俺と始まり
今回いい感じに纏まってしまったためだいぶ短めとなっています。
コーラル・マンスチン。
職業、衛兵。
普段は町の治安を守る為に、駆けずり回っているらしいが、今日は非番だったらしい。
知り合いの番兵、モンド・ウコンが町の入り口にて、不思議な装いの少年と言い争っているところに偶然遭遇。
尋問部屋に連れて行ったことを不審に思い、それにこっそりとついて行き、モンドの態度がおかしかったことから、尋問を途中で交代したと言う。
変?
ああ、確かに変か。
あんな喋る前に人の顔面殴ってくるのは
「いや、そんなことじゃないよ、むしろ逆」
前回言ったこと忘れてやがる。
言葉ぶった切んな。
まあ、言葉に出してないんだから、忘れるも何もないんだけどな。
手枷を外され、足枷を外され、地下牢を出され肌に痛いほど感じる熱気。
階段を昇った先に現れた鋼鉄の扉を、女剣士が軽々開け放したことで感じた異世界の空気という奴だ。
番兵モンドに連れられてきたときには気づかなかったが、ちょっとした小屋の様な所にこの尋問施設はあったらしい。
なんで気がつかなかったかはあまりほじくり返さないでいただきたい。
チビってしまいそう。
小屋の中ではあるが、地下とは打って変わった外気の猛暑っぷりを感じると、一気に地下の肌寒さが恋しくなった。
しかし、考えを改めなければいけない。
あそこにまた行くと言うことは、つまり、自分がこの世界における罪を犯し、罪を自覚することを必要とされるのだ。
自分が意図してやったことなら、まだしょうがないだろうが、冤罪という可能性だってないわけじゃない。
今回だって、別に強盗とか殺人とか、傷害とかそういった凶悪な事件ではなかったのだ。
ただの不法入国。
いや、この場合だと不法入町か?
しかも、よくよく考えると普通に罪じゃね?
でもそうだな、あそこまでされるほどの罪ではないだろう。
もしあの場に、涼むために戻りたいと言うのなら、あれ以上の拷問は覚悟しなければならないだろう。
そう拷問。
尋問ではなく拷問。
あのやろ、今度会ったら覚えておけよ。
もう一回会いたいとは思わないけど。
そんな奴の様子とか意味がわからん。
不審とかおかしいのって、常時だろ。
たぶん。
思いつきだけど。
そして、女剣士コーラル・マンスチンは、俺の自問自答が終わるのを待っていてくれたのか、タイミング良く口を開いた。
「あいつさ、怪しい奴には容赦しないんだよ」
……ん?
いやいや、十分容赦なかったよ?
メチャクチャ叩かれたし。
「尋問なんて回りくどいやり方、怪しい奴にはしない。
その場で一刺し、それでおしまい」
…………
え、何? つまり、つまり? つまり?
「つ、つまり、ふ、普通だったら、あの場であっさり、殺されてたかも、し、しれない?」
「そ、だから不審に思った。
初対面の相手は、必ず刺す様な奴が、普通に尋問室に連れて行ったことをね。
だから心配になってついて行ったわけ」
いや、いやいやいやいやいやいやいや。
え? 何? つまり、あの瞬間にルート次第ではデッドエンドの可能性もあったってこと?
怖っ!
恐怖じゃん!
「まぁ、何はともあれ少年くんは、その躊躇なく人間を殺せる様な奴のご機嫌をとることに成功し、あたしという監視官が一緒にいるものの」
言葉を切り言った。
「こうして町へ入れたのでした!」
小屋の扉を開け、そして俺はとうとう、
始まりの町へ辿り着いたのだった。