表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/42

俺と日記 初日

 通された部屋は、二階の突き当りの二〇三号室。

 もとい、元物置スペース、だそうだ。


「今は部屋が空いてないんでね。

 コーラルと同じ部屋にしてやってもいいが、何があるかもわからないだろう?

 何を起こしたって構いやしないが、あいつはそのあとが大変だからね、とりあえず今は違う部屋を作っておいたからそっちで寝泊まりしな」


 大部屋、と言ってもただただ単純に広い部屋、としか思えない。

 部屋に明りはなく、窓から差し込む月の光が幻想的で、しかし、生活する上では不便極まりない。


「簡単に片づけをしただけだからね。

 寝具は今余っているのを置いただけだし、机やら椅子やらランプやらは少し埃を払った程度だ。薄汚れてはいるが別に汚くはないし、ボロくもない。

 ああ、あと」


 そう言って俺に紙と鉛筆を手渡した。

 さすがに元の世界とはものが違う。


 何気なしに鉛筆と言ってしまったが、見た目がそれに近いというだけでそうじゃないのかもしれない。

 なんとなく似ている道具だ。

 紙の表面だって、粗っぽいし端もきれいにそろっているわけじゃない。

 さすがに羊皮紙、というわけではないのだろう、この手触り的に。


「これは?」

「え? あ、ああそうか。キミは冒険者じゃないんだっけ。

 一般的に、冒険者が宿泊する際はね、身分証となるものを提示して利用させるんだけどね、うちは提示させるだけじゃ不安だからって、冒険者登録番号を控えさせてもらっているの。

 うちのメインの客層は冒険者だから、ついいつもの流れで渡しちゃった。ごめんね」


 冒険者、か。


 魔法、魔物、冒険者が転生モノにおける三大要素であると俺は思うし、いかにもな言葉だし、めちゃくちゃテンション上がる字面ではあるんだけれど……


 今日はもう疲れた。

 今日というか、経過時間的にはもう一日以上は過ぎ去っているとは思うんだけれども。

 だから、ここは話を早めに切り上げて、


 ああ、でも


「だ、大丈夫です。

 これもらってしまっても構いませんか?」

「ん? いいけど、なんで?」

「ちょっと思いついたことがあって、メモを取りたいんです」


 メモ、と称したがそうではない。

 今はこれを正直に伝えるべきなのか、伝えないべきなのか少し迷った。

 その結論がちょっとした嘘。

 まぁ、メモであることには変わりないんだけれど。


「そうかい。じゃあ明日はコーラルが呼びに行くまで部屋で待機していて。

 厠は外出てもらって、ここの裏手にあるから。

 わたし自身は、三の(こく)までさっきの部屋にいるから。何かわからないことがあったら声かけて。

 それじゃあ、よい夢を」


 そう言ってウィスタリア・ライトラスは部屋を出て行った。


 静かな室内。

 少し肌寒いが外よりはマシだ。


 前述のランプに手を伸ばし、明かりをとも


 …………


 うーむ。

 早々だが、呼びに行くか。


 ランプのつけ方、そう言えば全然わからないや。


――――――――――――――――――――――――


20××年 日付不明

天候 晴れ

・今日から日記を書くことにした。

・誰かに見られるとまずいので、とりあえずは内密に。


今日の発見

レッド・ドラゴルーツ

・赤いドラゴン。でかい。背中の槍を抜いたら鱗と牙をくれた(鱗は換金)。

・スイという名の妹がいる(探す)。


ヴィオ・カーバッジ

・胡散臭い換金所の主。

・屋敷がでかい。


コーラル・マンスチン

・めんどくさい。


ウィスタリア・ライトラス

・気が合う、かも?

・魚類の頭部は正直言って怖い。


話を勝手に解釈しがちだから、それは推測するほかない。

とりあえず明日は奴隷市場へ。


――――――――――――――――――――――――


 こんな感じだろうか。

 日記など一度たりとも書いたことがないから、正しいのかどうかさえ分からない。


 ただこれは、他人(ひと)には見せられないな。


 だって、多くことに疑問符がある。

 こちらの世界における常識かもしれない事柄にも、正直理解を示せていない点が存在するし、今日の日付さえ不明のままだ。

 更にドラゴンと接触してしまったことをここには記述している。


 あのドラゴンの話によれば、長く人間とドラゴンとは敵対関係にあるという。

 ならば、あいつの肉体の一部を所持していたことより、接触があるという事実が露呈される方が後々(のちのち)面倒である筈だ。


 だからと言って、なぁ。


 筆を置き、席を離れ、ベッドにダーイブ。


 ふかふか……とはいかないな、さすがに。


 こういう科学的なことに関しては、元の世界の方が格段にいい。

 布団自体も妙に埃っぽいし、もしかすると小さい虫とかが住み着いていたとしても、十分不思議ではない。


 でも。

 今はそれどころじゃない。


 あのレッドとかいうドラゴンとの約束は、確実に日記にしなければならないことだと思う。

 縁は異なもの、粋なものとも言うし。

 あの出会い自体は俺にとって重要なポイントだと思うのだ。


 死にかけたし。


 ああ、なんというか、それにしても。


 意識が徐々におぼろげになっていくのが実感できる。


 ベッドの魔力(まりょく)、もとい、この世界では魔法かな。

 すさまじい威力だ。

 

 そしてふと思う。


 俺は今後、どうなって行くのだろう。


 この世界に残るのか? 元の世界に帰るのか?


 いやそもそも帰れるのか?


 帰りたいのか?


 会いたい人はいないのか?


 ああ、しかし。


 今は、



 今はこの睡魔という凶暴な魔獣に、この身を少し委ねることにしよう。

作者自身、日記を書く習慣がないため、どのような書き方をすると日記っぽくなるのかわかっていません。

アドバイス等あれば感想に書き込んでいただけるとありがたいです。


また、今回の日記はあくまでも緑郎が書いたものであり、作品の登場人物紹介ではありません。

悪しからず。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ