このコロニーはどこかおかしい9
中央管理室はコロニーの中心部にある。
行ったことの無い場所だったから、近くまで跳んであとは走っていく。
扉は開いている……恐る恐る入ると、ここで働いている人も不快な音で爆発したみたいで、至る所に肉片が散らばっている。
緊急時なのに放送もないし不思議だと思っていたけれど、こういうことだったのか。
始めて来た場所だからスイッチがいっぱいでどれがどれだかわからない。
そもそも、コロニーを管理する場所なのに何で他の従業員が来ないのよ?
私が知らないだけで、もしかして相当の数の人間があの音で亡くなってしまっている?
ここまで放棄して避難所に行っちゃったなんて考えられないし……。
どうしよう、破れかぶれで適当に押してみようか?
少なくても自爆スイッチなんてものはコロニーにあるはずがないし。
いや、確定では無いんだけどね。
モニターもたくさんあるし、コロニー中の監視カメラの映像が映し出されている。
その中の数台がオジサマとガールンの戦いを映している。
オジサマとガールンは互いに睨み合い、微動だにすらしていない。
オジサマには悪いけど、今はゆっくりと見ている暇は無いわ。
あら……これは……一つのモニターに目が移る。
数ある避難所の中の一つのようだ。
コロニーの住人たちが心配そうな顔をして座っている。
みんな、本当にごめんなさい……私のせいでこんな状況になってしまった。
ルイゼや学校のみんなは私のせいじゃないと言ってくれたけど、やっぱり責任は取らなくてはいけない。
責任を取らせてもらうためにもコロニーの崩壊だけは絶対に防いでみせる。
後から何と言われても良い……ルイゼからは凄く怒られるだろうけど、まずはみんながいる避難所をコロニーから切り離す……そのためにこの中央管理室に来たんだ。
ふと、思い出す……確か学校の授業で習ったわね。
緊急時の脱出装置や脱出ポッドなどの起動スイッチの色はコロニー共通……いや、全世界共通で色は黄色と決められている。
この部屋の大量のスイッチでも黄色はこの一つだけ……おそらく、これがここのコロニーの脱出装置を一斉起動できるスイッチなんだろう。
スイッチを押す前にすべてのモニターに目を通し、まだコロニー内に残されている人がいないか確認をしてみる。
コロニー内に残っているのは、オジサマと学校の保健室にいるニーニャくらいね。
二人なら私の能力でどうとでもなるわ。
ピッ
「脱出装置が起動しました。90秒後に出入口をロックします。管理室にいる方は速やかに小型ポッドにお乗りください」
よし……これでみんなは大丈夫ね。
ユーナもコロニー外壁からなら、脱出ポッドがコロニーから切り離されたことを確認できるだろうし、私はニーニャとオジサマを助けに行かなきゃ。
私のスマホに通知……ルイゼからだ。
「結城? 突然、脱出装置が起動したんだけど……何か知ってる?」
ルイゼは鋭いな……私が起動させたことを悟ったのだろう。
普通なら急に脱出ポッドが起動するなんて無いからね。
事前にコロニーの管理人たちから放送があるし……。
「ええ、私が押したわ」
「はぁ!? あんたはどうすんのさ?」
「私は……言わなくても、ルイゼならわかるでしょ?」
「能力で跳ぶつもりね? あんたのことだから、コロニーに残されている人がいないことは確認しただろうし……今のうちに伝えておくわ。脱出装置が作動したのと同時に近くのコロニーから救援が来てくれることになったわ。結城もフロンティア7へ来なさいよ」
「オッケー! こっちも用事を済ませたら行くわ」
「用事って……」
ピッ
今はまだ伝えなくて良い……この件が片付いたら改めてみんなに謝罪をする。
それにしても、フロンティア7か……このコロニーのご近所に当たるところだ。
あそこの機動隊は優秀みたいだし、宇宙遭難船など出さずにみんな助かるだろう。
よし、次はニーニャの所ね。
あ……でも、ユーナを宇宙に出したままにしておくほうが心配ね。
外壁からの戻りかたなんて知らないでしょうし……先にユーナのほうへ行こう。
ヘルメットを再び被り、ユーナの場所へ跳ぶ。
ヒュン
「ユーナ! そっちはどう?」
「ダーリン……ちょうど良いところに! 詠唱が終わって、今からぶっ放してやるわ!」
「うん、やっちゃって! お願いね、ユーナ」
ユーナが右手を外壁に触れ、魔法を放つ。
「エバーラスティングフロスト! ……ブーストォォォ!」
バチバチバチバチ!
凄い……氷壁が全長数十キロもあるコロニーを覆っていく。
右腕が義手になっただけでここまで威力が上がるなんて……それじゃ、全身を義体とかにしたらどうなるのかしら?
まぁ、アイドル活動をずっと続けるには全身義体化はいずれ必要になってくるのだけれどね。
今は生身のユーナを楽し……ごほん!
「ふぅ、どうよ!」
「これは……凄まじい威力ね……大したものだわ」
巨大な氷の塊が宇宙に浮いているみたいだ。
修理が終わったあと、この氷壁を削る作業とかのほうが辛そうだな。
ま、そんなのは管理者の仕事だし任せるしか無いわね。
費用はすべて私が出させてもらうわ……そんなので亡くなった人が生き返るわけでも無いのだけれど。
これは謝罪の一つに過ぎない。
「よし……これで自然崩壊することはなくなりそうね。それじゃ、ニーニャの場所へ戻るわよ」
「うん!」
ヒュン
学校の保健室に戻って来た。
ここからオジサマとガールンも見えるわ。
外が氷に包まていることは気付いていないようだ。
「ニーニャん、調子はどう?」
「ええ……何とか……起き上がることは……いつっ!」
「無理しなくて良いわよ。急ぐ気持ちはわかるけど」
しかし、本当に余計な時間を食わされている。
ヒメに話を聞いてから、ほぼ一日が過ぎているし……残り三日か。
これから先も神族の妨害が入ることがあるとしたら、とてもじゃ無いけど、時間が足りない。
そもそもガールンに出会ったのだって、ムスペルヘイムでなんか待ち伏せをされていたような感じだったし。
地脈の崩落も偶然だとしても、どこか作為を感じるのって……私だけかな?
向こうへ戻ったときに、ヒメからもっと情報を聞いておくべきね。
「ねぇ、ダーリン。これからどうするの?」
「ガールンをどうにかしないと安心して戻れないわ……私たちがオジサマに任せて、ここから去るのはいけないと思うし……でも、今はオジサマに賭けるしか勝算は無いのよね」
「あそこでガールンと向かい合っているおじさんって、ダーリンの知り合いなの?」
「欽治のお父様よ。欽治のお師匠さんでもあるし、さっきもガールンを圧倒していたわ」
「えっ……欽治の!? それじゃ、勝ったも同然じゃない!?」
「油断はしないほうが良いと思う。相手が神族だから、何か悪い手を思い付くかもしれないわ。ガールンがこの世界に来れたこともそうだけど、他にも気になる部分がいくつかあるのよね」
「ダリアさんの……言う通りだと……思います……ゴホッ!」
「ニーニャ、何か知っているの?」
「真実はどうか……わかりませんが……神族には……必ず……特殊な能力が……三つ以上備わって……ぐっ」
「ニーニャん、無理して話さなくていいわ」
神族には特殊能力が……?
しかも、三つですって?
「ちょ……ちょっと、ニーニャ! 何でそんな大事なこと、先に言わないのよ!」
「すみません……もっと……神族について……話しておく……べきでしたね」
「ちょっと待って……それじゃ、ガールンの龍化と異世界渡りと瞬間移動で3つってことじゃない?」
「瞬間移動は……能力だと思いますが……異世界移動……はどうなのでしょう……神龍化も……不明です……ね」
そんなの能力を隠していただけじゃないの?
こっちの世界でも能力を隠して犯罪に使う人だっているんだし。
でも、これから神族に出会ったときは必要以上に警戒しなければいけないことはよくわかったわ。
「あっ! ガールンが動いたわ!」
睨み合いも終わりか……オジサマ、お願いだから奴を倒して!





