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ネクラ君は見えるらしい  作者: たかしろひと
第2章 霊感少女
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萩山永遠

 境内の階段のところに腰をかけた僕は萩山の話を聞くことにした。


「私、空気なんです」


「空気?」


「学校ではいじめの対象にすらなりません。いてもいなくても一緒です。バイトでは仕事が遅くて悪目立ちしてますけど……」


 うつむいた萩山の表情は虚ろだった。


「でも、霊感があるって言っただけで人が集まって来るんです。学校でも、バイト先でも。はるこさん……さっきの霊に協力してもらえば、信じ込ませるのは簡単でした。そしたら凄い凄いって言われて。特別な人間になった気がしました」


 それで、あのはるこさんとやらは最後に萩山を食おうとしてたわけか。

 萩山は続けて、仲の良い友人は一人もいないと語った。共働きの両親とは一ヶ月会っていないという。一人ぼっちなんだな。

 それにしても特別か。小さい頃はともかく、僕や萩山くらいの年齢になると、羨望の眼差しが強くなるのだろう。


「事情はわかった。でもやめた方がいい。そういうことをしてると、質の悪いのが寄ってくる」


「そうですね……。はい。止めます。……」


 そうは言うものの、萩山は落ち込んだ様子だった。


「どうして、ネクラさんは言わないんですか」


「ん?」


「霊感があるって。ばかにしてる人達を見返せるじゃないですか。それに私の時も言いませんでしたよね」


「聞かれたら答える。でも、誰かに言うことではないと思ってるからな」


 萩山は再びうつむいた。僕が羨ましいんだろうか。良いことなんてないけどな。


「相談くらいなら、乗ってもいい」


「…………え!?」


 僕を見る萩山。


「つまり、相談相手がいなかったんだろ。解決出来るかはともかく悩みは聞いてやるよ」


 こういうのは慣れている。霊でも人間でも。


「えっと、あの……や、優しいんですね」


 戸惑っているようだが、僕は立ち上がった。


「暗くなる前に帰ろう」


「は、はいっ」


 帰路、僕達は言葉をかわさなかった。




 三日後、夏休みに入っていた。補習も回避したのでバイトざんまいの毎日だ。

 その日、バイト先の裏口でばったり、萩山と会った。あれからシフトが合わず、たまに合っても忙しく、会話する機会がなかったのだが。


「あ、おはようございます」


「ああ」


 萩山はタートルネックのノースリーブを着ていた。


「この服、新しく買ったんです。中々はるこさんの手のあとが消えなくて」


 霊障だから、二週間近くかかるだろう。気の毒だが。


「藤嶺さん、今度あの時のお礼をさせて下さい」


 萩山はスッキリとした顔で笑った。


「何か奢りますよ。そうだ、悩み聞いてくれるんですよね」


 それは約束だ。もちろん。


「ふふ。決まりですね! 後でまたお話しましょう」


 萩山はご機嫌な様子で中へ入って行った。

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― 新着の感想 ―
[一言] むしろチャラ男パイセンが無事なのか(笑)
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