私と少年
投稿は遅めとなっています。
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私は会わなければならない。
西の大国、ルーヴァット国のはずれに位置する都市、アフリア。
豊かな自然、広大な領土に恵まれたカリーマ大陸有数の商業都市であるここは、人もモノも他の都市には比べ物にならないほど集中する。
だからこそ私はここを訪ねたのだ。
大陸中あらゆるものが集まるこの地には、「もの探し」のスペシャリストがいるという噂がある。
『モノ』でも『者』でも『物』でもという、まさに専門家。
あくまで噂の域を脱してはいない、都市伝説程度の話ではあるが。
しかし、そんな噂だとしても。
頼れるモノなら藁でも、塵でも、都市伝説でも良いのだ。
この男には、もうこれしか手は残されていない。
聞くところによれば、その専門家は、とある宿を間借りしてその業務を遂行しているらしい。
男は多くの人に話を聞いて回った。
それこそ東の貧困者が集まる小さな村から、新たな魔術や装備を開発しようと昼夜問わず灯りが煌々としている研究施設まで。
そして、それら数多くの情報を基に辿り着いたのが、今、目の前にある宿屋だった。
木造のよくある景観。
しかし、言い知れぬ不気味さがあった。
少し躊躇し、しかし、
――ここまで来たのだから。
そう思い、勢いに任せて宿屋に入り込んだ。
「いらっしゃい」
第一声。
宿屋の主人だろうか。カウンターに座り、タバコを咥えながら、気兼ねなく声をかけてきた。
「宿泊? それとも依頼かい?」
男は驚いた。
そして、それと同時に警戒した。
さも当然かのように、依頼の可能性を問うてきたからである。
無論、依頼であることには違いないのだが、こうもあっさりしていると、逆に警戒するというものだ。
他の都市や町などでは噂程度の話が、この宿屋では日常会話のような字面で話される。
――もしかすると、このご主人が噂の……?
そこまで考えてかぶりを振った。
早計だ。しっかり話を聞くべきだ。
そうしてやっと男は口を開く。
「……依頼です」
「そうかい。なら、階段上がって奥の部屋だ。
間違っても他の部屋を開けるんじゃねぇぞ? ここは単なる普通の宿屋なんだからな」
指示された通りに階段を上る。
とても綺麗とは言い難いところではあるが、風情はある。
「古びた」と言ってしまえば話は早いが、一方でそれ一言では言い表せない何かを感じる。
一段一段登る度にキシキシと音を立ててはいるが、それでも壊れそうな気配はしない。
近年の魔術塗装の技術は著しい。
にも関わらず、これ程古風な印象を受けてしまうと言うことは、築何百年と経過していてもおかしくはない。
ふぅ……。
突き当たりの部屋。
他の部屋と何の変わりのない木製の扉に、同様に木でできた小さな看板がかかっていた。
【櫻川異世界探偵事務所】
男には見たことのない文字だった。
異国の言葉なのだろう。そう判断し、扉を軽く二回叩いた。
返事はない。
ならばと思い、ノブに手をかけゆっくりと開けた。
「し、失礼します……」
「はいはい。どうぞ、お入りください」
いきなりの返事に、男は思わず体をのけぞらせた。
「そんなに警戒しないでいいですよ。
ようこそ『櫻川異世界探偵事務所』へ。ご依頼の内容を教えていただけますか?」
それがこの事務所の主人、ロクロウ・サクラガワと名乗る少年との、ファーストコンタクトだったのである。
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