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ありがチュウ

「お~い誰か~・・・」


 鉄格子(てつごうし)の隙間からダメもとで助けを呼んでみる。しかし当然こんな薄暗い地下空間に助けなど来ない。


 こんなことになるなら、オヤジ殿なんか気にせずにもっとモフモフしておけば良かった。まさかあそこまで聞く耳を持たないとは。


「ハア~、ついてね~な~」


 どうすっかな~、こんな豚小屋から脱出するのは簡単だが、、、



 そんなことを思っていると、ふと後ろから視線を感じた。振り向くとそこにいたのは、全身黒マントを羽織った謎の人物。


 もちろん、この豚小屋に入れられた時にその存在は確認したが、その時はジッと座り込み何の反応も見せなかった。それが今では、目深(まぶか)(かぶ)ったフードの影から明らかにこちらを見ている。


 ここにいる時点で犯罪者の可能性が高いし、不気味過ぎておちっこちびりそう。


「あ、どうも。」

「・・・。」


 勇気を振り絞り挨拶だけしておいたが返事が無い。やはり関わってはいけない人なのだと思い、出来るだけ距離を取って地面に座り込む。背中越しに視線だけ感じるので、何とも居心地が悪かったが仕方あるまい。これからのことを真剣に考えようと目をつぶる。


「・・・う・・・あ・・・・。」


 すると声にならない吐息が室内に響いた。


「え?」


 気になって再び後ろを振り向くと、謎の人物がゆっくりとマントをとった。


「!?」


 首輪付きのまさかの女!?・・・・いやそんなことよりも左目と右足が潰れ、のどを怪我している。一目(ひとめ)で重傷だと分かる。(ほどこ)されているのは最低限の治療だけだろう。こんな衛生状態が悪そうなところでは、何かの感染症で死んでしまうのではないだろうか・・・


「おい!大丈夫か!?」

「あ・・・・・あ・・」


 再び声にならない吐息が漏れる。


「もしかしてのどを怪我して喋れないのか?」


 すると彼女がコクンと頷いた。


 むむむ。一体誰がこんなひどいことを!


 急いで治療をしようと魔力を込めた。しかしその時、


 ガチャン


 と扉の開く音が聞こえた。


「ん?」


 カツカツとこちらに近づいてくる。獣国の兵士だ。お盆に皿が乗っていることを考えると俺達の食事を持ってきてくれたのだろう。無言のまま鉄格子(てつごうし)の小窓から皿を中に入れてくる。


「おい?食事はありがたいんだが、もっとちゃんとこの少女の治療をしてやってくれないか?このままでは感染症で死んでしまうぞ?」


「ふん。どこぞの王なのか知らないが、この国のことを知らないなら、あまり口を出さないことをおススメする。そいつは反体制派の戦士だ。そんな奴を治療する材料があるぐらいなら、仲間を治療するに決まっている。」


「え?材料って・・・」


 どういうことだ?俺みたいに生命力による魔法は使えないにしても、魔力を使えばもう少しマシな状態にできると思うんだが、、、魔力なんて寝れば回復するだろうし・・・意味がよく分からず首を(かし)げる。


 すると、俺の様子を見て、それまで冷静だった獣人が吠えた。


「もしかして獣人をバカにしているのか?これだから人間は!確かに俺達は、ほとんど魔法を使うことは出来ないが、戦闘力なら人間にも劣ってなどいない!」



 ・・・んん?


「え?魔法使えないの??・・・でもシンディーは普通に使っているじゃないか??」

「それは特異体質だからだろうが!ふん!」


 どうやら怒らしてしまったようだ。それだけ言うとプリプリしながら帰ってしまった。


 彼が言うように獣人があまり魔法を使えないのだとしたら・・・シンディーがわざわざ他国の魔法学校に留学していたのも頷ける。自国では魔法を教えられる者がいなかったのだろう。


 回復手段も薬草から作るポーションに頼っているのかもしれない。だとすれば、そんな貴重な物を敵対勢力の人間に使うわけがない。


 俺が助けないと彼女はこのまま薄暗い空間で死ぬのを待つだけだろう。・・・まあもっとも助けたところで、彼女がここを出られることは無さそうだが、、、


 ここで巡り合ったのも何かの(えん)。せめて傷だけでも治してやろう。


「ちょっとジッとしててくれ。」


 コクリ。


「再生!」


 生命力を使い、左目、右脚、のどを治してやる。水魔法と生活魔法で綺麗にしてやったのはちょっとしたサービスだ。女の子だからな。


「あ、あ、あ」


 せっかく綺麗にしてやったのに、ポロポロと流れる涙と鼻水で、彼女の顔は再びグチャグチャになってしまった。


「しゃ・・・べ・・れる。・・・うぅ・・う・・うわあぁぁぁぁぁぁぁん!!」


「お、おい、汚れるから抱きつくなって!」


「うわあああああああああああんんんん!」


 はあ~・・・




 それから、彼女が落ち着いたのはしばらく経ってからだった。俺の胸に、ベッタリと自分の鼻水が付いているのに気が付いて、我に返ったようだ。



「ご、ごめんなさい。」


「・・・まあ、別にいいけど。君も獣人なんだよね?」


「うん!ありがチュウ!」


 そう言いながら、なぜか彼女は俺のぽっぺたにキスをしてきた。


感想、ブックマークありがとうございます!!やる気になります!


なんとか頑張っております!

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