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刻の放浪者  作者: タイネコ
第一章
2/2

別れは突然に、出会いは御小水と共に

「はぁーーー!!!やっと終わった!」

んーと背筋を伸ばしてリラックスしていると後ろから「お疲れ様です!」とこえをかけられた。

「ありがとう!」と返しつつ後ろを振り返りながら声をかけてくれた人物をみる。

長く艶のある黒い髪を後ろで一つにまとめ、服装はさながらベテランOLを匂わせるほどにしっかりと着こなし、そのスラリとしていながらも整ったスタイル。出るところはで、へこんでいるところはへこんでいる、まさにモデルでもいないような圧倒的な存在感を放つ存在。


一言で表すなら、美。

否、一言では表すことのできないような美しさを持つ人物。

彼女こそ、俺の同僚の八重樫 桜だ。

彼女の人気は、それこそ会社の男達が裏で行ってる美人総選挙で4連覇という偉業を成し遂げるほど、と言えば分かるだろう。

それぐらい綺麗な人なのだ。それに、彼女の人気は見た目だけではない。その何者をも包むかのような慈愛に満ちた瞳と、まるで赤子の手を握るかのように優しく「、、、、ぇ」また、誰にでも分け隔てなく接することか「ねぇ、大丈夫?」ん、少し自分の世界に入り込んでいたようだ。

「ごめんごめん。ちょっと考え事しててさ、全然大丈夫だよ。」

と、笑って言うと彼女もにっこりと微笑みながら背伸びをし

「そっか。そしたら、飲みに行くんでしょ?行くなら早く行こ!」と、まるで子供のようにはしゃぎながら出社の準備をし始めた。

このギャップもまた、人気の理由である。

だが、会社内の女性社員からはあまり良くは思われていないため、社長も昇格させるか迷っているらしい。彼女は別に昇格なんて…。と言うが実際彼女の仕事の速さと正確さは会社でも指折りで、その仕事の手際の良さから次期社長とまで言われるほど仕事ができる。


閑話休題


そんな彼女と今日俺は飲みに行くことになっていた。以外か、はたまた予想道理か、彼女はお酒にもとてつもない耐性を持っていて、接待の際も酔わせようとした社長が飲み負けて、逆に桜に迷惑をかけたというぐらいだ。お酒が大好きで、毎日飲んでる社長が、飲み負けるというのだ。俺自身、社長が酔っ払ったところを見たことがないのだから、余程だろう。彼女こそまさに完璧人間である。

そんな彼女だが、以外とお酒は好きではないらしく、今日行くお店も果実酒が有名なお店らしい。

先導する彼女についていきながら、俺はふと考え事をする。実は今日、俺は彼女に告白しようと思っている。その際の言葉を覚えているかを、頭のなかで唱えながら確認する。



桜へ

桜の笑顔とその姿は――――――




と一人ごとのように唱えていると、




「―――――――――!!!!」


と、誰かが俺をよぶこえがしたので目を開けてみると、


「へ?」


俺は目の前で泣きそうな顔で俺に手を伸ばしてくる桜と、それを止めようとしている周りのサラリーマンたち。

そして、横目に見えるまぶしい光と激しいクラクションの音。


あ、俺死ぬのか。


俺はこの日、考え事に夢中になりすぎて道路にでてしまい、車に轢かれるというなんともふざけた理由で

死んだ













「嘘…でしょ…。」

周りが騒がしい。

それはそうだろう。目の前で人が車で弾かれるという事故が起きたんだ。それこそ静かな訳がない。だか、今は、静かにしていてほしいと思った。騒がしいのは、決してあの人が轢かれたからではないと、そう思いたかった。

「嫌だ…。」

桜は懐から一枚の手紙を取り出し、そのまま力なく項垂れた。

「好きって言おうとしたのに…。ずっとずっと…。なのに…どうして…。どうしてなの!?」

まるで、子供のように地面を叩きつけながら、何度もどうして、という言葉を叫び続ける少女を哀れに思ったのか、近くのサラリーマンが声をかけるが少女はまるで聞こえてないかのように何度も叫び続けた。

新宿の街に、少女の悲痛な叫びと、パトカーのサイレンの音がやけに響いた。
















「昨夜、新宿の道路で、一人の男性が車に轢かれ、死亡しました。年齢は――――――」

薄暗い空間のなか、まるで空中にスクリーンがあるかのように描き出されているのは、テレビの臨時ニュースだ。内容は、今日の夜、新宿のある路上でサラリーマンの男性が車に轢かれ、死亡したというものだった。そんななか、そのスクリーンの前で何がおもしろいのかニコニコと微笑みながら椅子に座り、なにがたのしいのか、足をぷらぷらさせながらうんうん頷く少女がいた。そして、唐突に、

「よし、きーめた!この子にしよーっと!」

スクリーンに映し出された新宿の様子を見ながら、少々は薄く笑いそしてどこかへと消えていった。















チョロチョロチョロチョロチョロチョロチョロチョロ

「ん…?」

何か水が地面に打ち付けているような音が聞こえ、そちらの方を見ると




「は?」

「え?」


ピシッっと空気が凍えるような音がし、そして、

「死ね」

という言葉と無慈悲なけりによって俺はまたもや意識を飛ばすことになった


あぁ、夢か…。最後にあんなのを見るなんて、嬉しいのか悲しいのかわかんねぇなー…。


などと馬鹿な事を考えながら。

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