員絶命しているはず……あ、気の強い者ならかろうじて生きているかも?」
「こ、殺したんか!? まったく、容赦ないのは相変わらずやな」
「し、死んだ!? ひ、ひぃぃ!」
「確かめてみる? あ、そだ……次に変な真似したら君もこうなるからね」
「ひ、ひぃぃ! すみません!」
「じゃ、案内して」
人質ゴブリンがおびえながらも動き出す。
これだけ腰が引けてたら、下手な真似はしないだろう。
でも、蒼喪離剣って始めて使ったけど、意外とあたしと相性良いかも?
本当の使いかたはちょっと違うけど、試しにやってみて良かった。
ん、本当はどうなるかって?
それはまたの機会に見せてあげる。
人質ゴブリンが謁見の間の奥にある部屋に案内する。
「こ、ここは執事様の書斎になります。ここに大きな大陸の地図が壁に貼ってお
……おります」
「ありがと。もう、行っていいよ」
「そ、それでは……ひぃぃ」
人質ゴブリンは逃げるように去って行った。
書斎に入ると、世界地図がでかでかと壁に貼られている。
魔族はグランディール大陸内で私腹を肥やしているとホークのデータベース内では保存されていたけど、これって世界進出するための計画?
南の大門……グランディール大陸からでは、北の大門になるのか。
そこに雑兵を配置して囮作成?
アルス大陸へは、海路を使って本隊が攻め入るようだ。
勇者軍が北の大門に展開しているのをサキュバスは知っていたし、スパイでもいるのかな?
ま……今はいいや。
現在地はグランディール大陸の南部ガスティオ地方というところらしい。
やっぱり寄ってみて良かった。
ここからアルス大陸に北上するには今までのルートの数十倍以上の距離はある。
でも、これで現在地がわかれば魔界ともしばしのお別れかな。
「ミミ、行くよ」
「えっ……どこに行くんや?」
「イメージしやすいのは勇者城。一度、補給を済ませる」
ヒュン
地下三階にあるホークの研究所。
ここには回復アイテムもそれなりに置いてあるから、貰えるだけ貰っていこう。
ん、あれは……ふと目に映る。





