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異世界転生、程々に......  作者: 安定を求めるギャンブル中毒者
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プロローグ 2

シノはまず、行動方針を考える事にした。


「俺は、日本人だ。だが、それを伝えるには、この身体では全く信憑性がない」


地球での現代、日本人としての自分は、標準的な黄色人種の形質であり、黒髪、茶色の瞳だった。だが今の姿は、ほぼ白人、髪はプラチナブロンドっぽく、黒のメッシュを入れる徹底ぶり、瞳の色は周りが紺でそれ以外灰色と黒、完全に異世界人の形質で、ビジュアル系な容姿だった。


「自身が日本人である、地球の人間である証拠......文字か!」


漢字、片仮名、平仮名、アラビア数字、アルファベッドを使う事を考えた。


[第2次極東海域調査団、所属グラファイア領、領議会承認済]

[The EW investigation team]


ちなみにEWはEastern Watersの略、東の海域と適当に組み合わせた。自身の英語力の限界だった。


とりあえず、船の側面にこれらの文字を大きく表示させる事にした。



このグラファイア領が用意した調査船は、加圧水型臨界炉を主動力に、高速性と、航行可能距離の延長を考慮し、設計された。加圧水型臨界炉は熱系魔法を特定の条件下に、魔石で行使する際に、一度の魔法行使で連鎖的に反応が周囲の魔石に波及する、臨界状態を利用した動力炉だった。だが、蒸気を効率的に動力へ変換する技術を持たず、現時点での最大出力でさえ駆動軸の摩耗や炉の高温高圧耐久性などが問題となり、減圧弁や減速機などで制限していた。


この世界での一般的な船は、帆船であり、風を読む才能がある者が調整士となり、マストの向きや開き具合などを指示し、船を進めていた。その上、風魔法を使う魔法士が、マストに風を当てる事が普通だった。だが、風魔法は効率が悪く、速度も遅かった。


「まるで、原子炉みたいだけど、魔石と人の寿命への影響とかは、聞かないな......」


原子炉であれば、周囲への放射線の影響を考え、格納容器などで影響を抑える方法を取るが、それら、素人目から見ても、考慮された設計が一切見られなかった。



それから1ヶ月後、調査団が極東海域へ航行を始めた。


「我々は、極東海域に存在する可能性が高い、超文明国家との接触を第一目標としている。その為には、海龍を大砲の様な大きな音で誘き寄せ、超文明国家の艦船の救助を求める事だ」


それから7日間、約6千kmという航路無き海を進んでいた。


臨界炉を搭載した船団は、食糧を数年分近く積載しており、物資の枯渇は生じていなかった。


「砲撃準備、完了しました」

「よし!大砲、撃て!」


近くに島も見えない海の上で、調査団は大砲を連続して放った。海中には、巨大生物の影が現れ、水平線の端には、灰色の何かが見えた。望遠鏡を覗くと、地球の現代の軍艦より未来的な、滑らかな流線形に、船首部分がかなり鋭く、多角形を多用した船体だった。


「ステルス艦か?」


突然、船が急に揺れ、立っているのも困難になった。

「報告:船底に何かが接触した模様。被害:備蓄庫にて積み荷が崩れ、数人の負傷者あり」


「了解。対処をお願いします」

「はっ」


すると、大波が急に船を襲い始めた。

「報告:前方正体不明艦より、飛翔体の発射1を観測。飛翔速度は800km/hを超え、計測は困難です。観測分析室より報告:飛翔速度は音速を超えていると推測されます。つまり、1225km/h超です」


シノの中で、地球の何か、共通点を感じていた。


「報告:飛翔体から落下傘を開き、降下する物体を確認。その後着水。水中を航行しています」

「わかった。引き続き、お願いします」

「了解」


すると、船が大きく揺れ、海に血煙が漂っていた。


「報告:水中で爆発を確認。海龍が負傷した模様。しかし、致命傷には至っていない様です」


しかし、海中で何十もの爆発があり、船がさらに大きく揺れた。

「報告:12の海龍の死亡を確認。低速浮上しています」

「わかった。じゃあ、例のマストを開いて」

「了解」


例のマストは、日本語で[私は、地球の日本人です。直接対話を要望します]というメッセージを織り込んでいた。この文字を読めるのは、シノか、地球人だけで、乗組員は内容を知らなかった。


「報告:正体不明艦より飛行物を確認。飛行速度は100〜300km/hであり、回転翼を持っています」

「報告ありがとう。海龍の死骸の回収、船体の損傷確認と保守作業を進めて欲しい」

「了解。ですが、シノ・グラファイア次期領主様は、行かれるのですか?」

「行ってくるよ!」


シノは前方甲板に出ると、ヘリと思われる飛行機から、赤のLEDが点灯する、腰掛けの吊り上げリフトが降りて来た。


適当にシートベルトを肩、腰に巻き、股を通すと、リフトに腰を掛けた。すると、安全帯やリフトのLEDが緑に点灯し、リフトが上へ上がり始めた。



機内は、3人の搭乗員がいた。


「これから、母艦でジェット機に乗り換え、サキシマ国第一首都、第一空港へ向かいます」


話し掛けられた言葉は、日本語だった。


「お願いします」



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