1、 目覚め。
何時、止まるかも知れません。
自転車、投稿です。
・・・・・・目覚める (えっ、水の中か?)
(たしか? 飛行機のジェットエンジン音がいつもと違うと思ったよな?
その後だよな、家の外壁が割れてパソコンのモニター画面ごと飛んで来たような?)
目を開ける、全身が琥珀色の水に浸かって居る様だ。
息苦しさも無く、呼吸すらしていない。
体を、見て見ると。小さくなっている様だ。
(感覚的には、5歳児位かな?)
手も小さい、下を見るとへその緒が付いている。
(母体の中では無さそうだな? 圧迫感が無い)
《目覚めた様だな、覚醒システム起動》
琥珀色の羊水状液体が消えていく、肺の中の水も無くなる。
それとともに、空気が肺を満たす。
「ハッ、ハックション! ハッ、ハックション!」
盛大に、くしゃみをする。(ティッシュペーパー無いよな?)
鼻水が垂れて来るが、拭く物が無い。
仕方なく、右手で拭く。あら不思議、鼻水が消えた。
へその緒も無くなって居る。男の子だったよ。
(しかし、此処は何処だろう、卵型の子宮だな。全長1mで直径60㎝位だろうか。
頭の中に、別の物が有る様な、記憶バンク? 内臓ハードディスク? SSDか?)
(取扱説明書だったよ)
【神造人間】※ネーム無
【魔素燃料仕様】※食事必用無
【破壊不能・自動復元】※神は破壊可能
【全ての魔法可能】※初歩から習熟で
【物質のコピー可】※接触による
(とんでもない、体に生まれ変わった様だな)
体の、仕組みはじっくり調べよう。
取り敢えず、滅多な事では死なないが、魔法を勉強するか。
子宮体から、出て見る。繭状の被膜に触ると外に出られた。
外は、洞窟の中だった。繭は、黄金色に輝いていて明るい。
洞窟は、結構広いので、中で魔法の訓練が出来そうだ。
最初は、水を出して見る。
取説によると、空気中に窒素の代わりに魔素が大量に存在するそうだ。
魔素は、万能元素で、何の元にもなる様で、魔力でイメージして魔素を
変化させると、水にも火にも、土、その他諸々の素材に変わるそうだ。
水=酸素と水素に魔素を変えて水を作るイメージを思い浮かべる。
量的にも、少しにする。大量に出して溺れても笑えないよ。
右手の、人差し指からチョロチョロと水が出て来る。
「ホーッ!! でっ、出来たよ」思わず声が出る。
(まーあれだな、気体から液体だから少し減るのかな?)
金属等を作ると、大量の魔素が要るのだろうな。
暫く、火魔法や土・風・氷・等色々練習する。
体内魔力は、減る様子は無い、大気中に有る魔素を取り込んで、魔力に変換
して増やして居る様だ。
神造製なのか、疲れる事も無い。洞窟の外に出て見たい。
繭が奥の方なので、反対方向に行って見る。
繭から離れると、暗くなるがナイトビジョン並みの目である。
洞窟の出口らしく、外の光が少し見えて来る。
小さい体でも、出られそうにない位の隙間だった。
(あの繭、何処から入れたのかな?)
土魔法で、洞窟を広げて通路を作って行く、5m程度で外に出られた。
そっと、伺い危険な物は居ないか確認する。外は、森だった。
時間は、分からないけど、太陽光が木々の間から差し込んでいる。
この世界の事は、取扱説明書にも無い。
(季節は、有るのだろうか? 寒くは無いので春か夏かな?)
生まれて数時間しか経っていないので、筋力は鍛えないと困るだろう。
それと、素っ裸なのだ、5歳児程度なので見られても恥ずかしくは無いが
中身は、結構な年齢である。恥ずかしい。
洞窟の、入り口で走ったり、木登りをして運動能力を調べる。
疲れも無く、能力的にも問題無い様だ。
活動範囲を、広げて見よう。食事は、必用無いが、経口摂取も可能なので
食料探しも含めて、服等も揃えたい。
武器も無いけど、体は頑丈で魔法が使える問題は無いか。
それでも、慎重に周囲に気を配りながら、進む。
平地では無くて、山の中の様で地面は勾配が有る。巨木ばかりで下草は
少ない、木の枝を折りながら目印を付ける。
洞窟から、500m位降りて来た、チョロチョロと水音が聞こえて来た。
水音を、辿りながら降りていくと、小さな沢が有り、水が流れている。
水の流れが緩やかな所で、顔を見て見る。
金髪のイケメンですよ、色も白くて白人種ですね。
神々しい顔立ちですよ、しかし、非常に不味いですよね。
森の中の5歳児、金髪は、目立ちますよ。
川沿いに、下りながら服になりそうな素材を探します。
芭蕉布になりそうな植物は有りません、皮が丈夫そうな木を見つけて
皮を剥ぎ取り、持って帰ります。
洞窟に入り、入り口を土魔法で塞ぎます。
床に窪みを作り、水を貯めて火魔法でお湯にします。
持って帰った、木の皮を、丸めて湯に漬けて暫く置きます。
体は、疲れませんが、精神は疲労しています。繭の中に入り横になります。
繭に入る時に、体に付いた汚れは除去される様です。
便利な、カプセルホテルですよ。
次の日に、起きてから、お湯に漬けていた木の皮を取り出して、木の繊維を
皮から剥がします。繊維をしごきながら太さを揃えて、糸状にします。
糸状の繊維を、布に編んでいき1m程度の幅の布が出来ました。
出来栄えは、まあまあかな。贅沢は言えませんよ。
残って居る、繊維で糸を作り、取り敢えずの腰蓑と頭巾を作ります。
次の日は、朝から川の側で、動物を狩る事にします。
川の近くで、動物たちが水飲み場になって居そうな所で、木に登り
待ち伏せします。
色々な小鳥は来ますが、動物は来ません。駄目かなと思って居たら。
「ブヒブヒッ」鳴きながら、猪見たいな物が数頭やって来ます。
(毛皮は欲しいけど、着心地は悪そうだな)
しかし、仕留められるか試してみる。火魔法をイメージしてレーザー光線
状態に魔法を纏める。猪まで距離は、20m位有る。
群れの中の、中位の個体に照準を合わせて、右手人差し指から魔力を伸ばす
空気中の魔素が、魔力に集まり、川の水を飲む為に頭を下げている、頭に狙いを
定めて、発射する。
空気を焦がす音を立てて、レーザー光線状態で猪の頭に穴を開ける。貫通しても止めないので川の水が蒸発する。慌てて魔法を解除する。
猪達は、死んだ一頭が、水飛沫を上げて倒れてから慌てて逃げだした。
木から降りて、獲物を取りに行こうとしたら「ガウッ、ガウッ」と言って
狼らしき一団が、襲って来た。慌ててもう一度木に登る。
多分、噛まれてもどうも無いけど試すつもりは無い。
10頭余り居るよ、何頭かは、猪に食らいついている。
見逃してはくれそうにない。
仕方ないね、猪に食いついている物から順番に殺していく。
レーザー光線、氷の矢、風魔法、雷、色々試してみる。
狼も馬鹿では無い様で、半数が倒れた所で逃げ出した。
木から降りて、狼の毛皮を剥がす、水魔法高圧水カッターで切り開く
5頭分毛皮を剥がして、鞣す準備をして置く、脳を潰した物で鞣すと良いらしい。
猪は、両足を切り取って、干し肉にしょう。
野生動物は、美味しく無いのだ。食肉用に飼育された動物の方が美味い。
そんな感じで、数か月過ぎた。
毛皮も、失敗を繰り返しながら、何とか服らしい物を着ている。
下着も、綿花の様な植物から綿を紡ぎ、下着を作った。
一度作れば魔法でコピーが出来る。便利な物だ。
それより、この世界の事を調べて穏やかに暮らしたい。
この体の秘密を知られたら、困るかも知れない。
この世界の人が同じ性能なら問題無いけど、多分違うだろう。
最近、繭の輝きが衰えてきている様だ。
四季が有れば、冬が来れば山の上なら困るかも知れない。
準備をして、麓を目指して降りてみよう。
お読みいただきありがとうございます。