②
卒業式当日ーー。
式が終わると、卒業生は一斉に、後輩達が待ち受ける廊下へと流れ出て行く。
彼は……彼はどこにいるのだろうか。
私は、必ず出迎えに来てくれているだろう彼を探して、キョロキョロとした。
「あ、◯◯先輩! こっちです!!」
彼とは別の後輩が先に私を見つけ、笑顔で私を呼んだ。
「ご卒業おめでとうございます!! これ、花束です!」
「ありがとーー」
「写真撮りましょ写真!」
私はいつの間にか、後輩達に囲まれていた。卒業生には、今日一日だけゆるキャラになる魔法が掛けられているらしい。
「はい、チーズ!」
撮影会の合間と合間に、私は落ち着き無く彼を探し続けた。しかし、今ここは一年で一番の人口密度が高いわけで、たった一人を見つけるのは至難の技だった。
一通り写真を撮り終えてもまだ、彼は私の前には現れなかった。
「◯◯、そろそろ謝恩会行かないと」
「あ、うん……」
ーー見つけた。
私は人混みの向こうに、太陽の様な笑顔を見つけた。
他の卒業生と話している彼は、いつも以上に楽しそうに見えた。
ーー可愛い。
ーー写真、撮りたい。
バッグに入れっぱなしにしているデジカメに布越しに触れて、私は思った。
ーー今しかないし。 5分あれば、間に合う……。
だがーー。
私は彼に背を向けて、友達の方へと歩み寄った。
「行こっか、ホテル」
「早く袴脱ぎたい〜」
「確かに」
ーーどうせ、もう会わないなら。 変に残らない方が良いから。
ふっと残った寂しさを振り払う様に、私はどんどん会場から遠ざかって行く。
ーーさようなら、ありがとう。
静かに、確実に、私は大学を卒業したのだった。




