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俺とそうして②

『それで? お前の言うその『ちいと』とやらは、本当に「ドウブツ会話」とか言うものだったのか?

 「ドウブツ」と言うのが一体何を指すのかは知らんが、要は人語を解さない種族とも話せる能力といったところなのだろう?』


 一を聞いて十を知るなんて、それこそ常人には不可能と思っていたのだが、目の前のドラゴンはあっさりと俺の話を理解したらしい。


 天才っているんだなぁ。


 いや違うか。

 ドラゴンなんだからそもそも人間じゃないじゃん。

 じゃあ常人って考えも違うのか。

 言うなれば常ドラゴン。


 でも他のドラゴンのことを知ってるってわけでもないしなぁ。

 と言うか常ドラゴンってなんだよ。


 いや、そうじゃなくて、


「えと、その、結論から言いますと、あんまり、よくわからなくて……」

『どういうことだ?』

「この世界に、魔物の定義ってあります?」


 別段難しい話ではない。

 ただの確認だ。


 そもそも俺だって自身の能力だと思われる力に対して詳しいことは知らないし、何より説明なんてことは全くできない。

 それでもまず知っておくべきは、この世界における動物とは『イコール魔物』なのか、ということだ。


 魔物イコール動物であるなら、俺の持つチート(だとは思いたくはないが)は動物会話ではないことが証明できる。

 魔物と動物というのが別であれば、動物会話であることが立証できる。


 そのため先程までに大通りに留まっていた、馬の様な(どう見ても足が一本多い生物ではあったが)貨物を輸送する生物に声をかけてみたが、全くと言っていいほどに反応がなかった。


 というか視線を逸らされた。


 ふつーにうぜえ。


 なんにせよ、だ。


 魔物というものがなんであるのか、それさえ判明すれば、俺の能力になんらかの定義づけは可能になるはずなのだ。


 だからこそ、


「知ってます?」

『魔力を吸収して生命活動を続けているもの、それを魔物という。

 我々竜種もお前たち人種も、大まかに言えば魔物の一つであると言える』

「じゃ、じゃあ、露店で並んでるような肉類は?

 その、魔物に含まれる?」

『ロテンとやらにどんな肉やら植物やらがあるのかは知らんが、それらも全て魔物だ。

 この世にあり、呼吸をし、生命活動を行っているものであれば、それらはすべからく魔物であると言えるだろうな。

 それがどうかしたのか?』


 返答がそうであれば答える内容は一つだ。


「じゃ、じゃあ僕の能力は少なからず『動物会話』ではないと思われるんですよね……」


 俺のチートは概念として称するには、どうやら難しいようだ。

 まぁ、俺自身の語彙力が高いわけじゃないから、一概にはそう言えないのかもしれないけれども。


 人種と竜種、そしてそれら以外の動植物、全てを区分する言葉が見当たらない。


 物は試しと、


「人種と竜種を合わせてなんていうか知ってます?」


 という尋ね方もしてみたが、


『我々と下等な輩を同一視する様な言葉が存在するとでも?

 仮に存在していても教えることは絶対にあり得ん』


 とか言われてしまうと、そこから先にはどうやっても進めない。


 だからこそあんまりよくわからないのだ。


 まぁ、少なくともドラゴンとの会話が可能な能力であることはわかったし、本来ならドラゴンと人間は会話ができないということもわかった。

 それだけでも良しとしよう。


『自分の存在がどういうものなのかわからないというのは、確かに不安ではあるかもしれない。

 が、それはそれだ。

 度々話の流れを折ってまで事情を説明してくれるのは助かるが、早々にこの現状を解説して欲しいのだが。無理にとは言わん。だが、なるべくなら早々に現状を解説しろ』


 命令口調とか、どう考えてもお怒りモード突入ですねごめんなさい。


 でも申し訳ない、もう少し付き合って下さい。



『やだね』

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