坊主と俺
今回は少し視点を変えてみます。
2018/6/18 改題しました。
何の変哲もないガキだった。
俺を見る目は他の奴らと大差ない。
むしろ尋常じゃないほどに怯えているのがわかった。
確かに、この頭は昔っから怖がられてきた。
だからこそ、領域を飛び出して、人間たちの住む地上で生活することにしたのだ。
だが、そこでの扱いも故郷と何ら変わりない。
会えば殺して、見つけたら殺す。
それだけだ。
いつの頃か討伐隊も編成されたっけな。
あの頃は楽しくもあり、苦痛でもあった。
じゃあ、今はどうなんだってーと、それなりに満足してる。
大事な部下がいて、酒を酌み交わせる友がいて、商売も繁盛している。
とてつもなく幸せだ。
そんな中、友が男を連れてきた。
何の変哲もないただのガキ。
でも客には愛想をよくしておかなきゃな。
よし、「坊主」とでも呼んでやるか。
心底恐怖を感じた目つきで俺を見ていやがるが、俺には別に不快感はなかった。
なぜだか。
なぜだか全く不快ではなかった。
散々俺のことを追いかけまわしていた冒険者どもと、同じような目をしているのにも関わらず、俺はまったく嫌な気にはならなかった。
むしろ親しげに感じた。
なぜか。
だからこいつには親身になった。
普段ならしない資料集めも、こいつのためならと必死になってかき集めた。
そして倉庫に連れていき、四等に対する説明も懇切丁寧にしてやったのだ。
なぜか。
そして奴は言った。
怒りの沸点がわからない奴を持って帰ると。
俺はてっきり金髪を持ち帰ると考えていたから、心底驚いた。
理由を聞いてみれば声が聞こえたからだという。
助けて、と。
馬鹿な、と思いつつ、しかし、俺は信じることにした。
なぜか。
そして契約を済ませ、店を出ていこうとする奴の背を見て思ったのだ。
あいつを今後も助けていこう、と。
次回は元に戻ります。




