1年生に囲まれる
・・・おかしい、なぜこんなにもいっぱい見物人がいるんだ。特待生クラスの人間が見るのは分かるが、ザッと100人以上いるのではないだろうか。というか新1年生はほぼ全員いる。
「ハッハッハッハ、どうした?ちょっと声をかけたらみんな集まってくれたぞ。さすが底辺学校だ。野次馬根性が素晴らしいな。」
やはりこれだけの人数が集まったのはシェイクスの仕業だったか。つくづく性格の悪い奴だ。生で見れる決闘は男にとって燃えるものがあるのだろうか。
「ビビってるくせになに澄ました顔してんだ!今から大勢のギャラリーの前でお前の化けの皮を剥がしてやるよ。インチキしてましたって白状するなら今の内だぞ。」
「いや~インチキなんて何もしてないしな。」
本当になぜコイツはこんなにも突っかかってくるのだろうか?
「ハッだったらもういい。ルールはどっちかが負けを認めるか気絶するまで、攻撃手段は何でもアリだ。」
「うん。」
審判はいないのでお互いに向き合い、小銀貨を指ではじいて地面に落ちた瞬間に開始する。
開始とともにシェイクスは詠唱をはじめた。正直隙だらけなのだがどうしたものか?冒険者ギルドでモブソンさんと模擬試合をした時は、魔法をほぼ何も使わなかったので決闘の仕方がよく分からない。魔法の詠唱中に攻撃するのはマナー違反なのだろうか・・・・
そんなことを考えているとシェイクスの詠唱が終わったようだ。
「ふっビビッて何もできないのか?それならそれで無様にこれでも食らいやがれ!」
シュポっ!
ファイアーボールが飛んできた・・・・のだが・・・うむ。入試の時と何ら変わりのない球だ。これにタネも仕掛けも無いとするならば、避けるまでも無いような・・・いやもしかすると能ある鷹は爪を隠すってやつだろうか?いや・・・やはりただのファイアーボールっぽいな。
「えい。」
地面から一歩も動くことなく炎に向けて軽くパンチを放った。
ボフウゥ!
一瞬にして炎の塊が掻き消えた。もちろん俺の拳はかすり傷一つついていない。
「ハッハッハッハ!・・・・・え・・」
直撃したと思って高笑いをしていたシェイクスはひょっとこのような顔になった。
「・・・オ、俺の魔法にな、なにをしやがった!?」
「・・・パンチしただけだけど。」
「ふざけんな!そんなことできるわけないだろ!」
ザワザワザワ
会場の野次馬たちも直撃したと思ったのだろう。俺に傷一つないと分かって動揺が広がった。
「どういうことだ?今のファイアーボールは完璧じゃなかったか?」
「ああ、さすが特待生の魔法だと・・・」
「でもなんでアイツ無傷なんだ?」
ザワザワ
「またインチキしやがったな!くらいやがれ!」
「いや、、そんなのする時間が無かったのはお前が一番知ってるだろ?」
「うるせ~!」
シュポ、シュポ、シュポ!
うむ、今度は開き直りやがった。本当にどうしようもない奴だ。俺にとっては蝋燭の火と大して変わらないんだが・・・本気でやっているのだろうか?それとも余興のつもりなのか?分からない。余興ってことでいいのかな、それなら良いことを思い付いた。
「光魔法、反射!」
俺とシェイクスの間に光の壁を出現させた。もちろん詠唱などしない。頭の中で魔法のイメージをするだけだ。名前の通りこの壁に触れた魔法や物理攻撃をそっくりそのまま反射させる。
シェイクスが打ち出した火球も壁に触れた瞬間ズズズっと吸い込まれ、コンマ零秒で向きを180度変え飛んで行った。
シュポ!シュポ!シュポ!
「な、な、何をしやがった!なんだその魔法は!」
どうだ?これなら余興にちょうどいい魔法だろう。
「ギャアーーーー!!あちちちっ!」
あれ?なんでアイツ避けないんだ?足でも怪我してるのか?悲鳴とともに炎に包まれたシェイクスが熱さのあまり踊り狂う。その様はまるでスルメを火で炙った時のようであった。気が付くとご自慢の長いシルバーヘアも黒こげになってプスプス音を立てている。もはや原型が分からない。コイツは一体何がしたかったんだ?自分からケンカをしかけておいて、自分の魔法で自滅するとは・・・ギャグセンス高いな。
俺は始まってから一歩も動いてないのだが・・・ふむ。
♢
「校長!校長~~~!大変です!」
「どうかしたのか?」
波乱の入学式も無事終わり校長室でゆっくり紅茶を飲んでいると、勤続2年目のガワシー先生がドタバタと駆け込んできた。おかげで儂は盛大に書類の上にこぼしてしもうた。一体何じゃというのだ!最近は年のせいかプルプル震える手で飲んでおるため、ちょっとのことでバランスが崩れるのじゃ。まったく騒がしい奴じゃ。
「れ、例の主席がシェイクス・リガーと闘技場で決闘をするらしいです!」
「なんじゃと!?また建物をぶち壊されたらたまらんのじゃ!急いで行くぞ!」
まったく入学式初日じゃというのにさっそく決闘とはどういう星の下に生まれておるのじゃ。わざわざ呼び戻したロバーソンの奴はなにをしておる??あとで説教してやるんじゃ!
老体に鞭を打ちやっとこさの思いで闘技場まで駆けつける。
そして急いで扉をこじ開けると、そこは異様な雰囲気に包まれていた。真ん中あたりで黒焦げになっている者が一名、そ奴を境目にするかのように新一年生ほぼ全員100名弱と金髪の少年が向かい合っていた。唯一ルーク王子が止めようとしているだけだ。
一体どういう状況なのじゃ??一対一の決闘ではなかったのか??あそこで黒焦げになっているのは誰なのじゃ。よく分からない事態になっておる。
しかしそんな疑問もすぐに解消することとなった。
「おらああ!ここでコイツを倒した奴が1年生のトップをはれるぞ!」
「よっしゃ~~~こんだけいれば誰か倒せんだろ!!」
う~むそういうことか。確かにこの学校では集団対個人などザラに起こるが・・・流石にこの人数差はまずい。ただのリンチになってしまう。教師としてこれは止めねばならない。
「やっちまえ~!!」
誰かがそう叫んだのと同時に一斉に全員が動いた。詠唱ををする者、殴りかかる者、剣を振りまわす者、もはや収拾不能な混沌状態へと陥った。
儂は必死に結界魔法を張ろうとしたが時すでに遅し・・・将来有望なあの少年は果たして五体満足で家に帰すことが出来るのだろうか・・・難しいかもしれん。
「おい、すぐに治癒士の先生を連れてくるのじゃ。」
「はい。」
しかし次の瞬間目を疑う出来事が起こった。なんと主席の少年の髪の色が、綺麗な金髪から黒色へと変化したのだ。それだけではない、目も黒目へと変わったのだ。それまでの纏っていた雰囲気とはガラリと変わり存在感が何倍にも増したように感じられる。
それを見た瞬間、儂の年老いた心臓がドクンドクンと脈打つのが分かった。若い世代は知らぬ事かもしれぬが、この世界に置いて黒髪黒目は現魔王の一角、ドルガノの象徴だ。人柄は常識人で温厚だと聞いているがその死神のような力ゆえ、最強の一角として上げられるほどの魔王だ。
まさか・・・
呆然と見ていると少年の周りに黒い炎が出現した。
「あああわわわわあああ」
間違いない。彼はドルガノの血を引く者なのだ。いや待てよ・・彼は確か竜人ではなかったのか???あの時、確かに黄金に輝くドラゴンへと変身しておったはずじゃ。
「も、もしや・・・」
ハーフだと言うのか!!?
ブックマークありがとうございます!エネルギーになってます!(^^)
今日は前半の数話を改稿しました。話はほぼ変わりませんが、少しだけ分量が増えたかなと。




