設置魔法
校長に呼び出されてから1週間が経った。あの時は本当に絶体絶命、もうダメぽって思ったけど、なぜか終わってみれば、何のペナルティーをもらうことも無く、むしろあれから毎月の奨学金が大金貨2枚から大金貨3枚へと変わっちゃったのだ。つまり日本円で30万ほどだ。えへへ///
冒険者ギルドからも毎月大金貨2枚支給されているから、なにもせずとも毎月50万が俺の懐に入ってくる。日本にいた頃には考えられなかった夢の不労所得だ。まあ家賃が10万だから実際は40万しか残らないけど、それでも破格の生活だよね!
ああ、ちなみに特待生クラスの奴は、俺を除く上位4名が授業料全額免除で、残りは一部免除になるだけらしい。つまり奨学金が支給されているのは俺だけってわけ。
「レオ?どうかしたのか?」
「ん?いやどうもしてないぞ。」
休み時間ごとに、俺の膝の上にフードを被った女みたいな少年・ダックスが座るようになってしまった。まあ背も低く小動物みたいにかわいいので何となくオッケイだ。他の生徒だったら間違いなくぶん殴ってるけど、キャラって大事だよね。
ってアレ?シェイクが俺の事を睨んでないか?んんん?ダックスが膝の上に座ってからか?なんで??よく分かんないけどまあアイツはスルーでいっか。
「休み時間そろそろ終わるし自分の席に戻るか?」
次の授業は魔術理論という授業らしい。1年生なので時間割の科目欄には初級とついている。
「うん。」
ダックスが立ち上がるのと同時に気の弱そうな教師が入ってきた。色白でずっと太陽の光を浴びてないんじゃないの?って感じの人。なぜか右脚と右手が同時に出ているけど・・・何に対して緊張しているのだろうか?・・・見てるこっちが心配になっちゃうよね。
・・・あれ?
なぜか俺と目が合うと「ヒっ」と言って体をビクつかせたぞ。ということは、あの人の緊張の原因はもしかして俺なのか?いやいやいや今のたまたまだよね?確かに入学初日に闘技場をぶっ壊したり、100人の部下が出来たりしたけど、逆にいったらそれだけだし・・・
「わ、私は魔術理論担当のネルソンと、も、申します。1年間よろしくお、お願いします。」
分かった!おそらくもとから対人関係が苦手な根っからの研究者タイプなんだよ、きっと。だっていくらなんでも不良学校に勤めてる先生が、16歳の新入生にビビるなんてあるわけないもんね。
「「よろしくお願いします。」」
「ま、魔術理論とは、もちろん魔法を使う際の理論を理解するためのものですね。もちろん魔力が上手く練れるかも大事ですが、魔力練度は大して個人差が無いことを考えると、魔術理論の理解度によって魔法の威力も精度も大きく異なるわけですから、と、とても大切な魔法の根幹とも言うべきものです。」
「え?」
「ヒっ」
「あ、いや、なんでもありません。」
俺は魔法の理論など何一つ知らずに魔法を使っているんだけど・・どういうことだ!?魔法は全部イメージが大事なんじゃないのか?それに威力や精度なんて上手く魔力を練れるかどうかで決まるだろ?
ん~そういえば昔ママンが魔術理論とか詠唱がうんぬん言ってたような気もするけど・・・思い出せないな。
「い、一番簡単なファイアーボールの理論なら皆さんも知っていると思いますが、書き出してみるとこうなるわけですね。」
そう言ってネルソン先生はスラスラと黒板に文字を書いていった。ザッと細かな字で5行ほど書かれている。もしかしてこれ覚えないといけないのかな??
「この理論を簡潔にしたのがみなさんご存じの詠唱ですね。」
「え?」
「ヒっ」
「あ、いやなんでもありません。」
ていうかいちいち「ヒッ」って言うなしwwwww
今の話が本当だとするならば魔法一つ一つにあれ以上の長ったらしい理論があって、詠唱文があるということだ。・・・・意味が分からない。
「なあ?普通魔法ってイメージだけで使えるよな?」
隣の席のルークに小声で尋ねてみた。しかし帰ってきた返答は俺の予想に反するものだった。
「何言ってるんだ??そんなわけないじゃないか。魔術理論を理解して詠唱文を唱えなきゃいけないに決まってる・・・・ん?・・あれ?そういえばレオナルドって・・・詠唱してたっけ?」
「・・・お、おう。してるしてる!めっちゃしてるよ!」
理由はよく分からないけど、どうやら俺がイメージだけで魔法が使えることは内緒にしておいた方がいいみたいだ。もし一つも詠唱文を知らないなんてバレてしまったらめちゃくちゃアホだと思われてしまうに違いない!あっぶなかった~。不用意に質問とかしない方がいいな、これは。
「ただですね、いつもいつも詠唱しているのでは効率が悪いという場合も出てくるわけでして・・・たとえば防衛戦の時ですね。敵が攻めてきてから詠唱を開始するのではなくて、あらかじめ詠唱した魔法を設置しておいた方が良いと。」
ふむふむ、確かにね。防衛戦で何も準備してなかったらけっこう間抜けな軍になっちゃうよね。
「研究の初期段階では、詠唱文をそのまま書いて使っていたんですが、これでは文字が読める人間なら誰でも分かってしまうという欠点がありました。しかも、高等魔法になればなるほど長ったらしくなるので、長い年月をかけて人類の英知を集めて図にしていったわけです。それがみなさんご存じの魔法陣ですね。つまり詠唱文=魔法陣ですね。」
ほえ~。頭のいい人が考えることはよく分からんな~。日本で言ったらめっちゃ数学好きな人、みたいなかんじ?俺なんて数学どころか、小学5年の算数で諦めたけどね!
「魔法を発動させるには詠唱文、つまり魔法陣と魔力の2つがいる。詠唱文を書いても魔力が無ければ発動しません。逆に魔力があっても詠唱文を知らなければ魔法は発動しません。設置魔法はこの性質を利用し、意図的に完成させないことで、魔法を留め置いているわけですね。ちゃんとした人が設置さえすれば、魔力を流し込むだけで誰でも利用可能ですから大きな戦力となります。」
ふむふむ。話を聞く限り確かにかなり有用だ。魔法を設置するという発想は今までの俺には無かった。これは絶対に習得する必要があるぞ!なによりプロってかんじでカッコいい。
設置型の魔法を使うには、まず設置したい場所を指定してその縁をグルリと囲い込むように魔力を流し込む必要があるらしい。ここまでが基本で、その上に魔法陣かもしくは長ったるい詠唱文を書かなければならない。
聞いたら即実行というわけで、試しに、机の上に丸く魔力を流し込み範囲を指定してみる。するとキラキラと輝く光の環が出来上がった。
ここまではいいのだが、そもそも魔術理論をまったく理解していない俺が詠唱文を書いても設置魔法として完成しないだろうし、魔法陣を描いてみたところで同じだろう。
だとしたらイメージで魔法を使っている俺が設置するにはどうすればいいのだろうか?頭の中の画をそのまま込めろと言われても俺の内部的なものなわけで・・・・体の外に留め置く方法が分からない。
普通は詠唱文が魔力と切り離されて未完成がゆえ、留め置くことになるらしいけど・・・つまり俺が体の外に魔法を留め置くには、俺のイメージを具現化したものが必要ということか
・・・イメージ・・・図?・・・文字?
「!?」
もしかして漢字が使える!?
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もうすぐゴールデンウィーク終わりますね。あっという間ですね~。