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俺、神様になります  作者: 昼神誠
少女と神
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このコロニーはどこかおかしい7

 ガールンが勢いよく爪を振り下ろす。

 身体も動かないし……覚悟を決めた私は目を閉じる。


 シュッ!


 あれ……何も起きない?

 ……えっ……私、生きてる……のよね?

 

「よぉ、嬢ちゃん。無事かぃ?」


 オジサマ!?

 あれ、私……オジサマにお姫様抱っこされてるじゃない!?

 な、なんで……いつの間に?

 まさか、オジサマが助けてくれたの?

 

「んだぁ? おい、人間の男……貴様、誰だ? いいとこだったのによぉ!」

「いやぁ、すまない。知り合いが倒れているところを見かけたもんでねぇ。おっと、助けたらいけなかったか?」

「あへへ……別にいいさ! 人間が一匹増えようと大して変わらねぇしな。オッサンも鬼ごっこするかぁ?」

「ほぅ……ドラゴンと鬼ごっこねぇ? そりゃ、興味深い。んじゃ、どっちが鬼をするんだ? じゃんけんでもして決めるか?」

「ああ? オッサン、ふざけてんのか? 鬼は俺に決まってんだろ? あひゃひゃ! ほれ……女を連れてせいぜい逃げ回りやがれやぁ!」


 ゴゥ!


 ガールンが私とオジサマ、目がけて突撃してくる。

 しかし、オジサマは微動だにしない。

 

「はい! タッチィ! あひゃひゃひゃ、それ綺麗な赤い花火を上げやがれ!」


 ブワッ!


 タッチっていいながら、思い切り爪攻撃じゃない。

 オジサマ、真横に避けて!


 グンッ!


「ありゃ……どこへ行った?」

「嬢ちゃん、ちっとここで休んでいな。ほれ、携帯酸素だ。これを加えて少し待っていな」


 ここは学校の教室よね……コロニーの穴から放り出されないようにわざわざ校内へ、それもこの短時間に?

 窓から覗き込むとガールンとの距離はそれなりに離れている。

 いつの間にこれだけの距離を?

 まさか、オジサマも私と同系統の能力者?

 いや、そうだったら私が知っていないはずがない。


「それにしても、まさか本物のドラゴンとお目にかかれるとはな。こいつぁ、久しぶりに血がたぎるぜ……」

「オジサマ、ガールンを相手にするの?」

「おう! 欽治が倒したって言うドラゴンの強さを確かめておかないとな……次の修行の相手も決められんだろ!?」


 欽治が倒したのはモンスターのドラゴンであって、ガールンとは比べものにならないほど弱いと思うけど……どうやら、オジサマはやる気満々のようだ。

 けど、コロニーの崩壊までそんなに時間も無さそうだし。

 早く逃げたほうが良いって言おうとしたときには、すでにオジサマは私の前から立ち去っていた。


「おいおい、ドラゴンさんよ。鬼ごっこも良いが、タッチのときにその爪はあぶねぇだろ? 当たった奴は痛いだろ?」

「んぁ……あへへへ! 何、言ってんだ……おっさん! これは俺様に捕まったら死んじゃう鬼ごっこだぜ!」

「ほう、今はそんなルールの鬼ごっこがあるのか? 今どきの子は怖いなあ」


 いや、そんなわけないでしょ!

 オジサマもガールンの言うこと、真に受けないで。

 そいつは人間を何とも思っていないクズ神なのよ!

 

「よし……もし、タッチされて生きていたら俺が鬼になるってことでいいんだよな?」

「あっへへへ! いいぜ、生きていたらなぁ!」


 ブワッ!


 ガールンが何の前触れもなく右腕を横に振り、爪攻撃を仕掛けてきた。

 相変わらず不意打ちが好きな神よね。

 オジサマも避ける暇も無いのか防御姿勢に入る。

 ダメだ……それじゃ、熱風をまともに受けてしまう。


 ジュッ

 ボッ


 オジサマの着ている胴着に火が付いた。


「おわっちち!」


 ビリッ


 きゃッ……オジサマ、いきなり胴着を脱ぎ捨てないで!

 でも、上半身が凄い傷だらけだ。

 どんな修羅場を潜ってきたんだろう?


「いやぁ、ドラゴンというだけあって、そんな攻撃もかなりの熱があるみたいだな?」

「姿勢を低くして俺様の熱風を最小限に抑えたのか? だが、俺様の炎は何でも燃やすし、何でも溶かすぜ……次は本気の炎だ……おまいが溶けてなくなるかもな? あへへ」

「ふむ、燃えるのは気合だけで充分なんだが……おっし、来いや!」


 相撲取りのように四股を踏み気合を入れるオジサマ。

 まさか……また、真正面から受け止める気?

 オジサマ、無理よ!


「おらぁ、行くぜぇ! 炎龍のウィップ!」


 爪攻撃かと思ったら、全身を回転させ勢いを付けたしっぽを横に振るガールン。

 ガールンもこれでもかってくらいに相手の裏を取ってくるなぁ。

 

「はぁぁぁ!」


 オジサマは気合を入れて、防御姿勢に入る。

 

 ドゴォォォン!


 ガールンのしっぽがオジサマに当たった瞬間、凄まじい砂煙が起きる。

 だが、すぐにコロニー外へ砂煙が吸い出され晴れる。

 オジサマは無事なの?

 

「な……なん……だとっ!?」

「ふぅ……なかなか良い一撃じゃねぇか。腕がヒリヒリすらぁ……それにしても、ドラゴンは体温もかなり高いんだな? お前、風邪でも引いてんのか?」


 しっぽ攻撃を全身で受け止めて……しかも、ガールンのしっぽを思い切り掴んでいるの!?

 火傷どころじゃ済まないはずなのに……どういう理屈?

 実際に掴んでいるオジサマの手のひらのところから蒸気が出ているように見える。


「おっと、そういえば鬼ごっこだったか……すまねぇ、つい気合で受け止めてしまったぜ? んじゃ、次は俺が鬼でいいか?」

「お、お、お、おまい……本当に人間か!?」


 ガールンは気が動転しているようだ。

 そりゃ、そうだろう。

 私だって驚いている……オジサマって人間よね?

 それも私の世界の……それなら、魔法も使えないはずなのに……。

 

「おいおい、失礼なドラゴンだな……どこからどう見ても健全な人間に決まってるだろ? 俺が宇宙人とでも言いたいのか?」

「同族の神でさえ、俺様に触れると火傷になるほどの鱗だぞ!? おまいが普通の人間ごときのわけあるか!?」

「ん――、そんなこと言われてもなぁ……あ、あれだ……強いて言えば気合だ! がっははは!」

「気合でどうにかなる問題では無いわぁ!」


 グワッ


 ガールンがしっぽを強制的に振りほどき、オジサマから距離を取る。

 そして、右手を大きく天に掲げる……あの動作は衝撃波攻撃?

 今の状況であれはダメだ。

 最悪、撃った瞬間にガールンのいる部分からコロニーの崩壊が早まってしまう。


「この……人間ごときに俺様が……許さん! 炎龍のインパク……」

「おっと、そういえば俺が鬼だったな……んじゃ、こっちから行くぜ」


 ズワッ!


 早い!?

 ガールンが腕を振り下ろす瞬間にオジサマが相手の懐に入る。


「ほれ……タッチ!」


 ズガァァァン!


 なっ……ガールンが吹き飛ばされた!?

 オジサマがガールンに軽く触れたように見えたけど……。


「おっと……すまねぇ! 相手がドラゴンだから、強めにタッチしたつもりだったんだが……」

「な、何が……起こった……俺様が? 吹き飛ばされた?」


 オジサマは本当に軽めのタッチをしたつもりだったのだろう。

 ガールンに傷らしい傷は付いていない。


「次、お前が鬼だぞ。ほれ……来いや!」

「う……うるせぇ! 鬼ごっこはやめだ……やめ! おまいは跡形も残らず燃やし尽くしてやる!」

「そっか……で、次は何すんだ? かくれんぼか?」

「おまいを消すって言ってんだろぉ!」


 ニヤッ


 オジサマが嬉しそうだ。

 何か、喜ぶことでもあったの?

 ま、まさか……杏樹みたいにオジサマもドMなの!?

 それはちょっと……うん、イメージダウンね。


「それはバトルをご所望ってことで良いんだよな?」

「ごちゃごちゃうるせぇ! 炎龍のヒートレイ!」


 ジュゥ!


 熱線攻撃!?

 あんなのコロニーに当たったら、また穴が空いちゃうじゃない!?

 オジサマは避けるつもりも無いように微動だにさえしていない。

 やっぱり、杏樹みたいに……。


「おらぁぁぁ!」


 グンッ!

 ジュワッ


 ふぁっ!?

 熱線を思い切り蹴り……進行方向を曲げた?

 え……えっと……どういう原理?

 熱線がガールンの大きく開いた口に戻り飲み込んでしまう。


 ジュワッ!


「「あっちぃぃぃ!」」


 オジサマとガールンの二人とも熱線で熱そうにしている。

 ガールンが吐き出した熱線なのに、自分にとっても熱いんだ?

 オジサマは溶けた靴を脱ぎ裸足になる。


「ゲフッゲフッ……お……おまい……本当に何者なんだっ!?」

「だから、言ってんだろ……人間だって! あっ、自己紹介をしていなかったな? わりぃ……俺は佐納欽隆斎景義ってんだ」


 オジサマの名前、なんか戦国時代の人みたいに長いわね。

 でも、渋くて素敵な名前……これはポイント高いわ!


「ふ、ふざけんなっ! 人間ごときに俺様が! 龍神の力を得た俺様が負けるわけが無いんだ!」


 龍神の力って……何のことだろう?

 

「よぉし! バトルなら俺も気合入れさせてもらうぜ! ドラゴンとやり合えるなんて……くぅ! 燃えてきたぜ!」


 あっ、なるほど……さすがに欽治のお父様ね。

 同じ脳筋なんだわ。

 あのチート能力も脳筋あるあるの常識知らずってやつね?

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