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ネクラ君は見えるらしい  作者: たかしろひと
第1章 旅館
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旅館の現状

「み、見えた。一瞬だけど見えちゃった。な、なんか変なものが」


「ま、まじかよ……」


「ネクラ君、あれって」


僕は肩をすくめる。


「この旅館、そこらじゅうにいますよ。あれは意識すると見えちゃう類のあれです」


 三人はお互いに顔を見合わせる。


「ね、ねぇ。ネクラ君? ネクラ君て霊的なものを感じる体質とかそういうこと?」


 七崎先輩の問いに僕は頷いた。冷静な表情とは裏腹に顔が青い。


「実家がお寺なのでその影響かと思います」


「初耳だぞ、おい」


 大学では誰にも言ってないから当然だ。


「藤嶺君、あの。どうにかならない? お、お札を張れば部屋に入ってこないとかできるんでしょ?」


 簡単に言ってくれるけど、お札は常備してない。


「白い紙とペンがあれば簡単なものは作れるだろうけど」


 すると七崎先輩も僕の前に膝まづいた。


「ネクラ君、あたしからもお願いするわ」


「頼む、霊感少年。なんとかしてくれ」


 部長まで手を合わせてお願い、のポーズ。いや、部長は自業自得だと思うけど。


「ああ、はい。わかりましたよ。なんとかしてみます」


 クーラーの効いた旅館内に戻れるチャンスだ。

 僕はゆっくりと立ち上がって、


「じゃあ、行きましょう」


「待ってくれ。中に入ってるって、他の連中に言ってくるわ」


 部長は慌てた様子でバーベキュー組の方へと駆けていった。これ以上、事を大きくしたくないのだろう。



 数分後。

 僕は佐竹、部長、七崎先輩と共に旅館内にいた。まずは女子二人の部屋の様子を見るべくエレベーターへ乗り、三階へ。

 やっぱりクーラーは最高だな。ただし右手に佐竹、左手に七崎先輩が引っ付いていなければな。殺人的に暑苦しい。


「別に逃げたりしないので離れてもらえませんか」


 時々、人間の温もりが気持ち悪くなる。今は夏で肌と肌が触れ合うので余計に。


「そ、そうだよね。七崎先輩、部長を掴んだ方がいいんじゃないですか?」


「水果こそ」


 部長はなんか羨ましそうに指をくわえている。代わってもらいたいくらいなんだけど。


「佐竹、俺の胸に飛び込んできてもいいんだぜ?」


腕を広げ、爽やかな笑顔を見せる部長である。


「大丈夫です」


「即答っ、しかも、目すら合わせてくれないのか!?」


 二人に両腕を掴まれたまま、エレベーターを降りる。

 と、そこで丁度、小太りでポロシャツを着た男性に出くわした。


「おや、君達。バーベキューはもう良いのかい?」


 にこにこと笑いながら問いかけてくる彼はこの旅館のオーナーだ。出迎えてくれた時も思ったけど、穏和そうな人だな。


「どもっす。ちっとこいつらが着替えるってんで、俺らも忘れ物を取りに」


「そうかい。ゆっくりしていってね」


 エレベーターに乗り込んだオーナーは終始笑顔で手を振っていた。


「!」


 その瞬間、凄まじい悪寒を覚え、後ろを振り返る。


「……」


 これは紛れもなく殺気だった。包丁を手に持った強盗犯と対峙した時のような感覚だろうか。まあ、そんな経験はないんだけど。

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