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俺とそうして①

『それで? それだけか?

 ご高説はそれでおしまいなのか?

 オレがこの場でこうして四肢を拘束され、自由の利かない体にされた理由の説明は、今ので終わりなのか?

 にしては、まだまだ話が足りないというか、えらく中途半端だとしか言いようがないな。

 いやなに、別段お前を責めているわけじゃあない、決してない。

 我々竜種にとって人の生の時間など、全体の総時間数から換算すれば微々たるものだ。

 現に我が里の……と言ってももう過去のことだが、我が故郷の長は一万とんで三百歳程度だと聞く。

 これでも竜種としてはまだまだな方らしくてな、まぁ余談だがな。

 何が言いたいかと言われると、つまりお前はそこまで生きることはできないであろう?

 ならその死をオレは数十年ほど待てばいい、そういう話だろう?

 命の恩人を感謝すれど、恨んだりはしていない、していないとも。

 それで? ご高説はそれで本当におしまいか?』


 めっちゃ怒ってる。


 真偽を判明できるチートなんてなくてもわかる、めっちゃキレてる。


 今日も今日とてこの世界に存在する三連の太陽は、煌々と真っ赤に燃えて順序良く西の空へと沈み込んでいき、俺の宿泊するこの一室を紅色に染め上げている。


 だからこそ、だろうか。

 今、俺の目の前でその大木の様な肉体を横たえ、両手足を魔法の力で編まれた鎖で封された竜の巨体が、いつにも増して赤く、そしていつにも増して不機嫌そうに見えるのは。


 いや、違うな。


 四肢を拘束されているだけでなく、巨大な首も尻尾も、両翼でさえ満足に動かせないように呪いの様なものが付与されているし、繋がっている鎖も簡単には引きちぎれなさそうなほど太い。

 そんな事されりゃ俺だってキレるわ。


 第一、いつにも増して、なんて言えるほど交流があるわけでもなし。

 片手で数えられるほどだし。


 日数にしろ時間にしろ。


 それにレッドの言い分はわかる。

 と言うか、こんな雑な説明でわかってもらえるとは到底考えていない。

 まだ経緯は序の口も序の口だ。


 あの胡散臭かった換金所の主人ヴィオ・カーバッジと、この町の領主パプル・グレイブルが同一人物であること。

 その推理と言うか、当てずっぽうと言うか、それすらにも至っていない謎の発表会の答え合わせをしたこと、そこまでしか説明できていないのだ。


 そんな状態で納得なんてできやしない。


 話はまだまだ続くのだ。


『そもそもだ、オレはなぜこんな狭っ苦しいところにいるのだ。

 匂いからして、ここ数日の間お前とスイがこの場にいたことはわかるが……

 いったいここは何だ?』


 宿泊期間までわかんのかよ、やべぇなドラゴンの嗅覚……!


「と、とりあえず話の続きを聞いてもらってもいい? かな?」


 赤竜は大きくため息をつくと、その体を可能な限り起こし、胡坐をかくようにして俺の前に座り込んだ。



『ぜひ、聞かせてほしいものだな』

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