『令和狂い』
『令和狂い』
㈠
今年の一番の驚きは、元号が変わったという事だったかもしれない。我々は、元号の変容という時代の境目に生きていることを、不思議と実感しないが、人々は、その無実感を超えて、令和という言葉に狂っている様だ。出典は『万葉集』だとする、令和は、如何にも文学的である。
㈡
この令和に置いて、自分が今狂っているのは、令和元年の文字の入った小銭である。五百円、百円、十円の、令和元年の言葉の入った小銭を、只管集めているのである。将来価値を持つかもしれないという魂胆からだが、どうにもこの収集狂いは、流通の始まった今年一杯は止みそうにない。
㈢
すごいことだな、と思うのである。元号の変容によって、小銭の印字までが変わるということに。しかも、一年ではなく、元年という言葉である。普通は、数字であるのに、初年度だけは、元年という言葉である。来年になっても元年は流通するだろうが、まずは、来年になるまでのあと少し、令和の小銭に狂っていたい。