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俺、神様になります  作者: 昼神誠
少女と神
133/592

この悪魔はどこかおかしい7

「奴を捕まえろ――!」


 次々とゴブリンやオークが襲いかかってくる。

 雑魚なんて相手をするだけ時間の無駄だし、前を邪魔する奴だけ駆除するようにしているけど……きりがないな。


 ザッ


 前方の柱に人影……奇襲を仕掛けるつもり?

 自分の影にも気付かないなんて三流以下だね。


「ふははは、脱獄者というのは貴様か?」


 大型のオークが棍棒を振り落とし、柱の影から姿を現す。

 かなり大きい……3メートル以上はあるみたい?

 

「姫様が連れてきた者に絶頂を与えてくれるとさ……ぶ、ぶ、ぶ、ぶひぃ!」


 棍棒を振り回し、襲いかかってくる。

 図体が大きいだけの雑魚だね。


「ん……邪魔」


 ヒュン

 

「ぶ、ぶひぃ!」


 能力を使い、巨大オークの背後に跳ぶ。

 そのまま、あたしはオークを無視し前進する。


「それだけ太ってると動きも鈍い……ダイエットしなよ……じゃね」


 サッ!


 雑魚ばかりである意味助かる。

 両手が塞がっている現状で、まともな剣術は使えないし。

 邪魔が入っては能力を使って先に跳ぶことを何度か繰り返し、やがて城壁が見えてきた。

 

「ナデシコ、大丈夫かいな……かなりの高さの壁やで?」

「ん、見えてる場所なら能力で跳んでいける」


 ヒュン


 ふわ――、本当に高い壁だ。

 城内が一望できる。

 ん……サキュバスを発見。

 あたしを探しているみたい。

 今は見つかると面倒だし、さっさとここからおさらばしよう。


「飛び降りるよ」

「えっ!?」


 バッ

 ヒュゥゥゥ


「あかん……あかんで! 高すぎるって……し、死ぬ~!」


 ダンッ!


 ふふん、余裕。


「何を自慢げにしとるんや! 生きた心地せんかったわ!」

「大丈夫、生きてるから」


 さて、お城の外は城下町だと思っていたけど……捕まったときと同じ2メートルほどの草むらが広がっている。

 一つのお城だけ、こんなところにポツンとあるのは不思議で仕方がないけど、今は考えるだけ無駄だろう。

 それよりも、この草むらに隠れて襲いかかって来られても良いように警戒をするべきだ。

 今のところは殺気を感じない。

 どこかに木があれば、伐採して乗り物に使えるのに。


「ほんま薄気味悪い草原やな……寒気がするで」


 草原内を北に向かって突き進む。

 今のところ、ただの背の高い草にしか見えないけど、どうすれば鋼鉄以上に硬くなったり、動いたりするのだろう?

 小一時間ほど草むらの中を進んだが何も起きない。

 諦めてくれたなら良いのだけれど……草原を抜け、目の前に大きな川が行く手を阻む。

 ここってグランディール大陸のどのあたり何だろう?

 本当にデータが皆無で、まったく現在位置がわからない。

 アルス大陸はいつ見えてくるの?

 こんなことでは時間がかかりすぎる。

 さっきのお城に戻って、地図を探すほうが早そうかな?

 でも、警戒されているだろうし……むむむ。


 ダダダダ!


「な……ナデシコ! あいつらやで!」


 こんな場所でもたもたしていたから追いつかれてしまったか。

 

「さっきはよくもやってくれたわね!」


 サキュバスは相当、お怒りになっているようだ。

 さっきは不意をつけて気を失わせたけど、真正面からやり合うとどれくらい強いのだろう?

 

「ん……先に仕掛けたのはそっちだから」

「口答えなど求めていないのよっ……その刀はあたくしのものとなった以上、さっさと返しなさい!」

「そうですぞ、お客人。貴女のものは姫のもの。姫のものも姫のものですぞ」

「……んと、ジャイ〇ン?」

「ふふ、ジャイ〇ニズムというものです」

 

 強欲を名乗るだけあって、やっぱりそうなんだ?

 

「無理、これはあたしの大事な武器」

「そう……それなら力尽くで取り返してもらうわ! あんたたちやっておしまい!」

「「おお! 俺たちも姫のもの――!」」


 ゴブリンとオークの大群が襲いかかって来た。

 両手を塞がれている状態で、この数はちょっと厳しいかな?


「うぉぉぉ!」

「やっ!」


 ドゴッ!


「ひゃっは――!」

「遅い……」


 バキッ


 単調な戦闘が続く。

 だって力の差は明白なのに、襲い掛かって来るんだもん。

 

「キ――! あんたたち、もっと頑張りなさい!」

「ひ、姫……奴ぁ、バケモンみたいな強さで……」


 グシャ


 オークの頭を踏み潰す。

 下手に起き上がられると厄介だから、トドメは刺しておかないとね。


「そろそろ、先に進みたいのだけれど……」

「こ、この人間めぇぇぇ! ヨハン!」

「ははっ!」

「あんたの生気をよこしなさい」

「御意」


 ヨハンとサキュバスが口付けを交わす。

 そんなことをするなら、お城に戻ってやってよ。


「ヨハン、いい子ね。ほらぁ、気持ちよくなるわよ」

「あ、あああ! ぎもぢいひです!」


 えっ……ヨハンの口から白い霧のようなものが漏れている。

 サキュバスは溢すこと無く、ヨハンの口の周りを舐め回す。

 

「ひゃっ……何をしだしてんの!? あいつら!」


 ミミの顔が真っ赤になっているじゃない。

 本当に何がしたいのかな?


「わかんないけど……放っておいて先に進もうか」

「ぎ、ぎもぢいいぃぃぃ!」


 ヨハンの身体が少しずつ細くなってきているように見える。

 

「ほらぁ、もっと! もっと生気をよこすのよ!」

「ひ……姫様! これ以上は……溶ける……溶けてしま……うふぅぅぅ」


 ドロッ

 

 ヨハンの顔が次第に溶けてきた……気持ち悪い。


「ふぅ、これ以上は消えてしまうか。あんたたちも生気よこしな!」

「「うおっほぉぉ!! 姫様のためにぃぃぃ!」」

「「姫! 抱いてくだせぇ!!」」

「「ぎ、ぎもぢいぃぃぃ!」」


 ドロッ


 う――ん、18禁っぽいしご想像にお任せするね。

 でも、ゴブリンやオークのほとんどはミイラみたいに干からびた後、溶けて消えてしまった。

 キスすると男の人って溶けるんだ?

 あたしは女でよかったかも。

 

「ちゃう、ちゃうで! サキュバスの魔法やからな! 勘違いすんなや!?」

「ふぅぅ、これくらいもらえば十分ね。さぁて、人間! 覚悟は良いかしら!」


 さっきとは桁外れな魔力になっている。

 これは両手が縛られた状態だと辛いかも知れないな。


 ヒュッ!


「きえぇぇぇい!」


 早い!

 一瞬であたしの懐に飛び込み長く伸びた爪で引き裂こうとしてきた。


 ヒュン


 能力で跳びサキュバスとの距離を取る。

 まさか、肉弾戦を仕掛けてくるなんて……予想外だったけれど能力で跳び避けれるから驚異ではないかな。


「ふっ、その能力……なかなか厄介ねぇ」

「いいでしょ、欠陥品のあたしでもできる得意技」

「ふふ、欠陥品って面白いこと……言うじゃない!」


 ギュン


 あれは城内にいた巨大オークが持っていた棍棒。

 それを軽々と持ち上げ、あたしに投げつけてくる。


 ヒュン


「あは、予想通り!」


 ドスッ!


 爪が脇腹に突き刺さる。


「くっ!」


 あたしの跳ぶ先を予想した?

 いや、まぐれに違いない。

 たったの一撃で意外とダメージをもらうなんて、想像していたよりパワーアップしている?

 

「ほらほらぁ! 逃げないと死ぬよ!」


 ビュン

 ビュン

 ビュン


 あたしが倒したゴブリンやオークが使っていた剣や斧を連続で投げつける。

 こんなものに当たると思ってるの?


 ヒュン


「うふ、また貰い!」


 ズシャッ!


 さっきの脇腹に連続して……こいつ、あたしの傷を集中的に狙うつもり?


「かはっ!」


 それよりもあたしの移動先が完全に読まれているよね?

 

「うふふ、驚いちゃってる――? 何でだろね――、あっはは!」

「ナデシコ、押されてるんとちゃうん? 逃げよか?」

「両手が使えないと、こっちからの攻撃が足技しかできないからね」

「両手って、その草か? よっしゃ、何とかしたるわ!」


 ミミがあたしのポケットから外に出る。


「ミミ、危ないよ」

「何とか、あいつの攻撃を防いどき!」


 無理っぽいけどやるしかないか。


「さぁ、どうやって料理してやろうかしら?」


 サキュバスの奴……余裕たっぷりな様子で隙だらけだ。

 太刀が使えれば、今の間に倒せるのに。

 

「き――めた! あっしの首を絞めつけたお返しに、その首ちょん切ってやるわ!」

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