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俺、神様になります  作者: 昼神誠
少女と神
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このコロニーはどこかおかしい1

 ガールンの開いた口の奥に炎の塊があるのが見える。

 徐々に大きくなっていく様子がここからでもわかる。


「あれがブレスなら貯め時間がそれなりにあるはず! ニーニャを助けて、ここから逃げるわよ!」

「わかったわ……ダーリン!」


 ヒュン


 ニーニャの傍まで移動する。

 マグマがかなり近付いているためか、暑すぎる。

 

「ニーニャ、大丈夫!?」

「……はぁ……はぁ……」


 ダメだ……意識が朦朧としているのか返事が無い。

 逃げるとしてもどこへ行く?

 ニーニャの傷やユーナの腕も治療しないと無理だ。

 だからと言って、ガールンの移動術の正体がわからない。

 単に信じられないほどの高速移動でも、居場所が把握されていてはすぐに追いつかれる。

 

「あっひゃひゃひゃ! この世界の果てに逃げても一瞬で追いつくぞ! おまいらはもうどこにも逃げられないんだぜ!」


 ガールンが直接、心に話しかけてくる。

 ブレスの貯め時間中は口を動かせないから?

 でも、この世界ね……良いことを聞いたわ。

 

「だったら、追って来なさい……私に付いて来れるならね!」


 ヒュン


「あひゃひゃ、無駄無駄! すぐに見つけ……んん? 気配を……感じないだと?」


 ヒュン


「ふぅ……まさか、こんな感じで帰ってくるなんてね」

「ダーリン……ここって……」

「ユーナも知ってる所よ。それよりは急いで病院へ行かないと! ユーナもニーニャも重傷者なんだからね」


 さて……もう一回跳ばないと行けないわね。

 体力が無いときに、異世界間移動は辛いものがあるわね。

 私も気を抜くと、意識を一気に持っていかれちゃいそうだ。

 病院っていってもたくさんあるからな……ニーニャの姿を見て騒がれるのも嫌だし。

 やっぱり、あそこしかないか。


「物音がするから来てみたら、お……お嬢様。お嬢様ではありませんか!」


 やばっ、見つかっちゃた。

 

「あっ……キャメロットさん? えっ……それなら、ここってダーリンの実家じゃないの!?」


 そう、ガールンが世界の果てまで逃げてもすぐに追いつけるのなら、私の世界に来れば良いだけなのだ。

 でも、これは一時しのぎでしかない。

 目的の場所はユーナの世界のミャク島だし、期間は4日程度しかないし、正直どうすればいいのか頭が混乱している。

 でも、今すべきことはユーナの腕とニーニャの治療だ。

 

「キャメロット! 今は時間が無いの……何も聞かないでモナ先生を呼んでもらえるかしら?」


 キャメロットは私の家で働く家政婦だ。

 顔を合わせるとネチネチとお説教されるだろうから、見つかりたくは無かったのだけれど、今は逆に良かったのかもしれない。

 獣人のニーニャを人前に晒すのも嫌だったし、下手に能力研究員に見つかるとニーニャの命に関わることにもなるかもしれない。

 今でさえ、能力者は異端視されているし、異世界の獣人でエルフでもあるニーニャなんて研究員からすれば、極上の研究対象になってしまう。

 

「ユーナ様、どうしたのですか……その腕は……酷い。それにそこの猫耳? あの、コスプレの方ですか?」

「後で説明するから、モナ先生を呼んで!」

「わ……わかりました」


 ニーニャを私のベッドで寝かし、ユーナと一緒にモナ先生を待つ。

 

「それにしても懐かしいわ。ダーリンの部屋に来たのって、これで3度目くらいよね」

「ま……私たちも各地でライブをやっていたからね。高校に入ってからは実家よりホテルのほうが多いくらいよ」

「それにしてもよく考えたわね。あの場を切り抜けるなんて、さすがダーリンよね」

「問題を先送りにしたに過ぎないわ。ユーナもその腕をなんとかしないと細菌感染とかされちゃ困るからね。それにニーニャの命を最優先に考えただけよ」

「そうね……ニーニャ、大丈夫かしら?」


 ユーナがニーニャにヒールをかけながら、名前を呼び続けるが返事は無い。

 呼吸が荒いわね。

 そりゃそうだ、この爪で切り裂いたような傷に酷い火傷。

 普通の人間なら即死していてもおかしくない。

 エルフの生命力のおかげなのかもね。

 

 コンコン


「お嬢様、モナ先生をお呼びしました」

「ありがとう、入ってもらって」


 ガチャ


 モナ先生……私にアイドル活動のきっかけを与えてくれた恩師だ。

 最年少で医療免許を取ったことで一躍有名になった私と同年齢の女医なのよ。

 彼女との出会いは私が12歳のころまで遡る。

 幼い頃、世界の至る所で起こる戦争や紛争で、困窮している人々がいるということを知った私は、興味本位だけで能力を使い実際に現地に赴いたことがあった。

 その際にゲリラ部隊の一員だと間違われ、銃撃戦に巻き込まれてしまったのだ。

 すぐに跳んで逃げれば良かったのに、恐怖で身体が動かず何もできずに泣くことしかできなかった。

 そのときに医療救済の一員としてやって来ていたモナ先生に助けてもらったのが、今後の私を決めたと言っても過言ではない。

 

「どうも、お久しぶりですね。ダリアさん」

「先生、ご無沙汰しております。えっと……急に呼んでしまってごめんなさい」

「ええ、わかってますよ。貴女は変わりないようで安心しました。まずはユーナさんから診せて貰いますね」


 ユーナは私の世界でも有名になったからな。

 モナ先生にも名前を覚えて貰えていて嬉しいわ。

 そうだ……ユーナの吹き飛んだ腕は見つけることができなかったのよね。


「ふむ……壊死はまだ始まっていないようですね。ユーナさん痛みは?」

「麻痺しているのか何も感じなくなっているの……先生、私の腕治る?」

「そうですね……義手しかありませんね」


 やっぱり……そうなるわよね。

 でも、ユーナの世界と比べて医学や科学では次元が違うのよ。

 今では義体なんてものまであるんですから。


「義手……それって、どういうものなの?」


 ユーナは心配な表情をしている。


「大丈夫よ、ユーナ。腕はもとより手や指もいつもと変わらず動かせるようになるってことよ」

「そうなの? よ、良かった……」

「では、決定ですね。義手は3Dプリンターですぐにできます。あとは脳内ネットワークの再構築など必要ですので、ユーナさんには私の病院まで後で来てもらうとしましょう」

「ええ、わかったわ。それで、先生」

「こちらの女性ですか……かなり酷いですね。これは何か大きな動物の爪痕でしょうか?」


 さすが、モナ先生だ。

 傷口を診ただけで爪痕っていうのがわかるし、何よりニーニャの姿を見ても特に驚いていない。

 

「先に輸血が必要ですね。彼女の血液型は?」

「えっ……わからないわ。それに人間と同じでは無いかもしれないし」

「ふむ……少し見てみましょう」


 モナ先生はカバンからいろいろな機材を取り出し、ニーニャの血を少し接取した。

 よくわからない画面がモナ先生の眼前に映し出される。


「先生、私にも何かできることは無い?」

「無いですよ」


 即答されてしまった。

 さらに隙ありとばかりにキャメロットが私に問いかける。


「お嬢様、それでは学校へ行って来てはどうですか? 来年は高校3年……担任の先生も進路相談をしたいとわざわざ訪問して下さいましたよ」


 え――、学校?

 今はそれどころじゃないし、進路なんてすでにアイドルっていう仕事に就いている私には必要無いでしょ?

 

「すぐには終わらないのでダリアさん、行って来たらどうですか? きっと、お友達も会いたがっていますよ。勉学は後からでもどうとでもなりますが、友人は後の人生で重要な支えとなってくれます。一度、顔を見せに行くのもどうですか?」

「先生がそう言うなら……」

「ふふっ、安心してください。こちらの女性も輸血の件は問題無くなりましたし、傷口も治療で完治できます」

「ほんとっ!? それじゃ、ユーナ。後はモナ先生の言う事を聞いて腕を治してね。私もすぐに帰ってくるから」

「うん、わかった。ダーリンも気を付けて行ってきてね」


 制服に着替え、学校へ跳ぶとしよう。

 今って五限目が始まったばかりね。

 教室に跳ぶと授業の邪魔だろうし、先に職員室でいいかしら?

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