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俺、神様になります  作者: 昼神誠
少女と神
118/592

このコロニーはどこかおかしい5

 ガールンの腕から出る炎によって、辺りのものが溶けていく。

 もちろん、それはコロニーの外壁も同様で、あの炎を相手にはただで済まないわけであり、ガールンの腕の下から嫌な音が聞こえ始める。


 ミシッビシッ


 おそらくガールンの炎によってコロニーの内壁の一部が柔らかくなってきているのだろう。

 この熱が外壁にまで届くと……どうなるのか考えたくもない。

 

「なかなか狭めぇな……おらっ!」


 ビシッメキメキメキ


 空間のヒビが大きくなっていく。

 ガールンが無理矢理に出ようとしているせいなんだろうけど、力づくでどうにかなるものなの?

 

 バリン


「はっはぁ! よっこらせ!」


 ガールンの左腕も空間の歪みから押し出す……両腕がこっちの世界に来てしまったら、あとはもう時間の問題でしか無い。

 それだけの穴が開いたなら人間サイズのもとの姿に戻れば、すぐに来れるのにって言うのは黙っておこう。

 ドラゴン化すると、すぐにもとの姿には戻れないのかな?

 

「ヤバいぞ……ルイゼ、どうする?」

「このまま、おめおめ逃げろって言うの!?」

「逃げたい奴は逃げやがれ! 両腕が出てきたなら、当たる確率も増えたって喜べばいいんだ!」


 学校の隣にある駐車場の車が浮き上がる。

 あれは念動力使いのアラン?

 まさか、車をぶつけるつもり?


「うぉりゃあ!」


 ブンッ!

 ドゴォォォン!


「どうだ!?」

「あぁん……今、何かしたかぁ? あひゃひゃひゃ!」


 当然だが、ガールンにはまったく効いてない。

 

「クソッ……バケモンめ!」


 ピピピピピ


 警備ロボが数体、校庭に入ってきた。

 治安を守るために警察が各コロニーに設置している無人巡回ロボだけど……まさか、あのドラゴンを何とかするつもり?

 無理なのは目に見えている。

 スタンガンで悪人を痺れさせ拘束するくらいしか武器なんて無いじゃない。

 

「おい、警備ロボを下がらせろ! 邪魔だ!」

「セットウ、オヨビ、キブツソンカイニヨリ、あらん・こーるまん、ゲンコウハンデタイホスル」

「ふぁっ!?」


 ピピピピピ

 バシュ!


「えっ、何で俺が……うわっ! アババババ……」


 警備ロボがスタンガンでアランを痺れさせ警察署へ連行された。


「アラァァァン!」


 えっと……うん、そうよね。

 他人の車をガールンに能力使ってぶつけて破壊したもんね。

 確かに窃盗及び器物損壊にあたるわね……。

 

「なんだぁ、ありゃ……何をやっている?」


 ほら……ガールンも呆気に取られてるじゃない。

 佐藤君といい、アランといい、もっと考えて行動しなさいよ。


「次はあちきの番だね! 行くよ、化け物!」


 あれはシーラ、能力はアニマルトランス。

 いろんな動物になることができる。

 創造上の動物にもなれるのが凄いのよね。

 でも、頭があまり良くないのが欠点で……何を仕出かすか心配だな。


「トランスフォォォム……チェンジ、グリフォン!」

「「うぉぉぉ! シーラ、いけぇぇぇ!」」

「あ、あいつ! シーラ、そんなものに変身してコロニーに被害を出さないでよ!」


 ルイゼは私と同じでシーラの行動を心配しているようだ。

 だってねぇ……グリフォンになってどうするっていうの?

 あの炎の中に突っ込むなんて、死にに行くようなものよ。


「いっくよ――、これで焚き火を消したことがあるんだから……そんな火なんて!」

 

 ブワッ!


 翼を思い切り羽ばたかせるシーラ。

 あれでガールンの炎を消すつもりなのね。


 バサッバサッバサッ!


「それ――! 消えろ消えろ消えろぉぉぉ!」


 凄まじい突風で校庭が砂煙で見えなくなってしまった。

 やっぱり、言わんこっちゃない……視界を悪くして相手の攻撃が見え無くなってしまったじゃない。

 

「ちょっと、シーラ、ストップ! ストォォップ!」


 ルイゼがシーラに呼びかける。


「おっと……やりすぎちった、テヘペロ」


 シーラがすぐに羽ばたくのを止める。

 間もなくして砂煙も晴れてきた。


「グリフォンか……そっちにもいたなんてな? だが、無駄だ」


 すぐにガールンのほうを見るが、もちろん何とも無い。

 いや……それよりも……。


 ピピピピピ


「また、警備ロボ!? 何でだ?」

「あ……あちきは何もやって無いよ!」


 やっぱり、頭が悪いのは相変わらずね……シーラ。


「シーラ・ロンカイネン、ホウカ、オヨビ、キブツソンカイニヨリゲンコウハンデタイホスル」

「放火? そんなのしていないって!」


 風が吹き去った方向を見ると、炎があちらこちらに広がっている。

 どうやら風で飛び火したようだ。

 う――ん……シーラ……アウトぉぉぉ!


「おい、おまいら……馬鹿ばかりか?」


 もう、ガールンがルイゼたちを憐れむような眼で見ているじゃん。

 ダメだわ、とてもじゃないがガールンとまともに対抗できる能力者がいない。

 

 ペキッパキパキパキ


「んぁ? 何だぁ、この地面」

「お、おい……マズいんじゃないか?」


 ガールンの熱でコロニーの内壁外壁ともに限界が近いようだ。

 すでにガールンの手が付いている地面は大きく凹んでおり、いつ外壁が変形してしまい空気が漏れてしまってもおかしくない。


「みんな、ここから離れるよ!」

「「お、おぅ!」」


 ルイゼの判断は正しい。

 もしコロニーに穴が開いてしまったら、校庭に出ている生徒たちが真っ先に宇宙空間に放り出されてしまう。

 そうだ……危険な賭けだけどガールンを宇宙空間に放り出すことはできないかしら?

 空気のないところで宇宙服も無しに生きていられるわけがない。

 でも、それってコロニーに穴が開いてしまったときくらいね。

 それにまだ空の歪みから完全に出て来れないみたいだし、宇宙空間に放り出すのは最悪の場合だ。


「ダーリン、あの変な音いつの間にか無くなってない?」

「確かに聞こえないわね」


 人を破裂させる不快な音が聞こえない。

 耳を澄ましてまで聞くつもりは無いけど、ガールンも歪みから出るのに必死で忘れているのかしら?

 

「ガールンが音を出していないからじゃない?」

「え……ダーリン、何を言ってるの? あいつじゃ無いわよ」

「あいつじゃ無いってどういうこと?」

「破裂してしまった人たちから感じたのはディーテの魔力よ」

「ディーテですって? もしかして……ホスピリパの病院にいた?」

「うん、ゼウス様の子孫の女神……でも、音が聞こえないって言うことは向こうの世界へ戻ったのかしら?」


 どういうことなの……最悪な場合、少なくともここに二人の神族がいるってこと?

 冗談じゃ無いわよ……ガールンを相手にするだけでも勝ち目なんて無いのに。


 パリンパリン、バリィィィン!


「あっひゃひゃひゃ! やぁっと、出れたぜ……さぁ、鬼ごっこの続きと行こうかぁ」


 空に大きな穴が空き、ガールンが這い出てきた。

 穴の向こう側はあっちの世界の景色?

 あれって、首都グレンじゃないの?

 どうして、アルス大陸の一部が……今は考えていてもわからないか。


 ペキペキペキ、ガコン


「んぁ……本当に変わった地面だな? まぁ、いい……そこの雑魚共、これでも喰らえや! 炎龍のぉインパクトォォォ!」


 ヘルヘイムで見た衝撃!?

 そんなの今ここで放ったら……。


 ドゴォォォン

 ビュゥゥゥ


「うぉ……何じゃこりゃぁぁ!」


 ガールンの炎で柔らかく、変形しつつあったコロニーの外壁に、追い打ちをかけるかのようなガールンの攻撃で、コロニーに巨大な穴が空いてしまう。

 ガールンの大きい図体がいとも簡単に宇宙空間に放り出されてしまった。


「きゃぁぁぁ!」

「機動隊はまだなの!」

「あんなのHBMの粘着弾でも防げるのか!?」


 ベキベキベキ

 ドゴゥ!


 コロニーに空いた穴の付近の何もかもが宇宙空間に放り出されていく。

 ルイゼたちは近くにある体育館内に入るところが確認できたし、あそこから地下通路で避難所に繋がっていたはずだ。

 

「お、おい! 内壁が剥がれているぞ!」

「に、逃げろぉぉぉ!」

「う、うわぁぁぁ! 助けてくれぇぇぇ!」


 ガールンの熱で金属部分が緩くなっていたのか、穴の付近の内壁が剥がれ宇宙に放り出される。

 このままじゃ、学校にいても危険ね……野次馬の一般人が何人か宇宙空間に放り出されてしまった。

 無事なわけ……無いよね?

 また、被害者を出してしまった……これも私のせいだ。


 ピピッ


 ルイゼから渡された通信機からルイゼの声が聞こえる。


「結城! あんたたちも早く避難所に行きなさい!」

「でも、ルイゼたちは!?」

「避難所に着いたわ。他のみんなもいる」

「わかったわ。ここにいる負傷者たちをなんとかしてから私も避難所に向かう」

「ああ、無理するなよ!」


 ルイゼたちは無事に避難所へ着いたようだ。

 あそこはそのまま脱出艇になっているし、もしものことがあっても大丈夫だろう。

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