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やっぱり先輩は凄かった

 観客がチラホラいる。酒に酔った冒険者達にはいいつまみなのだろう。見世物みたいで若干やりにくいが、とりあえず俺は先輩の胸を借りて出来ることをするしかない。Cランク冒険者は相当の使い手のはずなので、勝つことは難しいだろうが可能性を示せれば特待生になれるはずだ。とすれば自分から積極的に攻勢をしかけギルド長にアピールだ。


 なんの変哲もない木剣を構え、身体強化を全身にかける。


 対戦相手のモブソンさんは、隙だらけの構えで何が楽しいのか笑っている。流石にベテランなだけある。俺がやりやすいようにわざと隙をみせてくれているのだろう。それならばそこに甘えよう。


「瞬歩!」


 地面の土を強く蹴り出し、素早く相手の懐に潜り込む。おそらく高確率で避けられてしまうだろうが上手くいけば体勢を崩すことぐらい出来るかもしれない。いきなり敵の間合いに入り込むことはかなりの危険を伴うが、、、、


 あれ?おかしい。あと0.1秒で木剣が脇腹に到達するというのに、、、モブソンさんはまだ避ける動作に入らない・・


 いやそれどころか俺のことを見てすらいない。何をするつもりなんだ?オヤジ殿との手合せでは、わずかな筋肉の動きや視線によって次の動作を予想し一瞬のうちに判断する。しかしこの人からは何も読み取ることが出来ない。これが達人レベルなのか。危険すぎる!一旦回避だ!


 急いでバックステップで間合いを開ける。


 流石Cランク冒険者だ。避けるまでも無いということか。これほどまでに実力差があるとは・・・


 するとモブソンが口を開いた。

「ハハハハ、今のは何だ?スタート位置からそこまで走ったのか?」


 うっ・・・そんなにバカにしなくてもいいじゃないか・・・


「瞬歩ですけど・・・」


「んあ??何だそれ?俺に届いてないんじゃ意味ねーな!技っていうのはこうやって使うんだよ。」

 そう言いいながら先輩が走ってきた。


 本当に宣言通りただ走っている。とても遅くてあくびが出そうだが・・・俺のレベルが低いと分かってわざとやってくれているのだろう。だがそれを感じさせない演技派のようだ。


 そのままニヤつきながら剣を振り下ろしてきた。あくまでもモブソンさんは、ヘナチョコの悪役に徹するらしい。気を遣わせてごめんなさい。


 仕方がないので右手に持っていた剣を軽く振って受け止め、そしてカウンターを放とうとした。しかし剣がぶつかった瞬間、モブソンさんの持っていた木剣が真っ二つに折れた。もちろん俺が持っていた木剣はなんらダメージはない。


「え?」


 あ。


 ボコ!


 受け止めるために、ただ前に出した俺の木剣が、そのまま突っ込んできた先輩の顔面に入ってしまった。どうしよう、白目を剝いてノビてしまっている。これも演技なのだろうか。流石に今の一撃で気絶する人間なんてこの世にいないだろうしな。



 ザワザワ。


 見物のお客さん達もざわついているが、おそらくモブソンさんに対して手を抜き過ぎだろうと言っているのだろう。確かに俺もその通りだと思う。わざと負けてくれたのは分かるけど、負けるなら数発打ちあった後とか、技を繰り出した後にしてくれないとアピールが出来ないではないか・・・


 どうしたもんかとギルド長の方を見ると、ポカンと口を開けとても驚いた表情をしている。俺と目が合うとハッとして駆けつけてきた。


「しょ、勝者レオナルド君!」








 今日は、レッドウルフを売りに来たなかなか有望そうな少年がギルドのテストを受けにくる。とは言っても、本当にあのウルフを本人が狩ってきたのか不明なので、実際の実力は分からない。いい眼をしていたのでとりあえず冒険者に勧誘してみたが、さてどうなることやら。彼がベテランの先輩冒険者に対してどんな動きを見せるのかギルド長の私としても楽しみである。


 対戦相手はCランクのモブソンだ。これといって何か特徴があるわけでもなく、記録に残るような経歴を持っているわけでもない。いささか内面に問題があるが、どうしても自分にやらせてくれと言ってきたので、しぶしぶだが許可を出した。私が試験管として見張っていれば万が一なんてことも起こらないしまあ大丈夫だろう。


「はじめ!」


 さあさあさあ、私の号令で模擬戦が開始だ。


 少年は・・・・んん?消えた???いやあれは瞬歩だ!なぜあんな子供があんな高度な技を使えるのだ。信じられない!一瞬でモブソンの間合いに入ってしまった。


 んん?どうした??これで勝負ありかと思われたが、少年は技を放つことなくなぜかバックステップで距離を取った。


「ハハハハ、今のは何だ?スタート位置からそこまで走ったのか?」


 私ですら何とか動きが分かる程度なのだから、モブソンでは懐に入られたことも、彼がバックステップしたこともなにも分からなかったのだろう。なんてことだ。なんて間抜けな発言をしているのだろうか。いや一番間抜けなのは自分が間抜けな発言をしていると気付いていないアイツ本人だ。


 しかも新品の全く同じ木剣を渡したのに、一回で真っ二つにしてしまった。これは事件だ!!ギルドが始まって以来の逸材かもしれない。何の名声も無い新人冒険者に給付金を出すことなんてマズあり得ないが・・・普通将来性にかなり期待して、大目に見て年会費無料なのに・・・これは間違いなく給付金を出さなければ!!





「す、少し確認したいんだが、最初に君はモブソンの懐に入ったのに、なぜ下がったのかな?」

「え?いやあまりにも無反応だったので、モブソンさんにとっては俺の攻撃は避けるまでもないレベルの低い攻撃なんだなと、下手に攻撃をしてカウンターを食らうより一旦回避して立て直そうと思いました。流石Cランク冒険者ですね。」


「そ、そうか。」


 何を言っているのだこの少年は!?ただ何も見えていなかったから反応出来なかっただけなのに・・・ボケているのか?どこまで本気で言っているのかよく分からない。


「はい・・・あの俺何も自分の力を発揮出来なかったんですけど・・・もう一回やらせてもらえないでしょうか?」


 な、なに?今ので全く力を出せなかっただと!!わ、わ、私自身はギルド長として戦いを見届けなくてはならないからな。絶対に対戦相手などお断りだ。ま、まあ戦ったら私が勝つだろうが・・・・うむ。


「いや君は文句なしに給付金付与だよ。そうだなとりあえず月に大金貨2枚でどうだろう?」


「ほんとですか!?よっしゃ!ありがとうございます!!」




 実力の100分の1も出せなかったが、モブソンさんは俺に花を持たせてくれたし、ギルド長は新人を応援してくれる人情深い人だ!きっといつもこうして奨学金制度を苦学生に施しているのだろう。冒険者としてやっていくつもりはほとんど無かったが、学校の合間にたまになら活動しても良いかもしれない。


 まあでも今はとりあえず、魔術学院の試験日まで大人しくしていよう。


ブックマークありがとうございます!そのおかげで頑張らねばとなんとか今日更新できました。


ランキングに入ることを目標に・・・グフ・・・したいと思います・・ガハ

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